岡田 有香 院長の独自取材記事
グレイス杉山クリニックSHIBUYA
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2025/08/08

「不妊になる前に、今すぐできることが20代からたくさんある」と力強く語る岡田有香院長。聖路加国際病院での経験を経て、2022年に「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」を開業した。プレコンセプションケアと卵子凍結を専門とするクリニックとして、カフェのような居心地の良い雰囲気の中で不妊予防の重要性を訴える。世界における日本の体外受精件数の多さに危機感を抱き、妊娠に関する正しい知識の普及と年1回の婦人科受診の定着をめざしている。「すべては不妊予防なんです」と語る岡田院長に、卵子凍結という選択肢の意義や20代から始める婦人科受診の大切さについて聞いた。
(取材日2025年7月9日)
不妊予防への強い思いから開業へ
なぜ不妊予防をライフワークにしようと思われたのですか?

不妊治療を受ける方々の苦しみを目の当たりにしてきたからです。精神的な負担、受診の時間、金銭面での負担。保険適用になったとしても体外受精の費用は決して安くはありません。日本は体外受精の件数が2022年の段階で年間約54万件となり、その数は世界的に見てもとても多いものです。なぜこれだけ不妊治療が必要とされているか。その理由は、妊娠に対するリテラシーの低さにあるのではないかと思うのです。女性の病気に対して詳しく知らない、かかっていることにも気づかない人は少なくないですし、その病気にどんな治療法があるかということも、あまり知られていません。しかし、20代からしっかり治療しておくことで、不妊にならないようにすることはできるはずなんです。
先生ご自身の経歴と、このクリニックを開業するまでの経緯を教えてください。
2014年に順天堂大学を卒業後に勤務した聖路加国際病院で、子宮内膜症や低用量ピルの診療、腹腔鏡手術やロボット手術に携わりながら、がん治療前の卵子凍結にも取り組んでいました。特に乳がん患者さんの卵子凍結をきっかけに、一般の方でも5年間妊娠できないケースはあると思いました。2013年頃から卵子凍結の技術が大きく進歩し、世界的にも不妊治療における選択肢の一つとなっています、しかしそういった現状がありながら、日本ではまだ卵子凍結のことが十分に周知されていないと感じたのです。それが2022年にこのクリニックを開業しようと思ったきっかけです。
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

プレコンセプションケアと卵子凍結を専門的に行うクリニックです。不妊になる前に、今すぐできることは20代からたくさんあるので、そういったところをご案内するほか、妊活のやり方について迷う方も多いので、進め方のサポートもしています。卵子凍結は、今現在パートナーがいない方や、パートナーがいても今すぐ妊娠ができない方たちに向けた、妊娠の可能性を高めるための選択肢の一つとなります。全国的に見てもこの2つに特化したクリニックは数少なく、私が不妊予防の啓発をやりたいという想いのもと実現することができました。すべては不妊予防のため。卵子凍結も不妊予防の一つの方法なんです。
ライフプランに応じた卵子凍結
卵子凍結はどのような方に適した選択肢なのでしょうか?

将来の妊娠可能性を考えたライフプランから判断します。例えば、お子さんを1人自然妊娠で望んでいる場合は32歳までに妊活をスタートすれば高い確率で自然妊娠が望めます。でも子どもが2人欲しい場合は、27歳までに1人目の妊活を始めてほしいと思います。日本の平均出産年齢は31歳で、すでに2人目は4組に1組が不妊治療を行う年代なんです。だから子どもは2人欲しいけれど、31歳までには難しいという人たちは、卵子凍結という選択肢が2人目のために出てくるわけです。30代前半で15個ぐらいの卵子を凍結すると、高い確率でその卵子からの出産が期待できるというデータもあります。ですので当院では、20代から考えることの重要性を伝えていきたいと思っています。
卵子凍結のメリットとデメリットについて教えてください。
メリットは妊娠の可能性をキープできることです。ただ、妊娠の可能性は100%ではありません。どんなに若くても誰もが妊娠できるわけではないので、卵子凍結も100%の妊娠を保証するものではないということはご理解ください。デメリットは、注射による卵巣の腫れや歩くと響くような痛みが全体の8%ぐらいの方に出ることと、採卵の処置で腟の壁を針で刺すので痛みが出ることです。ただ、局所麻酔で痛みの軽減を図るため我慢できないレベルではないですし、たくさん卵子が育っている方には静脈麻酔も使います。卵子凍結をしたことによって自然妊娠しにくくなることや閉経早くなるといデータはありません。
プレコンセプションケアとは具体的にどのような取り組みですか?

将来の妊娠のため、妊娠や性、健康に関する正しい知識を身につけ、健康管理をしていきましょう、というものです。栄養バランスのいい食事を3食しっかり食べて、週150分以上の運動、そして婦人科をかかりつけにつくって年1回は受診すること。性感染症の予防も大事ですし、禁煙は必須、飲酒も適量は1日1杯までです。風疹や麻疹などのワクチン接種も重要ですね。欧米では13歳から15歳でかかりつけの婦人科を持ちましょうと学校で指導されているんです。「今日チェックアップで来ました」と外国の方は普通に来院されます。婦人科はすべての女性が行くべき場所。歯科医院と同じような位置づけですね。
女性のライフステージに寄り添う
診療の中でのこだわりや心がけていることを教えてください。

患者さんに少しでも安心感を届けることです。日本ではまだ婦人科に行くのが当たり前ではないので、ハードルを越えて来てくださっていると思っています。婦人科に行って嫌な気持ちになると、一生行きたくないとなってしまうので、カフェみたいな空間にして気軽に来られるようにしました。検査についても、これはどういう検査で、今どうしてこの検査が必要で、検査では具体的にどのような処置を行うのか、きちんと説明します。卵子凍結についても、行うと決めてから受診するのではなく、行うかどうかわからない状況で来られる方も多いので、患者さんの心理的な面にもしっかり寄り添って診療を進めています。最終的に卵子凍結をするか否かは、患者さんがご自身で判断するというかたちを取っています。
今後の展望について教えてください。
できれば20代で婦人科に来るのが当たり前になるような社会になってほしいです。婦人科という場所は一生に寄り添う場所だと思っています。妊活を考える時、パートナーが見つからないから卵子凍結を考える時、そういったところですべてサポートができるといいですね。実際、凍結した卵子をどうやって使うのか、まずは自然妊娠からトライするのか、それは患者さんと相談しながら方向性を決めていきます。患者さんと信頼関係を築きずっと見守っていける、そんな場所でありたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

妊娠を望んでいるのに、1年たっても妊娠しなければ「不妊症」と診断されます。何年も頑張っている方もいらっしゃいますが、できるだけ早く病院に相談していただきたいと思っています。私たちは、その期間をできるだけ短縮することを目的としています。「そろそろ妊娠を考え始めた」「妊活を始めたけれど、気がつけば1年経過してしまった」という方は、ぜひ今すぐご相談にいらしてください。男性も精子がない方が100人に1人の割合でいるとされていますし、女性でも100人に1~3人ほど30代で早発閉経の方がいらっしゃいます。いざというときに困らないように、まずは自分のチェックが一番大事です。一般婦人科診療も保険診療で対応していますので、ぜひいらしてください。
自由診療費用の目安
自由診療とは卵子凍結/36万3000円~ ※詳しくはクリニックへお問い合わせください。