杉本 親寿 院長の独自取材記事
すぎもと内科クリニック
(堺市中区/初芝駅)
最終更新日:2025/06/04

堺市中区にあるクリニックモール内で、2020年から診療を行っている「すぎもと内科クリニック」。呼吸器内科を中心に、風邪や発熱の症状、生活習慣病を含む総合内科として地域医療に貢献を果たしている。「ここは天井が高いでしょう。開放感があってリラックスできると好評です」と出迎えるのは、物静かな中にも気さくで誠実な人柄が感じられる杉本親寿(すぎもと・ちかとし)院長。待合室の書棚に目をやると、洋書の医学本やアニメのフィギュアなど、大人の書斎さながらの趣味性が漂ってくる。呼吸器内科の専門家として国立病院での勤務や新薬の治験にまで携わりながら、地域のかかりつけ医として再スタートを切ったのはなぜか。その理由をひもときながら、同院の診療の特徴に迫ってみた。
(取材日2025年4月23日)
呼吸器を専門に、かかりつけ医として内科全般に対応
クリニックモールの中にあり、すっきりとした明るい空間ですね。

このモールができたのと同時に開業し、今年で5年目なのでまだ真新しさがありますね。最初は駅前なども検討したのですが、よく考えてみると呼吸器の症状がある患者さんなら車でのアクセスのほうが便利ではないかと。それで少し郊外を探していたところ、ちょうどこのモールができるというので開業地に決めました。すぐ隣は調剤薬局ですし、大型スーパーと共有する駐車場は200台以上と十分な環境。路線バスの停留所もすぐ近くにあります。5年前といえば新型コロナウイルス感染症の集団感染が始まった頃で、まずはその対応に追われる日々でした。しかし、もともと呼吸器専門クリニックとして感染症を意識し、隔離室などを用意していたこともあって受け入れには問題ありませんでした。その後も患者さんがひっきりなしにお越しになり、最近になってようやく落ち着いてきたという印象です。
こちらでは、どのような症状に対応していますか?
当院は呼吸器を専門としながらも、一般的な風邪の症状から嘔吐や下痢、腹痛といった消化器症状、メタボリック症候群や高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病まで幅広く診療しています。専門性を持ちながら、いわゆる地域のかかりつけ内科のスタンスを担っていることが当院の特徴です。お越しになる患者さんの約半数は咳や痰、息切れなどの呼吸器症状をお持ちの方で、特にご年配の患者さんは単独の病気だけではなく、いろんな併存症をお持ちのケースが多いもの。大きな病院では専門ごとに分かれてしまうため、受診でお困りの方が結構おられます。それをなんとか同時に診てあげたいと勤務医時代に考えたことが、自身のクリニックを開業する動機となりました。呼吸器の症状や疾患には専門的に対応しつつ、他の内科の病気も同時に診療し、専門の医師の診察が必要であれば近隣の医療機関をご紹介するという形になります。
スタッフや診療体制について教えてください。

医師は私1人ですが、スタッフは総勢で15人。半数が看護師です。人手不足で悩んでいる医療機関が多い中、当院は明るく笑顔が自慢のスタッフに恵まれました。患者さんの評判も良く院長としてはとても有り難く思っています。医療機器に関しても肺機能検査装置、血球検査、呼気NO測定器、エックス線撮影装置など、呼吸器診療に必要な最低限のものはそろえています。ご予約は再診の方に限らせていただいています。初診やご予約のない患者さんは、順番に、できるだけ待たせないように診察させていただいています。予約患者さんを優先しており、患者さんが多い時期はお待たせしてしまうことがありますが、必ず診察させていただきますのでどうかご理解いただければと思います。小児の方に関しては私自身の診療経験が乏しいため、原則お断りしていますが、呼吸器の病気については中学生以上の患者さんは診察させていただいていますのでご了承ください。
医師らしく、目の前にいる人に応えてあげたい
ご開業までの先生の経歴をお聞かせください。

私は医学部を卒業後、大学の特性上、外科・整形外科・内科全般の研修を2年間行い、その後、救命救急について学びを深め、呼吸器内科での勤務を経て、2007年からは呼吸器専門病院として知られているNHO近畿中央呼吸器センターにて数多くの診療を担当してきました。気管支内視鏡室の責任者として肺がんの診断や、間質性肺炎や希少疾患、慢性呼吸不全、中でも指定難病である疾患などの研究に力を注ぎ、また、治験管理研究室長として喘息やCOPDといった一般的な呼吸器疾患の新薬開発にも携わらせていただきました。おかげで呼吸器に関してはかなり専門的な分野まで極めたと自負しています。より多くの患者さんに医療を直接届けたいと考えて開業に至りました。
先生が診療時に心がけていることは?
まずは患者さんの訴えに耳を傾け、わかりやすく簡潔な説明をすることですね。また、症状のある患者さんの場合、まずは症状を取り除いてあげることが第一優先にしています。複数の原因を想定し、それをカバーする治療を行いながら、同時に検査を行い、しっかりと診断をつけて適切な治療へとつなげていきます。専門的な治療が必要な病気は、タイムラグを作らないよう早急に専門施設に紹介するようにしてます。あと、診察中も電子カルテの入力が忙しく、モニターに視線がつい向いてしまいがちです。それでもできるだけ、患者さんの目を見ながらお話を聞き、病気のことを理解してもらうよう心がけています。
生活習慣病の患者さんに関してはいかがですか?

生活習慣病では、特に初診時の診察が重要となります。全部を一気にご説明したのでは患者さんも消化しきれないでしょうから、診察のたびに毎回繰り返しながら1つずつ指導を行っていく感じです。これまでにさまざまな患者さんを診療してきましたが、なかなか一筋縄ではいきません。体に良くないとはわかっていても、生活習慣を急に変えるのは誰しも容易ではないからです。食事療法や運動療法を少しでも意識づけしてもらって、わずかでも良いから改善していくよう指導しています。また、中には咳が止まらないと訴えながらタバコをやめられない方もおられます。タバコを吸っている限りはなかなか咳も治りません。それでも何とか症状を軽減し、少しでも禁煙が成功できるようにお互いに妥協できることは妥協しながら少しずつ改善のための道を探し、意識だけは忘れずにきっかけを見つけていただければと思います。
持てる知識と技術を最大限に生かして改善をサポート
先生が医学の道をめざしたきっかけは?

私は小さい頃から生き物や動物が好きで、自宅で昆虫やカメ、小鳥、犬などを飼っていました。それで将来は生き物に関係した動物学科や生物学科に進みたいと思っていたのですが、自然科学の一つの頂点ともいえる医学の道を選ぶことになりました。医学部を卒業した後も、研修や勤務ではもっぱら研究や専門性の追求にいそしむ毎日。子どもの頃は、いわゆる「お医者さん」に対する憧れはなかったですが、医学の道に入り、呼吸器疾患の領域では世界の最先端を学び、仕事をしているうちに、それよりもその医療を目の前の患者さんに提供したいと思うようになり、結果としてはこうして医師として患者さんと向き合うほうを選ぶことになりました。今のところ、開業したことに後悔はありません。
休日はどのようにお過ごしですか?
診療が多忙なため休診日はほとんど家で寝ているか、掃除するくらいですが、子どものようにかわいがっている愛犬が2頭いて、一緒に散歩や近所にお出かけするのが唯一の癒やしタイムです。仕事から帰るとたわむれてきて、仕事の疲れやストレスが吹き飛びますね。開業してからずっと忙しく、自分の趣味や運動したりする時間も気力もないですが、もう1人医師がいれば少しは余裕ができると思います。適任の先生を見つけて診療をスムーズに回すことも将来に向けた私の課題の一つですね。
読者へのメッセージをお願いします。

開業から5年、おかげさまで大勢の患者さんにお越しいただいています。その感謝を忘れずに、皆さんに満足のいく医療が提供できるよう今後も励んでいきたいと考えています。ただ、病気というものは医師が介入すれば必ず治るというものではなく、ときにはご自身で治すという気持ちも大切となります。私たちはその手助けのために、最大限の知識と技術を持って全力で向き合う所存です。特に当院は呼吸器が専門ですから、「咳が止まらない」「歩くと息があがる」といったお悩みがあれば放置したままにせず、ぜひ一度相談にお越しください。一緒に話し合いながら改善のための道を見つけていきましょう。