平野 仁嗣 院長の独自取材記事
ひらのレディースクリニック
(奈良市/大和西大寺駅)
最終更新日:2022/12/06

近鉄奈良線・京都線・橿原線が乗り入れる駅である大和西大寺駅から徒歩1分。南口バスロータリー前のビル4階に「ひらのレディースクリニック」はある。地元出身の平野仁嗣院長が2020年に開業した産婦人科のクリニックだ。平野院長は、同じく産婦人科の医師である父の姿を見て医師を志すようになり、わかりやすい言葉を使い、思いやりをもって患者とコミュニケーションをとること、最大限の想像力を働かせて優しく丁寧に診察することをモットーにしている。写真を撮られるのが苦手とのことで、インタビュー前半は、語り口のやわらかさと裏腹に、ファインダー越しの表情は硬めだったが、学生時代の思い出や家族について話を向けると、表情がゆるみ、患者に優しく向き合う姿が目に浮かぶ。そんな平野院長に、クリニックについて詳しく聞いた。
(取材日2022年9月2日)
女性の身になって、優しく丁寧な診察を
医師としての歩みを教えてください。

僕が1歳のときに父が大和西大寺駅北口に産婦人科「平野医院」を開業したので、父の姿を見て育つうちに、自然と同じ道をめざすようになりました。少子化の今よりも分娩数は多かったと思うので、夜中に何人ものお産に追われて、子ども心に大変な仕事だという認識はありました。1996年に川崎医科大学を卒業してからは、奈良県立大学附属病院や総合病院の産婦人科で勤務医を経験し、2020年に当院を開業しました。僕が子どもの頃は駅の南側は何もない原っぱでしたが、今では集合住宅も増えて、すっかり新しい街に生まれ変わりました。でも、このあたりには産婦人科が少なかったので、空白地帯を埋めて地域に貢献したいという気持ちで開業しました。実家のクリニックも駅に近かったので、患者さんが通いやすい駅近の立地にこだわったのですが、そのためか、思ったよりも若い患者さんが多いですね。
診察の際に心がけていることを教えてください。
勤務医時代から患者さんには専門用語を使わずに、わかりやすい言葉で説明するように心がけてきました。そして、僕は男性なので、妊娠や出産はもちろん、女性の体のお悩みや病気、それを調べる検査などを実際に経験することはできません。ですから、最大限の想像力を働かせて、優しく丁寧に診察することを心がけています。そして、問診では、患者さんの気持ちや、何を望んでいるのかを、しっかり聞き出せるように努力します。場合によっては、初対面の方に、かなりプライバシーに踏み込んだ内容をお聞きしなくてはならないので、不快に思われないよう、さじ加減が難しいんです。一概に男性だから女性だからと決めつけてはいけませんが、長年、問診をしてきた経験から、女性は言葉の裏にいろいろ隠れた思いがあったり、もやもやを抱えていることが多い気がします。心の奥底にある真意を探り出す苦労は、並大抵ではありません。
医師としての苦労話や、やりがいを感じる瞬間をお聞かせください。

勤務医時代には1週間に複数回の当直があり、体力的にきつかったですね。当直といえば、30代の頃、夜中に緊急のオペをすることになったとき、童顔なので研修医だと思われて、患者さんに「あなたが手術するの?」と不安がられたことがあります。若く見えてうれしい方もいると思いますが、医師という職業では頼りなく見られてマイナスなので、年齢相応に見られたくて、ひげを伸ばし始めました。やりがいを感じるのは、やはり患者さんからポジティブな言葉をかけていただいたときです。優しく丁寧にをモットーに診察しているので、「以前、この検査をよそで受けたときは痛かったけれど、ここでは痛くなかったです」などと言われると、ほっとしますね。
妊婦健診やがん検診、月経の悩みまで対応
クリニックでは、妊婦にはどのようなケアをしていますか。

妊娠初期から中期の妊婦さんを対象に、妊婦健診を実施しています。もちろん、健診以外でもおなかの張りなど心配なことがあったら、ご相談ください。また、健康保険適用外ですが、赤ちゃんの立体的な3D映像をリアルタイムで見られる4Dエコー検査も可能です。それから、助産師による産前産後の乳房ケアを行い、母乳に関するお悩み相談や母乳育児のサポート、乳頭・乳房トラブルへの対応をしています。そして、妊娠を考えている女性やパートナーの方のサポートとしては、不妊相談を行ったり、妊娠中に感染すると赤ちゃんの健康への影響が心配な風疹を予防するMRワクチンの接種を行っています。
妊婦健診以外では、どのような検査を受けられますか。
性感染症の検査と治療も行っています。性感染症ウイルスには不妊の原因になったり、C型肝炎ウイルスやHIVウイルスなど、健康に大きな影響を及ぼすものもあるので、知らないうちに感染していないか心配な方は受診していただきたいです。また、がん検診としては、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの検診を実施しています。検査の結果、子宮頸部にポリープが発見されたら、日帰り手術にて切除を行い、組織検査で良性か悪性か調べます。これらのがん検査に加え、性感染症検査などを行い、総合的に女性特有の病気を調べる検査も行っています。この総合的な検査では、膣内を超音波で検査し、子宮筋腫をはじめさまざまな異常を調べる経膣超音波検査や、血液中のホルモン値により、女性に多い甲状腺の病気を調べる検査も行います。
月経トラブルなど女性の悩みに対応しているんですよね。

下腹部痛や頭痛、吐き気やイライラなど、苦痛や不快な症状が月経時に起きる月経困難症や子宮内膜症、月経前に不快な症状が起きる月経前症候群の患者さんには、低容量ピルや超低容量ピルを処方します。また、避妊を望む方や、スポーツの大会や受験などの大事な予定があり月経周期の変更をしたい方に、低容量ピルの処方もしています。ピルの処方を希望される方には、副作用のリスクへ配慮するのはもちろん、避妊を目的とされる場合は、薬の服用で100パーセントの効果はなく、性病予防のためにもコンドームが必要だと、きちんと理解していただくようにしています。そして、万が一の場合に望まない妊娠を避けるためのアフターピルの処方も行っています。
困ったときに頼られる医師であるために精進あるのみ
オフタイムに楽しんでいる趣味はありますか。

写真が趣味で、今は子どもが幼いため、なかなか行けませんが、以前は、よく車で撮影旅行に行きましたよ。診察室に飾っている写真も自分で撮ったものです。夜景や花火の写真が好きで、花火大会があると友達から連絡が来るんです。大きな大会よりも田舎の小さな大会のほうが、近くでゆったり見られていいですね。写真を始めたのは高校生の頃。写真部に所属し、暗室でフィルムの現像や印画紙の焼きつけも自分でやっていました。ちなみに、高校時代は水泳部にも入っていました。紫外線を一番浴びる部活と、一番浴びない部活をやっていたわけです。水泳も本格的に始めたのは高校からでしたが、僕以外は子どもの頃からバリバリ泳いでいた選手がそろっていて、個人競技で優勝するようなメンバーもいました。仲間に恵まれたおかげで、メドレーリレーで僕は自由形を担当し、近畿大会の記録をつくることもできたんですよ。
医師としての座右の銘はありますか。
恩師の「本当に賢い人は、人に優しい」という言葉です。単に小賢しいのではなく、本当に賢い人は、相手に合わせることができて、自分に余裕を持っているものだ、という意味です。その恩師も、先輩からそのことを学んだと言っていました。医師になるためには学校の成績が優秀ならいいだろうと思う方もいるかもしれませんが、僕は、難しい数学の問題が解けることなんて医師の資質には必要ないと思います。それよりも、目の前で困っている人に手を差し伸べられる思いやりを持っていることが大切だと思うんです。
今後の抱負をお聞かせください。

開業したとき、患者さんとしっかり話をして、理解していただけるような説明ができる医師でありたい、患者さんが困ったときに行きたいと思っていただけるクリニックにしたい、という思いがありました。それを貫き通したいですね。とはいっても、医者は神でも仙人でもなく人間なので、患者さんが多いと気持ちに余裕がなくなるなど、常に同じように患者さんに向き合えているかと言われると、自信はありません。医師になって四半世紀が過ぎましたが、まだまだ修行中。もしかしたら一生、修行で終わるかもしれませんが、精進を重ねていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは妊婦健診/6000円、乳房ケア/2500円~、インフルエンザワクチン/3000円、MRワクチン/9500円~、ピル処方/1500円~