星野 澄人 院長の独自取材記事
わかさクリニック所沢
(所沢市/所沢駅)
最終更新日:2024/07/02
埼玉・東京・千葉でクリニックを展開する「わかさクリニック」の分院として、2022年に開業した「わかさクリニック所沢」。西武池袋線・所沢駅から徒歩5分の場所に拠点を構え、病気や高齢化によって通院が困難な患者や自宅で過ごすことを望むがん終末期の患者のもとへ訪問診療や往診に赴いている。専門の異なる複数の医師が在籍し、本院と連携しながら品質にこだわった在宅医療を提供しているのが同院の特徴だ。院長としてスタッフをまとめるのは、消化器外科や化学療法などを専門とする星野澄人先生。穏やかで優しい雰囲気の星野先生の言葉の端々からは、がん終末期や難病を抱える患者への思いやりが垣間見える。そんな星野先生に、クリニックの診療方針や訪問診療に対する思いなどをじっくりと語ってもらった。
(取材日2024年5月31日)
専門の異なる医師たちが、通院が困難な患者を支える
こちらはどのようなクリニックなのでしょうか?
当院は訪問診療を主体としたクリニックです。訪問診療の対象となるのは神経難病や慢性疾患、認知症をはじめとした病気や高齢化が理由で通院が難しい方で、ご自宅に医療チームが赴き診察や薬の処方を行っています。地域は所沢市を中心にクリニックから8km圏内です。最近では、自宅で最期を迎えたいというがん終末期の患者さんも増えてきました。そうした方々のサポートができるよう「在宅での緩和ケア」として、痛みや諸症状の緩和のためのケアやお看取りを行っています。24時間体制で対応していますので、緊急時にも往診に伺うことが可能です。訪問診療の合間には、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患の患者さんの外来診療や予防接種も行っています。
星野先生をはじめ、経験豊富なスタッフがそろっているそうですね。
私ともう一人の常勤医師の他に非常勤の医師が4、5人在籍し、常に2人以上の医師が患者さんのもとへ伺えるようにしています。医師はそれぞれ専門が異なり、消化器外科や内科一般、神経内科など満遍なくカバーできるのが強みです。看護師も患者さんと同じ目線で接することのできる丁寧なスタッフばかりで、信頼しています。訪問診療においては地域のケアマネジャーや介護士の皆さんとの連携も必要不可欠ですから、いつでもチーム医療を大切にしています。院内ではあえて院長室をつくらずにスタッフと机を隣り合わせて仕事しているんですよ。患者さんからの問い合わせの電話があった際にはすぐに情報共有ができますし、気軽に声をかけ合える距離感が気に入っています。
本院とはどのように連携しているのですか?
同じ所沢市内にある本院までは、当院から車で30分ほどの距離です。精密な検査が必要な際にはそちらで検査を受けていただきたいと思い、お勧めしています。専門的な診断を仰ぐ際にも、本院と連携して対応しています。系列のクリニックと連携することで、入院、手術以外であれば幅広い病気の診察・治療を当グループ内で完結することができ、総合病院とほぼ変わらない医療の提供ができていると思います。もし入院が必要になった場合には、地域の病院に紹介しますので、スムーズな手続きが可能です。
患者や家族に寄り添いながら、24時間体制で対応
先生のご専門や院長に就任されるまでのご経歴を教えてください。
私の専門は消化器と外科治療、化学療法です。東京医科大学を卒業してすぐ外科の医局に入局し、外科一般を学んだ後、消化器外科を専攻しました。入局して4年目には神奈川県立がんセンターへ。そこでがんについて集中的に勉強させてもらったことが印象に残っていますし、大学病院での研修同様、医師としての基礎が築かれたと感じています。米国への留学も経験し、その後は大学病院の消化器外科で治療にあたりました。大学病院で先進のがん治療に取り組みながら、その一方で、抗がん剤治療などの副作用のつらさやがんによる痛みなどで外来への通院が難しくなる患者さんが一定数いらっしゃることも気になっていました。そんな折、訪問診療を行う先生とお話しする機会があり「在宅医療でこんなことまでできるのか」と驚きがあったんですね。この出来事から、在宅での緩和ケアという面でも自分の役割があるのではないかと考え、クリニックへの転向を決めました。
訪問診療ではどのような点に力を入れていますか?
患者さんによって抱えている病気や望む治療が異なるため、幅広い治療に対応できるよう心がけています。さらに、当グループの方針として365日24時間対応を掲げていることから、求められればいつでも素早く対応することは意識していますね。当院ではポータブルの超音波検査装置や内視鏡、心電図、グループで所有しているエックス線検査装置など訪問診療用の医療機器を数多くそろえていますので、ご自宅でもクリニックと同じような検査を行うことができます。ポータブルエックス線検査装置を導入している医療機関は、まだ少ないと思いますが、ご高齢の方は体調が変わりやすいため、先進の検査機器を活用することで些細な変化を見逃さないよう努めています。とはいえ、訪問先で使える医療機器には限りがありますから、私たち医師や看護師が知識を広げ、技術を磨き続ける努力は欠かせません。
診療を行う際に、大切にしていることを教えてください。
患者さんに寄り添うこと、これに尽きますね。患者さんの視点に立って物事を考え、今できるより良い医療を届けるのが当院のスタンスです。私は、当院のがん終末期の患者さんの多くを担当しています。そのため、患者さんご自身が終末期をどう過ごしたいかに耳を傾け、ご家族とより充実した時間を持つためにできることを常に考えています。病気の現状や今後について、言葉を選び、時間をかけながら隠さずにお伝えすることも医師としての使命だと思っています。それと、訪問診療では患者さんのご自宅などプライベートな空間にお邪魔するので、靴の脱ぎ方やスリッパのそろえ方に気を遣うのはもちろん、患者さんから話しかけられたらカルテを打つ手を止めるなど、誠意を持って診療にあたることが大切ではないでしょうか。
クリニックの存在が難病患者やがん患者の希望に
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
私が院長に就任する前に勤務していた医院でのことですが、お看取りをした患者さんが住んでいた集合住宅に別の用件で伺った時に、駐車場に当院の車が停まっていることに気づいた奥さまが出てきてくださいました。最後にごあいさつできずに残念だったこと、そして「お力になれず、すみませんでした」とお伝えしたところ、「夫がすごく感謝していました」と温かい言葉をかけてくださったんです。まだ納骨されていなかったので、そのまま手を合わせに行かせていただきました。患者さんに寄り添った診療を続けて良かったと、何より訪問診療を始めて良かったと改めて感じた出来事でした。
お忙しい中での先生のリフレッシュ方法を教えてください。
学生時代はスキー部に所属していたので、今でも冬になるとスキーへ行くのが楽しみです。雪のない時期には、近くの平山でトレッキングをしながら冬へ向けて体を鍛えています。もともと自然が好きなので、こうした自然にふれることのできるアクティビティーはとても癒やされますね。打って変わってインドアな趣味になるのですが、「ネイチャーアクアリウム」をご存じですか? 水槽の中に水草や石、魚を入れて川や自然を再現するもので、とても美しいんですよ。完成した後も週1回のペースで手入れをしなくてはならないのですが、細かい作業が得意ということもあり、かなり熱中しています。
最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。
私たちの願いは、やっとの思いで通院している患者さんが、当院の存在によって訪問診療という選択肢を選べるようになることです。もし通院をつらいと感じている方がいましたら、通院できないからといって治療を諦める必要はないと伝えたいですね。また、治療のために病院で長く過ごされた後、ご自宅に帰りたいという患者さんのお気持ちを尊重したいと思っています。在宅医療となると、ご家族は不安を感じることでしょう。人生の残された時間を、患者さんが穏やかに過ごすにはどうしたらいいのか、気軽に相談していただける場所でありたいと思います。ご自身やご家族が訪問診療の対象になるのかどうか、まずはお電話ください。