粉瘤は自身での対処はNG
傷痕を小さくするための「くり抜き法」
ソコラ塚口駅前皮フ科スキンクリニック
(尼崎市/塚口駅)
最終更新日:2023/10/13
- 保険診療
粉瘤(ふんりゅう)とは、ほくろやイボとは違い、皮膚の内部にできる“良性のできもの”を指す。皮膚科の領域ではごく一般的なもので、普段は特に問題を起こすことはないものの、破裂してしまうと化膿したり、中にたまった垢・脂・汗などが飛び出して嫌な臭いを発したりすることも。「粉瘤は、ご自身で対処しようとせず皮膚科の医師にご相談ください」と話すのは、「ソコラ塚口駅前皮フ科スキンクリニック」の加藤健一理事長。粉瘤の治療に、傷が目立ちにくくトラブルのリスクを軽減させるために「くり抜き法」を採用し、極力傷痕が残らないよう努めている。また、粉瘤はまれに悪性腫瘍である可能性もあることから、病理検査も徹底。そんな加藤理事長に粉瘤とは何かや「くり抜き法」の特徴、そして診療で心がけていることなどについて話を聞いた。
(取材日2021年1月18日)
目次
粉瘤は自分でつぶさず、皮膚科に相談。傷は極力小さく、腫れや化膿を抑えるために「くり抜き法」での除去を
- Qまず、粉瘤について詳しく教えてください。
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A
粉瘤とは良性のいわゆる“できもの”の一種で、イボやほくろの次に多いとされています。本来、自然と剥げ落ちる垢や脂、汗などが皮膚の下にたまり、袋状になって埋まっている状態を表します。イボやほくろは皮膚の表面にできるので、その点が大きな違いでしょう。私が過去に手術をした粉瘤の中には、乳児の頭ほどの大きさまで膨れたものもありました。良性ですので危険性は少ないのですが、圧迫などによって袋が破れると、蓄積された垢・脂・汗が噴き出て、とても嫌な臭いがすることがあります。また、内部は不潔ですので、ばい菌が入ると化膿してしまう恐れも。時には、表に出てこず内側で袋が破裂し、腫れや痛みが出るケースもあります。
- Q粉瘤ができたときに注意すべきことを教えてください。
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A
特に大切なのは、患部が気になってもご自身で中身を押し出してしまわないことですね。たとえ中身が出て平らになったとしても、袋が残っていると再発してしまうんです。根本的な治癒にはつながりませんし、そうした行為が化膿の原因にもなりかねません。もし気になってもご自身で対処することなく、皮膚科を受診しましょう。ちなみに、粉瘤の原因は未だわかっておらず、「ぶつけた拍子にできる」「毛が抜け落ちた毛穴にできる」「ウイルス性」など諸説ありますが、誰もがなり得る症状と考えています。私はこれまで老若男女さまざまな患者さんの粉瘤を診てきましたが、多発したり再発したりを繰り返す方も少なくありません。
- Qどのように治療を行うのでしょうか?
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A
粉瘤は塗り薬や内服薬では治療できず、一部の膿だけを出しても根本的な解決にはなりませんから、外科的に袋を取り除くことをめざします。一般的には、局所麻酔をした上で袋を除去するためにメスを使った方法がとられますが、1cm大の粉瘤を取り除くために2cmほどの傷を作らざるを得ないのが実情です。私も勤務医時代にはこの方法で手術をしていましたが、「良性のできものだけれど、見た目が気になり手術をした」という人にとって、傷痕が残ってしまうのは納得がいきませんよね。そのため、当院では「くり抜き法」を用いて治療を行っています。
- Q「くり抜き法」について詳しく教えてください。
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A
患部に局所麻酔を行い、粉瘤の中の膿も袋自体もすべて取り去るために行うのが、くり抜き法です。傷は粉瘤に対して最大5mm程度で、粉瘤が小さいほど傷も小さくしていけます。また、ニキビ痕くらいの小さな傷ですので、術後の縫合が不要な場合がほとんどです。傷が小さければ出血を抑えられるだけでなく、ばい菌が入り込んだり腫れ上がったりするリスクを小さくしていける利点もあるでしょう。ただ、先ほど例に挙げた乳児の頭大の粉瘤など、あまりに大きなものには適用できません。くり抜き法を採用する医療機関は少なく、私も開業後に独自に学んで習得しました。また、私の経験上、くり抜き法のほうが痛みは少なく治りやすいのではと感じます。
- Q粉瘤の治療において大切なことは何でしょうか?
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A
粉瘤をきれいに取り去れるよう治療結果にこだわることと、取り除いた粉瘤が本当に良性か検証することです。粉瘤はほとんどのケースで良性といわれますが、ごくまれに悪性の腫瘍の場合があります。また、ある論文では、粉瘤に隠れる形で悪性腫瘍が合併していたという報告も。万が一悪性腫瘍の場合は、命に関わる場合もあるので、当院では全例に対して病理検査に出して調べるようにしています。患者さんには、きれいに粉瘤を除去してご満足いただくのはもちろん、良性か悪性かしっかりと調べてお伝えすることも大切です。また、ただ検査に出すだけではなく、皮膚科を専門とする医師としてきちんと検査結果を「読み取れる」力も重要でしょう。