西村 愼太郎 院長の独自取材記事
西村医院
(北九州市八幡西区/楠橋駅)
最終更新日:2025/08/08

楠橋駅から徒歩15分の場所にある「西村医院」。内科と小児科を掲げ、20年にわたり地域のかかりつけ医を務めてきたのは西村愼太郎院長だ。0歳から約100歳まで幅広い年齢層の患者を診療し「地域医療の相談窓口」にもなっている。地域のニーズに応えようと高齢者向けの訪問診療や病気の子どもを預かる病児保育も行っている。西村院長は、大学病院や総合病院の救急医療や血液内科などでも研鑽を積んできたベテランドクター。「頼りにしてもらえるのはうれしいので、どんな患者さんでも診ます。でも、そんな立派な医師ではないですよ」と、謙遜する西村院長に、診療方針や患者に対する思いを詳しく聞いた。
(取材日2025年7月7日)
診療だけでなく、病院につなぐための相談窓口の役割も
医師をめざしたきっかけを教えてください。

福岡の田舎で生まれ育ち、実家はお金持ちではなかったですが、幼稚園の頃から医師という仕事に憧れていました。母は農家、父は海外航路の船乗りであまり家にいることはなかったので、まず家でできる仕事に興味がありました。近所に、月曜日から土曜日まで診療をして、家族一緒に暮らしているお医者さんがいたのですが、診療に来た人は皆お礼を言って帰っていました。そういった「町のお医者さん」の姿に憧れていました。僕が思い描く生活を考えたとき「こんな良さそうな仕事はほかにない」と思い、医師を志して熊本大学医学部に入学しました。全身を診ることができる医師になりたいと考え、血液内科を専門に選んで学んできました。死に関わる大変な場面もたくさんありましたが、人に必要とされる仕事なので、今も大きなやりがいを感じています。
この場所で開業したきっかけはありますか?
義理の祖父が40年以上前に、この場所で内科や小児科を専門とした「田村医院」を開業したのが当院の始まりです。2代目である義理の父の引退に伴って僕が引き継ぎ、1995年に「西村医院」を開業しました。当院の歴史としては、この場所で60年以上になり僕は3代目にあたります。そのため、僕より長く当院のことを知っていたり、家族3代にわたり通ってくださったりする患者さんがいます。内科や小児科を診る医院ですが、長年通ってくれている患者さんが「何科に行ったらいいかわからないから来ました」と、骨折や歯痛といった症状で頼って来てくれることもあります(笑)。その場合は整形外科や歯科など適切な受診先を紹介しますが、病院に行くための相談窓口のようになるときもありますね。
どのような患者さんが多いですか?

長年通ってくださる患者さんが多く、0歳の赤ちゃんから100歳ぐらいの高齢の方まで来てくれています。小児科ですと予防接種や乳幼児健診はもちろん、発熱や風邪で来院される方、また内科では高血圧や糖尿病、風邪の相談で来られる方が多いですね。ずっと通ってくださっていた患者さんのためにと、少しですが訪問診療をやったり高齢者施設での診療をしたりもしています。若い頃には救急医療の現場にいたので、診られる患者さんは診たいと思っていますが、僕の力が及ばない症状や診きれない主訴の患者さんは、すぐに大きな病院やその症状を得意とする専門の医師に紹介しています。どんな患者さんでも相談に来られた方はまず診ますが、患者さんのために的確な紹介をすることも大切な仕事だと思っています。
患者の話をよく聞き、丁寧でわかりやすい説明を重視
診療時に心がけていることや大切にしていることは何ですか?

内科医の仕事は「患者さんの話をよく聞いて、丁寧にわかりやすく説明をすること」だと思っているので、そうするように心がけています。来てくれた患者さんには「具合が悪かったり、気になることがあったりしたらいつでも来てくださいね」と、伝えています。また、小さな子どもに対しては友達のようになりたいと思っています。発熱していても、本当に病気なのかと思うほど走り回っている元気な子もいるので、キッズスペースを広く設け、おもちゃをたくさん準備しています。子どもが過ごしやすいように畳のスペースも用意していて、毎年畳を新しくして安全性や快適さにも気を配っています。子どもには「またここで遊びたい」と思ってもらえるくらい笑顔で帰ってもらえたら良いなと思います。
院内にはどんな設備がありますか?
さまざまな主訴で来られる患者さんがいるので、心電図やエコー、胃カメラ、エックス線などをそろえて診察しています。また、先代の助言もあって、開業した頃から病児保育も始めました。子どもが体調を崩してしまったけれど、どうしても仕事が休めないという家庭のために子どもを預かるシステムで、当院では首が据わった赤ちゃんから小学校6年生までの子どもを、朝8時半から夕方5時半までの間で面倒を見ています。おたふく風邪や水ぼうそうなど、元気になっても保育園や学校を休まないといけない期間が定められている病気もありますので、長く休むことが難しい保護者が病児保育を利用すれば、職場で肩身の狭い思いをしなくて済むかもしれません。
印象に残っている患者さんのエピソードを教えてください。

以前、胃カメラで検査したところ、胃がんを発見しました。専門の医師を紹介したいと伝えましたが「他の医師ではなくて、先生に最後まで診てほしい」とお願いされました。頼ってもらえるのはありがたいことなのですが、専門の医師のもとで治療して元気な姿をまた見せてくれるのが一番うれしいので、非常に複雑な気持ちになりました。難しいですね。それでも、頼りにしてもらえるのは本当にありがたいことだと思っています。
ずっと通い続けたいと思ってもらえる医院に
スタッフさんの雰囲気が良いですね。

通ってくる患者さんの年齢が幅広くて対応が大変だと思いますが、スタッフは非常によくやってくれていて感謝しています。懇親やリフレッシュの意味合いを込めて、2年1回のペースで、看護師や受付などのスタッフとみんなで旅行に行く「病院旅行」をしています。これまで大阪や千葉にあるテーマパークに行きました。今年も秋に病院旅行を予定しているのですが、企画すると喜んでくれているようでうれしいですね。年末にはスタッフの子どもも参加できる忘年会を開催しています。恒例のビンゴ大会をしますが、景品を持ち寄ったり僕がたくさん用意したりして、みんなで楽しんで盛り上がります。また、スタッフの子どもが病気のときには病児保育で預かることもできるようにしています。
休日の過ごし方を教えてください。
昔は休みの日も病院にいて患者さんを診ていたので、そんなに休みを取っていなかったんです。ただ60歳を過ぎてからはしっかり休みも取るようにしていて、昨年は初めてまとまった夏休みを取りました。家族とハワイへ旅行に行き、ご飯もおいしくてとても楽しかったです。これからは旅行に行きたいですね。ハワイではお土産の定番がマカダミアナッツチョコレートだと思っていましたが、クッキーも人気ということを知りました。ほかにはバレーボールが好きで、若い頃には地域のチームに入って練習したり応援に行ったりもしていました。女性のチームに混ざって練習したこともあって、地域の方々には優しくしていただいています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

僕が60歳になるまでは、休診日や時間外でも患者さんから電話があれば、診察して対応していました。ただ、僕自身がだんだん無理のできない年になってきたので、新たな患者さんを増やしたいというよりも、今来てくださっている患者さんやその家族を大切にして、一人ひとりと向き合っていきたいと考えています。そうはいっても負けず嫌いな性格なので、「あそこの医院が良かった」なんて言われたら悔しいですし嫌かもしれません(笑)。通ってくださる方が通い続けたいと思える医院でありたいですね。困って足を運んでくれた患者さんでしたら、まずどんな症状でもお話を伺います。少しでも困ったことがあれば気軽に相談してほしいと思っています。