清川 亮平 院長の独自取材記事
尾ノ上歯科クリニック
(熊本市東区/水前寺駅)
最終更新日:2022/09/21
水前寺駅よりバスで20分に位置する「尾ノ上歯科クリニック」は、歯科・歯科口腔外科・小児歯科を標榜するクリニックだ。院長の清川亮平先生の専門は口腔外科で、熊本大学病院歯科口腔外科にて診療実績を積み、主に口腔がんの治療などに従事してきた。その後熊本県内の歯科クリニックで一般的な歯科診療を経験し、2022年4月に父で元院長である清川恵治先生の後を継承するかたちで開業した。同院では、患者の口腔内の状態の「見える化」を徹底し、画像や資料を用いて患者に詳しく説明をした上で治療を行うことを重視している。今回は清川院長に開業までの経緯や診療で大切にしていること、開業からおよそ5ヵ月経過して今感じていることなどについて話を聞いた。
(取材日2022年8月18日)
父の後を継ぎ地域住民をサポートするクリニックへ
先生はお父さまの後を継いで開業したと伺いました。
はい。この地はもともと私が生まれ育った場所でもあり、父が経営していた「清川歯科医院」のあった場所でもあります。父のおかげで歯科医師という職業が自分にとって身近でしたし、父を信頼して通院してくださる患者さんの姿をずっと見てきました。そのため、仮に父が年齢を重ねて引退してしまったときに「ここの歯科医院がなくなってしまうのは嫌だな」と思い、私自身が歯科医師になって父の後を継ぐことを自分で決めました。2022年に私が後を継ぐにあたって、「地域の方々にとって身近な存在をめざしたい」という思いから、クリニック名を「尾ノ上歯科クリニック」へと変更しました。現在は私がメインで診療を行っていますが、父にも診療に携わってもらい、さまざまな点でサポートしてもらっています。
開業前はどのようなことをご専門に診療してきたのでしょうか。
開業前は歯科口腔外科を専門とし、熊本大学病院などで経験を積んできました。大学病院にいましたので、親知らずの抜歯など基本的な歯科口腔外科の治療はもちろん、舌がんなどの口腔がんの診療や入院患者さんの全身管理、当直での夜間救急など幅広い経験をさせてもらいました。ほぼ毎日大学病院にいたような印象で、体力的にはとても大変でしたが、一般的な歯科診療ではできない経験をたくさんさせていただきました。特に口腔がんの治療をしていると、仮に病気が治ってもこれまでどおりの食事が難しくなる方もいますので、口の中の機能を維持することの大切さを強く実感しましたね。その後は一般歯科のクリニックで数年間、診療にあたってきました。歯科口腔外科と一般歯科では必要となる知識や技術も異なるため、勉強会などにも積極的に参加しましたね。今では歯科口腔外科と一般歯科、両方を勉強できて良かったと思っています。
現在はどのような患者さんが受診されていますか?
患者層としては、現在は父の代から通ってくださっている方がとても多いですね。長年の付き合いになる方が多いので、年齢にすると50歳代以上の中高年の方が多いでしょうか。しかし近隣に小学校や中学校もあるので、最近はお子さんとそのご家族も多く通ってくださっています。結果的に、お子さんから高齢の方まで幅広くいらしてくださって本当にうれしいです。主訴としては、やはり歯の痛みや詰め物が取れてしまった、入れ歯の不具合があるといったことをきっかけにお越しになる方が多いです。また最近は予防歯科の考えも浸透してきて、「定期的なメンテナンスを受けたい」と希望してくださる患者さんも増えてきています。子どもの患者さんも増えたので、歯並びに関するご相談も増えたように思います。当院では矯正は行っていないのですが、必要に応じて専門のクリニックをご紹介することもあります。
生涯食べ物をおいしく食べられる口腔環境を維持したい
先生の診療方針について教えてください。
私は大学病院での経験などを経て「生涯にわたって食べ物をおいしく食べられる口を維持する」ということを念頭に診療を行っています。目標は入れ歯になる前に治療に介入して、生涯自分の歯で食事していただくことです。健康なお口を維持していくには定期的なメンテナンスが必要なので、患者さんにはいつも定期検診のご案内や治療の重要性を伝えるようにしています。そこで私が大切にしていることは、口の中の状態や治療内容の「見える化」です。各ユニットにモニターと口腔内カメラを設置していますので、現在のお口の中の状態や治療後の状態、エックス線写真など映し出して詳しく説明をしています。患者さんも実際の口腔内の様子などを見ると、目に見えて結果がわかりますので、自然と治療の重要性を理解してくださるものです。診療では「よりきれいになった」と言っていただけるような治療を心がけています。
そのほか診療の特徴として挙げられることは何でしょうか。
そのほかに力を入れていることは安全面の配慮と、口腔がんに関する啓発ですね。安全面では、感染症対策など衛生面での配慮として飛沫の飛び散りを防ぐ「口腔外バキューム」の設置や使用器具の滅菌などを徹底しています。そのほか、私自身が口腔外科を専門に学んできたため、神経の損傷や出血などを未然に防げるよう「歯科用CT」を取り入れた診療を行っています。口腔がんに関しては、まずどんな病気なのかご存じない方も多いので、「こんな病気もあるんですよ」ということを知っていただこうと思っています。また、口腔がんは発生部位によっては自分で気づけないこともあるため、定期検診の際に必ずそういった観点でも口腔内を観察するようにしています。なかなか治らない口内炎のある方や、痛みが続く方にはぜひ一度歯科医院を受診していただきたいですね。
先生が診療の中で気をつけていること、大切にしていることは何ですか?
歯科医院を受診する患者さんは緊張されていることも少なくないので、患者さんにリラックスしていただけるような声がけは大切にしていますね。あとは先程の口の中の状態や治療内容の「見える化」とも重なりますが、詳しく説明して患者さんにご納得いただいた上で治療に望むことでしょうか。自作の資料などを用いて詳しく説明し、患者さんに不安が残らないように工夫しています。歯科医師は毎日診療を行っているので忘れてしまいがちですが、歯科医院にいらっしゃる患者さんは緊張や不安、疑問があっても、我慢してしまい、言葉にしないことが少なくありません。ですから、私は患者さんが本当はどう思っているのか、心配なことはないだろうか、と気遣いながら診療を進めていくことが大切だと思っているんです。
末永く頼られるクリニックをめざして
開業からおよそ5ヵ月たって現在どのように感じていますか?
開業当初は、やはり父とは治療のスタイルなどが異なってきてしまうところもあるだろうと思い、自身の診療に対する考え方を患者さんに受け入れてもらえるかどうか、少し不安に思っていました。しかし、自分の考えていることや患者さんにとってベストと思えることを素直に提案したところ、皆さん理解してくださったので、ありがたいです。やはり一番大きく変わったのは、予防歯科に対する意識でしょうか。これまで歯科医院を「痛くなったら行くところ」と思っていた方も、数ヵ月に1度の定期検診に来てくださるようになりました。
今後の展望についてお聞かせください。
地域にお住まいのさまざまな患者さんにとって受診しやすく、頼りになるクリニックでありたいと思っていますので、良いと思ったものは積極的に取り入れて、より便利で通いやすいクリニックにしていきたいです。特に今はキャッシュレス化も進んでいますので、クレジットカードでの支払いも可能するなど便利な環境を追求していますね。そのほか、今後スタッフの接遇研修や口腔ケアに関する勉強会なども予定しており、よりスタッフとの連携を強めて診療にあたっていく予定です。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
お口の健康は一度調子が悪くなると、自然に良くなることはほとんどありません。また、一度失った歯は再び生えてくることもありませんので、生涯口腔ケアをしっかり行っていくことが大切です。そのためには、患者さん自身が日々の口腔ケアを行うことはもちろんですが、歯科医師の定期的なサポートも必要です。私は患者さんと信頼関係を築き、協力しながら皆さまがおいしく食べ物を食べられる口を守っていきたいと思っています。10年、20年、30年と通っていただけるクリニックであるために、これからも日々精進していきたいです。