田村 光広 院長の独自取材記事
田村胃腸科・内科クリニック
(町田市/鶴川駅)
最終更新日:2025/06/26

鶴川駅から徒歩3分の好立地にある「田村胃腸科・内科クリニック」。1956年にこの地域で開院し、間もなく70年を迎えようとしている。2001年の建て直しを機に、現在の名称へと変更された。院長を務めるのは、先代である父の後を継いだ田村光広先生。院名のとおり、内科をベースに、特に胃腸の診察・治療に高い専門性を持つ。ただし、「私が所属していた医局の方針で、消化器、循環器、呼吸器の3つについては徹底的に研鑽を積みました」と語るように、幅広い分野の診療を高いレベルで提供することにもこだわる。健康診査や人間ドックの重要性を広く訴える田村院長は、内科の医師の役割は「患者を全体的に診て、最後まで寄り添うこと」だと語る。今回は、クリニックの歴史から診療方針まで、さまざまな話を聞いた。
(取材日2025年3月19日)
図面を院長自ら描き細部までこだわり抜いた院内
歴史あるクリニックと伺っています。

私の家は医師の家系で、私が7代目か8代目という話です。曽祖父は東京の代々木で開院し、約70年前に先代院長の父がこの地に開院しました。父は横須賀市から疎開でこの地域に移ってきたそうです。当初のクリニックは、地名にちなんで「能ケ谷診療所」という名前でしたが、2000年頃から始まった区画整理で建て替えたのをきっかけに、現在の名前へと変更しています。私は大学の医局で消化器内科、特に胃腸を専門にやってきたものですから、その特色が患者さんにもわかるように「胃腸」を院名に入れました。
医師になられたのは、やはりご家族の影響ですか?
そうですね、子どもの頃から父の背中を見て育ちましたから、やはりそこは大きいと思います。仕事中の父の姿そのものを見ていたわけではありませんが、ご近所の方から「この間、先生にお世話になった」「家族みんなお世話になっています」と話しかけられると、それだけ父は頑張っているんだなということが間接的に伝わってきました。それに、代々続く医師の家系ですから、周囲は私が医師になるのが当然だと思っていたということもあります。例えば、家に父の医師仲間が遊びに来た時も、「当然、大学は医学部に進むんだろうね?」と声をかけられるわけです。そういった無言のプレッシャーみたいなものも影響したのかもしれませんが、いずれにしろ、今は医師になって良かったなと思います。
院内の造りでこだわった部分はありますか?

実は、建て替えの時に素人ながらも自分で図面を描いたんです。ベッドの位置や動線の引き方、もっと言えば受付カウンターの高さは何センチで、コンセントはそこから何センチ下に何箇所取りつける、というところまで気になる部分はすべて考えました。きちんと図面を描きたかったので、開業医をされている先輩ドクターにアドバイスをいただいたり、計測器持参でいろいろな病院やクリニックにデータを取らせていただきに回ったりしたものです。内装の装飾や椅子などの調度品は、そこだけ別途、婦人科系中心に内装を手がけていた会社に頼んで選んでもらいました。女性建築士の視点が入ったおかげで、装飾品のデザインや壁紙の色合いなどやわらかい印象になったのではないかなと思います。
胃がん・大腸がんから命を守るための内視鏡検査
どんな患者さんが来院しますか?

年代層でいえば、高血圧などの持病で通院されている60~80代くらいの方が多いですね。ただ、当院は胃や腸の内視鏡検査を提供しているので、そちらには若い方もたくさんいらっしゃいます。特に、町田市で約10年前から血液検査でピロリ菌を調べるABC検診を導入してからは、検診で異常が出て精密検査を希望して来院する働き盛りの世代が増えた印象です。患者さん全体としていえるのは、日常生活で努力している方が多くて感心させられるということ。もちろん全員がそのように意識しているわけではありませんが、毎日散歩したり、食生活に気をつけたりする人は意外に多く、健診をきちんと受けている方も少なくありません。当院への通院も、こちらが来てくださいといった日にきちんと通ってくださっています。
診療にあたって心がけていることは?
患者さんを待たせすぎないよう配慮しながら、効率的で満足度の高い医療を提供できるよう心がけています。具体的には、あらかじめ想定される疾患を挙げた上で、的を絞った質問を投げたり、必要な症状を確認したりすることに努めています。この方法で問診を進めることによって、迅速な診断につながり、適切な治療へ導くことが可能になります。患者さんが診察室に入った瞬間から異変がないかどうかを観察することで、パーキンソン病や脳梗塞といった疾患の発見にも役立ちます。効率的な診療を行いつつも、説明にはきちんと時間をかけ、誤解のないよう細かく伝えています。患者さんの満足感を重視し、そのときの状況に応じて柔軟に対応しています。
注力している内視鏡検査について詳しく教えてください。

定期的な内視鏡検査の受診により、胃がんや大腸がんの早期発見につなげられます。ピロリ菌除菌を行っても胃がんになる可能性をゼロにはできないため、定期的な内視鏡検査は必要です。50歳を過ぎると食道がんのリスクも高まり、ピロリ菌がいない場合でも内視鏡検査は2〜3年に一度受診することを推奨します。また、大腸がんへ進行する可能性のある大腸ポリープは、早期に発見し切除を図ることで、予防につなげられます。過去に内視鏡検査で苦しい思いをした患者さんには、完全に眠った状態で検査を行うこともできます。検査中は極力記憶が残らないよう配慮していますので、安心して受診いただけければと思います。胃がんや大腸がんで亡くなる人を減らしたいと願い、検査の重要性をお伝えしており、多忙な働き盛りの世代が内視鏡検査を受けやすくなるよう、予約システムの導入も検討中です。早期発見をめざして、ぜひ受診してください。
「最後まで患者に責任を」という恩師の言葉を今も守る
先生の診療スタンスに影響を与えた出来事などはありますか?

医局に入り、外来開始前に教授から言われた言葉ですね。「初診で診た患者さんは、最後まで君が責任を持ちなさい。自分の専門外の病気だと思われたときは紹介状を書いて他の科に紹介しなさい。そして戻ってきた返事をまとめて最後に総括するところまでが君の仕事です」と。例えば、大きな病院を受診した際に検査で異常が見つからないと、症状があっても診察終了となるケースが少なくありません。この対応は、症状を訴えている患者さんを放り出してしまうようなものであり、プロの内科医師であれば、患者さんの訴える症状に最後まで寄り添い、その原因を追求しようとする姿勢が求められるはずである、という意味が含まれています。当時もそのとおりだと思いましたが、今になってあらためて、教授の教育は素晴らしかったなと感謝しています。患者さんの改善を最後まで見守り、次のステップを考えて、必要に応じて専門家につなげられるよう、日々努めております。
どんな学生時代を過ごされましたか?
大学生時代は、体育会のヨット部に所属していました。当時、いつも優勝を争っている学校が5つあり、うちの大学はその1つだったので練習は厳しかったですね。2人乗りのヨットで、後輩が前に乗って先輩が後ろでかじを取るのですが、4年生と5年生でかじ取りのほうで出場し、4年生では個人で優勝、団体で準優勝。5年生では、個人で準優勝、団体で4位という結果が残せ、一生懸命やったかいがありました。当時の仲間とはもちろん今でも付き合いがあり、年に1回は同窓会をやっていますし、夏の大会の時は漁船を借りて、仲間とともに海の上から現役の後輩に声援を送っていますよ。一つの目標に向かって懸命に努力し、結果が残せた経験は、社会に出てからも役立っています。
健康を守るために読者ができることを何か1つ教えていただけますか。

何らかの症状が出た際には、内科疾患でなさそうでも、まずはかかりつけ医に相談してください。何科を受診すればいいかを仕分けてもらい、必要なら紹介状を書いてもらいましょう。紹介状があれば診断・治療内容がかかりつけ医に伝わりますが、持参しないと伝わりません。紹介先でも解決しない場合は他科を受診する必要があり、その際、新たな紹介状に返事のコピーを添えると無駄な検査を省略でき、紹介先の先生の参考にもなります。それでも診断が難しいケースでは、かかりつけ医が返事を集約して診断用データとして総括して、適切な診断に導いてくれるでしょう。正しい診断を得るためには、データを集積することが大切なのです。