椎名 一雄 院長の独自取材記事
椎名眼科医院
(町田市/成瀬駅)
最終更新日:2025/05/02

JR横浜線成瀬駅北口から右方向へ歩くこと約30秒。「椎名眼科医院」は開業以来30年以上もの間、多くの患者から厚い信頼を寄せられてきた。「いらしてくださるのはクチコミがきっかけの方やご紹介された方が多いですね」。そう優しくほほ笑むのは、院長の椎名一雄先生。椎名院長の話を聞きつけ、わざわざ遠くから通ってくる患者も少なくない。幅広い症状に対応するが、特に白内障、緑内障の患者が多いそうだ。「私の治療体験をもとに、親身になって治療・アドバイスします」という椎名院長に、日々の診療で感じるやりがいや、ライフワークとしている色弱と色覚バリアフリーに関する講演などについて、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2025年4月8日)
自身の治療経験を生かして、患者の気持ちに寄り添う
30年以上も続く歴史のあるクリニックですね。

1991年にこの地で開業しました。東京慈恵会医科大学を1981年に卒業し、最初は外科に進んだんです。手術も好きでしたし、何科にするか決めきれなかったので、とりあえず外科かなと。外科と麻酔科を2年間回って研修医期間を終えた後、眼科に進むことに決意しました。もともと細かい作業も好きでしたし、私自身も強度の近視なので、患者さんの気持ちもよく理解できると思い、この道に決めたのです。その後、町田市民病院で診療科長を務め、医学博士の学位と日本眼科学会眼科専門医の資格も取得し、当院を開業しました。患者さんは地域の方が中心ですが、クチコミで遠方から来てくださる方もいらっしゃいます。子どもから大人まで幅広く通院されていますが、70代がボリュームゾーンです。白内障や緑内障、眼底出血などのご相談が多い印象ですね。
クリニックの特徴を教えてください。
患者さんの気持ちを理解し、共感しながら治療できるところが特徴です。というのも、私自身がいくつかの目の病気を経験しているんです。例えば正常眼圧緑内障でして、10年以上点眼治療を続けています。また、65歳の時に白内障の手術を両目とも受けました。実際に体験した立場から、患者さんの気持ちをくみ取り、手術の流れや見え方について詳しくお話しできるので、安心して手術に臨んでください。さらに、私は中学生の頃から重度の花粉症です。そのため、花粉症の新薬が出るたび、毎回自分で全部試しています。そんな経緯もあり、花粉症の患者さんも多く通われていますね。
先生の実体験をもとに治療やアドバイスをいただけるんですね。

はい、実体験からお話しできることは多いですね。私自身、かなりの強度近視だったので白内障の手術を受けました。自分の経験も踏まえながら、当院では50歳を過ぎた方には白内障の手術を一つの選択肢としてお勧めしています。それから、緑内障のリスクについてもぜひ知っておいていただきたいです。日本人は40歳を超えると20人に1人が緑内障だといわれていますし、私のように近視が強い方だとさらにリスクが高くなります。自覚症状が出る頃には、進行してしまっていることが多いので、35歳を過ぎた近視の方や、ご家族に緑内障の方がいる場合には、年に1回の検査を推奨しています。見え方は、生活の質に大きく影響しますからね。
病気ではなく、病人を診る。対話を重視した診療を実践
医師をめざしたきっかけは何ですか?

医師をめざしたきっかけは、幼稚園の頃にさかのぼります。作文に「大きくなったらお医者さんになりたい」って書いていたんですよ。親が医師というわけではなく、私は長男なので本当は家業を継がなければいけなかったんですが、それでも医師になりたいという気持ちは変わらず、初志貫徹でこの道を選びました。小さい頃、薬剤師だったおばが内科医と結婚して、家の近所にクリニックを開業したんです。よくそこに遊びに行っては、血圧計をいじって遊んでました。今思えば、その経験が原点だったのかもしれませんね。その後、自然と「人の役に立ちたい」と思うようになり、医師という職業に強く惹かれていったんです。今は自分のクリニックで、患者さん一人ひとりと丁寧に向き合える毎日を、とてもありがたく感じています。
患者さんと接する際に大切にしていることを教えてください。
私の母校・東京慈恵会医科大学の創設者である高木兼寛先生の「病気を診ずして病人を診よ」という考え方を大切にしています。同じ病気でも、患者さんの性格や背景によって感じ方、理解度は異なります。例えば緑内障の患者さんでも、神経質な方、心配性な方など、本当にさまざまです。だからこそ私はマニュアル通りの説明ではなく、その方に合わせた伝え方を心がけていますね。最近はIT化が進んで患者さんのデータだけを見て判断することもできるようになってきましたが、私は必ずご本人としっかり会話を交わします。「これまで大きな病気をしたことはありますか?」「車は運転されますか?」「どんなお仕事をしていますか?」など、日常生活の話題を通して、その方の背景や私に求めていることを探ります。AIにはできない、生身の人との対話を大切にしているんです。
どういう時にやりがいを感じますか?

やはり患者さんが喜んでくださる瞬間ですね。目の見え方は、生活に大きく影響を与えますし、心の状態にもつながるんですよね。患者さんが喜びを体全体や言葉で表してくださると、本当にこの仕事をしていて良かったと心から思います。
色弱と色覚バリアフリーの講演に注力
診療はもちろん、講演にも力を入れているそうですね。

約30年前から、色弱に関する講演を行っており、ライフワークにもなっています。きっかけは町田市の小中学校の養護教諭の集まりで、「目の話をしてくれませんか」とお声がけいただいたことでした。色弱について話をしたところ、とても反響があり、そこから町田市内のさまざまな学校や機関に呼ばれるように。色弱の方は実際にどんなふうに見えていて、どう配慮すればお互いに何不自由なく暮らせるか——、そういったことを学校の先生方や企業、市役所などでお伝えしてきました。実は、日本人男性の20人に1人が色弱だといわれていますが、一般の方にはあまり知られていません。色弱の方にも優しい社会をつくるため、これからも活動を続けていきたいと思っています。
講演を通じて、どんなことを期待していますか?
講演を通じて一番伝えたいのは、「色弱じゃない方々にこそ、色弱の方の見え方や困り事を知って、自分事として考えてほしい」ということです。そして、色弱の方にも「自分だけ違う」と引け目を感じず、堂々と生きてほしいですね。眼科医になりましたが、残念ながら現在の医学では色弱を治すことはできません。それが悔しくて、せめて環境を変えていきたいと思い、講演活動をしています。以前、国内大手航空会社に向けて講演しました。その当時、チェックインするとピンク色の搭乗案内の紙が配布されていたのですが、色弱の方はピンク・赤・緑がわかりにくいことを指導。すると1ヵ月後には、搭乗案内の紙がピンクから黄色に変化しました。また、町田市の一部の学校では、テストの採点に赤ペンを使わず、青ペンを使うようになってきました。そういう具体的な変化につながると、本当にうれしいですし、大きなやりがいを感じます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

人間の五感の中でも、目から得る情報は圧倒的に多いんです。文字を発明したことで、さらに目の大切さは増しました。ですから、目を大事にしてあげてください。自覚症状がなくても、年に1回は眼科でチェックすることをお勧めしています。早めに見つけられれば、大きな病気になる前に対処できますし、安心して過ごせますよ。人生100年時代といわれる今、いくつになっても「見える目」を保っていただきたいですね。当院は「目のかかりつけ医」として、皆さんの視力と生活を支える存在でありたいと考えています。目のことで「ちょっと気になるな」「なんか心配だな」と思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。