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中野 淳 院長の独自取材記事

さくら在宅クリニック

(高松市/三条駅)

最終更新日:2025/01/15

中野淳院長 さくら在宅クリニック main

香川県高松市で、2022年4月1日に開業した「さくら在宅クリニック」は、県内でも数少ない訪問診療・往診専門クリニック。中野淳院長は香川医科大学(現・香川大学医学部)を卒業後、呼吸器外科の医師として20年間、悪性腫瘍の治療と緩和ケアにその身を費やしてきた。長年抱き続けてきた地域医療への想いを実現すべく開業し、現在は24時間365日体制で、終末期がんの治療や緩和ケア、人工呼吸器管理などを必要とする患者らに専門性の高い療養環境を提供している。「この高松市に、在宅医療の根を張ることが目標」と語る中野院長に、地域医療や終末期医療にかける想いを聞いた。

(取材日2024年11月5日)

温め続けた地域医療への想いを実現。在宅医療の道へ

開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

中野淳院長 さくら在宅クリニック1

尊敬する恩師との出会いを機に呼吸器外科の道へと進み、その後20年間、肺がんの治療や緩和ケアをライフワークとして歩んできました。基幹病院で呼吸器外科の立ち上げに携わるなど、「自分にできること」が一巡したタイミングで外科医を辞めることを決意し、2ヵ月後には上司にその意志を伝え、退職。今後は医師を志した当初に思い描いた地域医療、終末期医療に専念しようと、県内の在宅医療専門クリニックに入職しました。そちらでは2年間お世話になりましたが、複数の医師とともに交代制で診療するスタイルですと、例えば「この患者さんにはこんなことをしてあげたい」と思っても、いつまた同じ方を担当するかわかりませんし、次に訪問した時には、患者さんの状況が変わってしまっているかもしれません。開業することで、自分一人が主治医となって患者さん全員を診ていきたい。患者さんのためにも、自分の思う在宅医療を形にしたいと考えました。

この場所を選んだ理由はありますか?

何かあった時にすぐに対応できるようにと、自宅からも近いこの場所を選びました。在宅医療を専門にするなら建物を新築する必要も、診察室を作る必要もありません。ですので、決断してから5ヵ月ほどで開業に至っています。棚を組み立てたり、床にカーペットを貼ったりといった作業はすべて自分で行いました。クリニック名にちなんだ桜のロゴマークも自分でデザインしたのですが、私が猫好きなので、花びらの中に肉球を入れました(笑)。

クリニック名は、どうして「さくら在宅クリニック」なのでしょう?

中野淳院長 さくら在宅クリニック2

クリニック名の「さくら」は、中学の担任の先生から聞いた話をもとに取り入れました。「冬の桜は枯れ木のように見えるけれども、春に美しく咲くために、ひと枝ひと枝に赤い色をためている。だから、花が咲く前の桜の枝は赤く色づくんだよ」、と。優しくはかなげに見える“さくら”にそんな力強さがあるのかと深く感じ入って、この話をずっと覚えていたんです。桜は昔から日本人に親しまれている花ですし、「皆さんに親しまれるクリニックになればいいな」という思いから、「さくら在宅クリニック」と名づけました。

がんの終末期治療や緩和ケアに挑む

患者さんは、どのような方が多いのでしょうか。

中野淳院長 さくら在宅クリニック3

当院で訪問診療を行っている方の中には、「高齢で足腰が弱ってきた」という方ももちろんいらっしゃいますが、どちらかというと、ある程度専門性が求められる方を多く受け入れています。連携する基幹病院やケアマネジャーさんから最も多くご紹介いただくのは、がんで治療中の方です。自宅療養に多くの時間を費やしているご家族のためにも、当院は常時40ヵ所ほどの訪問看護ステーションと連携しています。診療圏は、半径5km以内です。厚生労働省は訪問診療の範囲を半径16km以内と定めていますが、そうなれば最長で32kmの移動になりますので、できるだけ診療に時間をかけるためには、5kmという距離がベストだと考えました。訪問先は患者さんのご自宅とは限らず、老人ホームやグループホームでも診療を行っています。

往診にも対応されていますね。

そうですね。患者さんやケアマネジャーさんを通じて、「土日や夜間は電話だけの対応で、往診をしてくれないクリニックがある」という話を時々耳にしますが、当院は定期的に訪問している患者さんからの往診依頼には、24時間365日対応しています。絶対に断ることはありません。ちなみに、私はもともとアルコールが好きだったのですが、開業する前日から断酒しています。今はビールのCMを見ても、飲みたいと思わなくなりましたね(笑)。本気で取り組めば取り組むほど、自分の時間が失われていくのが在宅医療です。この体制を良しとする医師が多くないことは理解していますが、これが私の考える在宅医療です。

先生が最も力を入れている治療は何でしょうか。

中野淳院長 さくら在宅クリニック4

一番は、がんの終末期治療。緩和ケアです。病院では医師が主体となって治療を進めることが多いと思いますが、在宅医療では患者さんのこれまでの生活スタイルや患者さんの思いを最大限まで尊重し、十分な話し合いを行った上で治療を提供するべきだと考えます。当院では患者さんがしてほしいことと、してほしくないことを明確に区別した上で、患者さんの気持ちに寄り添った医療を提供しています。例えば、息苦しさなどの耐え難い苦痛を緩和する目的で鎮静剤の使用を開始すると、食事が取れなくなったり、残された時間が短くなったりすることもあります。それを良しとして10ある苦しさを0に近づけるのか、あるいは薬を調整して7や8にするのかということです。私は自分が総合病院で実施していた緩和ケア治療に、在宅医療で得た知見を加味して積極的に症状の緩和を図りながら、できるだけ患者さん本人の希望をかなえられるよう努力しています。

住み慣れた自宅で過ごす、その希望をかなえるために

がんの治療や緩和ケア以外では、どんな処置に対応しているのでしょうか?

中野淳院長 さくら在宅クリニック5

人工呼吸器の管理や気管切開後のカニューレ交換、在宅酸素療法、胃ろうもしくは胃管による経管栄養、高カロリー輸液、膀胱留置カテーテル、膀胱ろう、人工肛門の管理などに対応しています。中でも得意としているのは、人工呼吸器の管理でしょうか。この機器に関しては、やはり呼吸器外科や呼吸器内科、ICUなどで経験を積んだ医師でないと、扱いが難しいと感じます。私はもともと呼吸器外科が専門ですので、在宅での呼吸管理や呼吸器トラブルにも対応可能です。

医師人生の中で、印象深い患者さんはいらっしゃいますか?

在宅医療に専念するずっと前、県外の基幹病院に勤務していた頃の話です。私の担当する患者さんで、がんが再発した方がいらっしゃいました。その方は、抗がん剤を使用すれば予後の延長が期待できたのですが、「抗がん剤を使いたくない」とおっしゃって、治療を受けずに故郷へ帰られたんです。数ヵ月後、心配になって車を1時間半ほど走らせ、お土産を片手にプライベートでその方のおうちを訪ねたのですが、お子さんやお孫さんと実に楽しそうに過ごされていました。外科医時代に、在宅医療を選ばれた方とそんなふうに関わったのはその一度きりですが、今でも忘れられない経験の一つです。人生の残りの時間を、住み慣れた心落ち着く環境で、自分のスタイルで過ごす。 それは、とても理想的な時間の過ごし方だと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

中野淳院長 さくら在宅クリニック6

「自宅でがんの終末期を過ごすなんて、不可能だろう」。そう思われる方のほうが多いかもしれません。私も病院で勤務していた頃は、そう思っていました。病院の緩和ケア病棟に入る選択肢もありますが、今はご自宅で終末期医療が受けられる時代です。入院するメリットと在宅を選ぶメリット、その両方をてんびんにかけた上で当院を望んでいただけるのなら、体が動く範囲で皆さんの希望に応えていきたいです。患者さんとそのご家族が心から「在宅を選んでよかった」と思える療養環境の提供に努め、そして在宅医療がここ高松市に根を張っていく未来を実現できればいいなと思います。

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