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飯島 慶郎 院長の独自取材記事

出雲いいじまクリニック

(出雲市/出雲大社前駅)

最終更新日:2025/06/24

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック main

観光客でにぎわう出雲大社の近く、民家が立ち並ぶエリアの一角に「出雲いいじまクリニック」はある。院長である飯島慶郎先生の自宅の一部をクリニックとして開放、いい意味で病院らしくない、ほっとする空気に満ちている。幼い頃出会った小児科医に感銘を受け、内科分野の研鑽を積む中で、他科で原因が特定できない不定愁訴、ひいては心身症の奥深さに気づき、現在は不登校児童への治療を主に行っている。経歴、子どもの精神疾患に対する思いなどを聞いた。

(取材日2025年5月21日)

3歳で抱いた夢は、どんな相談にも乗れる医師

医師をめざしたきっかけを教えてください。

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック1

幼い頃、私はよく近所の小児科にかかっていました。持ち込まれたさまざまな問題を解決しようとする先生の姿に感銘を受け、3歳の時には「どんな相談にも乗れる町医者になりたい」と明確に夢見ていました。医大を卒業し、その後研修を経て専門を決めていくのですが、総合的に診るようなコースが当時はありませんでした。そこで、私が選んだのが内科です。ただ一概に内科といってもここも細分化されていて、神経血液膠原病内科という内科の中でもやや特殊な分野を担当する、島根医科大学医学部附属病院第三内科を選び、キャリアをスタートいたしました。ここは珍しい病気を診ることができる場所で、循環器や消化器のようなオーソドックスな内科は後からでも勉強できると考え、最初はあえて難しい分野を選びました。

神経血液膠原病内科で得た経験で印象深いものはありますか?

一番勉強したのは神経内科という分野で、ここはとにかく診察の方法が豊富で、いわゆる脳の状態、病気でいうと脳卒中や認知症、パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患などを診るので、そこでは神経診察と呼ばれる複雑な診察方法を使います。思い返せば、私のルーツでもあるかつての小児科でも検査をされたイメージがほとんどありません。そのため、診察メインの医師になりたいともずっと考えてきたので、さまざまな診察方法を学べる神経内科はまさに私のやりたいこととマッチしていました。複雑な神経診察をマスターしたことで、脳や神経の状態を診察で把握するスキルを身につけられたのはとても大きかったです。実際、当院には神経診察に必要な物を除き、検査器具は一切ありません。

心療内科を専門にされたきっかけも教えてください。

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック2

三重大学に総合診療の総本山のような場所が新設されたと聞き、そちらに移りました。ここの総合診療科は、病棟よりも外来をメインに診ていて「何でも診ることができる開業医を育てる」がコンセプトでした。難しい病気については先述の神経内科である程度学んでいたので、コモンディジーズ(有病率が高い一般的疾患)と呼ばれる病気を三重大学医学部で学びました。また、総合心療科は、他の科で原因不明と診断された患者さんが受診することが多く、診察してみると心身症由来であるケースがほとんどです。三重大学の教授は心身症が専門で、不定愁訴を診るためのスキルを教えることにとても熱心な方でした。医学的検査で異常がなくても、丁寧に診察することを教授のもとで垣間見てから、心療内科の奥深さに没頭するようになっていきました。

不登校の子どもが抱える精神疾患の多さ

クリニックは先生お一人で運営されているそうですね。

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック3

はい、できるだけミニマムに運営したかったので、看護師や事務員は雇っていません。完全予約制で、やむを得ない場合以外、飛び込みの受診はお断りしています。もともと私は内科の専門で、心療内科は大学病院で勉強してきましたが、精神科分野に関しては主に独学で補完して開業しました。ただ、精神科専門の医師でないと処方できない薬が昨今出てきているので、診察日を週3〜4日から水曜だけに縮小し、改めて大学で学んでいます。もし人を雇っていたらこういった柔軟な動きはできないので、小回りを利かせるためにも1人で運営しています。そうした工夫の数々により、1人あたり初診60分、再診30分の丁寧な診療時間を確保できています。

不登校児童を多く診ている理由を教えてください。

三重大学で総合診療の経験を積んだ後、島根に帰ってきて、浜田市国保診療所連合体に嘱託医師として勤務していました。診療所群のうちの一つである大麻診療所の所長も務めていて、ここでは私の得意とする心療内科の看板も出し、最終的にはほとんどその分野の患者さんを診ていました。その中で不登校の子どもを診る機会が多く、診察を通して、「学校のことを考えたら頭が痛くなる」「授業に出ようとするとおなかが痛くなる」などはまさに不定愁訴の塊だと気づくようになりました。開業当時は不登校治療を専門にするというより、大きな病院に紹介するまでのつなぎとして機能することを想定していたのですが、そういった場所は予約を取るまでに何ヵ月も待つことや、結局予約すら取らせてもらえないケースが多くを占めるという現実に気づきました。リソースが圧倒的に不足している児童精神科の現実を目の当たりにし、それならば自分がやろうと思うようになりました。

診療の中で心がけていることはありますか?

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック4

不登校の子どもは、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症している確率が非常に高く、こういった病気の治療のためには薬が欠かせません。積極的な薬物治療が当院の強みではありますが、同時に私は心理療法の専門家でもありますから、30分の外来において必要な心理療法も同時に行います。一般的な児童精神科の場合、まずは親御さんと話して、その後お子さん本人を診て、最後に2人から話を聞く、という診察方法がほとんどです。ですが、当院では最初から親子一緒に入ってもらって診察するというやり方を取っています。親御さんとお子さんそれぞれの話を同時に聞いたほうが、理解がより深まると思っているからです。また、子どもと1対1で向き合っても、よく知らないおじさん相手に心を開いてくれるとは思えません。精神疾患を発症している場合、無理にしゃべらせようとするのは逆効果な場合もあるのです。

薬物治療への理解向上のためにできること

今後の展望を教えてください。

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック5

不登校をはじめとした子どものメンタルの相談に関して、精神疾患が原因の大部分を占めることを啓発したいです。子どもが精神科に通うことに抵抗があることも、児童精神科が極端に少ない要因だとも考えています。また、子どもに向精神薬を使った場合、成人への投与より副作用の頻度や程度が高く強く出る傾向があります。「子どもに薬なんて」と言う方も多いですが、内科と総合診療での経験がある私からすると、副作用は出ないに越したことはありませんが、出たとしてもきちんと対処して別のアプローチを取れば良いという方針です。医療側が副作用を恐れて効かない処方になると、患児やご家族にとって何も利益にならないので医療にかかってもらう意味自体がないのではとも思います。薬物治療に対する理解が進むことや私の考えに共感してくれる医師との出会いにも期待しています。1人での医院運営には限りがあるので、仲間を増やしたいです。

子どもを取り巻く問題について、他にも思うことはありますか?

国内の子どもの自殺率の高さからも実態はうかがえます。そして自殺した子どもの生前の状況を調査した海外の心理学的剖検のデータを見ると、高い割合で精神疾患を発症していたことがわかります。ただ、数字に現れていない部分も見過ごせません。精神疾患に冒されていることに本人も周りも気づいていないというケースは多数あります。また、気づいていても治療できる場所がほぼないのが、日本の現状です。精神疾患にかかると、最もエネルギーを使わなければいけないことができなくなっていきます。子どもの場合、まさにそれは「学校」です。子どもはボキャブラリーが少ないため、自分の気持ちや状態をうまく言い表すことができませんが、その不定愁訴を見逃してはいけないのです。

読者へのメッセージをお願いします。

飯島慶郎院長 出雲いいじまクリニック6

繰り返しになりますが、不登校にはかなりの確率で精神疾患が潜んでいます。そのため、少しでも早く病気を見つけ出し、治療を始めることがとても大切です。初診の予約をいただくとき、親御さんに薬物治療に対する抵抗感の強さを確認することもあります。それがあまり強いと当院、ひいては医療にかかっていただくメリットが半減してしまうため、その場合は教育相談や福祉サービスの利用など、別の手段をお伝えするようにしています。精神疾患の改善を図るためには薬が必要不可欠なので、当院の方針をご理解いただいた上で受診を検討いただけたらと思います。

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