工藤 智洋 院長の独自取材記事
西口おなかのくどう内科
(高崎市/高崎駅)
最終更新日:2022/09/12
高崎駅西口から徒歩5分の「西口おなかのくどう内科」。胃と腸の内視鏡検査や日帰り大腸ポリープ切除ができる、消化器内科を中心としたクリニックだ。日本消化器病学会消化器病専門医である工藤院長は、開業までの24年間、消化器内科医として群馬大学医学部附属病院や高崎総合医療センターなどで働いてきた。完治の難しい炎症性腸疾患を数多く扱ってきた経験を生かし、患者にとって通院先を探すのが難しいこの病気を積極的に診察している。人の役に立ちたいという情熱ではなく「意地になって」医学部を受験したという工藤院長。それでも、この仕事が向いていると感じ、今では患者の苦痛が自分のストレスになるほどだと笑う。熱くはないがクールでもない、絶妙なバランスで治療の落としどころを見つける、センスの良さを感じる工藤院長に話を聞いた。
(取材日2022年7月7日)
内視鏡検査で鎮静薬を使えるよう駅近に開業
医師を志した理由や、開業に至るまでのご経験についてお聞きします。
僕は群馬県出身で、県内の高校を卒業して富山医科薬科大学、現在の富山大学に進学し、卒業後は群馬大学の医局に入りました。その後、大学病院からの派遣で県内の病院を回り24年働いて、2020年に当院を開業しました。ここを選んだのは、開業前までの11年間、高崎総合医療センターで働いていたことがきっかけです。病院と連携しやすいように、高崎駅西口から総合医療センターまでの間のエリアでと考えました。それまで僕が診ていた患者さんは重症な方も多かったので、当時の患者さんにも頼ってもらえればと思って、ここに決めました。
クリニックの特徴を教えてください。
勤務医時代の経験で炎症性腸疾患の患者さんを数多く診てきていること、内視鏡での検査や日帰り手術が可能なことでしょうか。内視鏡は好きな仕事でこだわりもあり、技術の習得のために秋田赤十字病院の工藤進英先生のもとで修業に励みました。内視鏡は機材だけでなく技術も進歩していて、やり方がまずいと患者さんは苦痛を感じます。自分自身が痛がりで耐えられないタイプだし、痛い思いをさせて患者さんに嫌われたくない、楽に検査や治療を終わらせてあげたいなと思っています。近年は鎮静剤を使って眠っているうちに検査を受けたいと希望する方も多いですが、群馬は車社会なので、眠くなる薬が使いづらい面があります。そのため、駅やバス停に近いこの場所を選んだという理由もありました。
炎症性腸疾患も専門的に診ているのですか?
新人として群馬大学医学部附属病院に入った頃から高崎総合医療センター時代まで、炎症性腸疾患は数多く診てきました。ポリープやがんだけでなく潰瘍性大腸炎やクローン病も、患者さんがすごく増えているんです。炎症性腸疾患の多くは原因がいまだに不明で、完治は望めない病気ですが、患者さんが良い状態でいられるように、治療と管理をしていきます。炎症性腸疾患の主な症状は腹痛や下痢で、投薬による治療が基本ですが、時には緊急手術が必要になり、その場合は連携先の病院へご紹介することになります。炎症性腸疾患は若い方に起こりやすい病気ですが、最近は高齢者でも発症します。症状は心理的な影響を受けやすく、ストレスのため症状が重くなることもよくあります。
下痢と便秘を繰り返す悪循環から抜け出す治療を
医師の仕事を選んだのはどうしてですか?
僕が受験生だった当時はバブル時代で、文系のほうが華やかでした。僕は文系の頭でもないし、数学とかが好きだったので進学は理系で、医学部かなと考えました。実家は医療関係ではありませんが、開業医をしている親戚から話を聞いて、面白そうな仕事だなと思ったんです。ところが、最初の受験で落ちてしまったので、意地になって(笑)、浪人して富山医科薬科大学に進学しました。入学した頃から、将来は内科医になろうと考えていました。外科は体力的に自信がないし、推理するのが好きなので、内科のほうが向いていると思ったんです。初期研修で消化器内科に回った時、内視鏡を教わるとこれが楽しくて、師匠と呼べる先生にも出会えたし、研修後は入局して消化器を専門にしてきたという感じです。
患者さんの傾向や多い訴えを教えてください。
院名にもあるように当院は「おなかのクリニック」なので、患者さんの訴えは腹部症状が多いですが、高血圧など一般内科の患者さんも3割くらいいます。炎症性腸疾患は3割、それ以外のおなかの症状が3割、残りが健診などですね。世代的には満遍なく、小学生から90代の方までおみえになっていますが、増えているのは若い方、働き盛りの20代30代の方です。最近の傾向として、ストレスからくるおなかの症状が多く、患者さんの訴えもそのような内容が多いです。そうなると診察の際のお話もカウンセリング的になってしまうのですが、ここで引き受けないと患者さんも行くところがなくなってしまうので、限られた時間の中ですが、しっかりとお話を伺うように心がけています。
ストレスのために腹部症状が現れる人が多くなっているんですね。
そうですね。下痢だけでなく、便秘になる方もいます。若い方を中心に増えていますので、生活習慣と食事が影響しているのでしょう。便秘になると、そのためにストレスが強くなり、さらに便秘が重くなるという悪循環に入りがちです。ご自身で便秘薬を使うことで、便秘と下痢を繰り返すようになる方も少なくありません。何日か便が出ない、そのうちおなかが張ったり痛くなったりで冷や汗が出るほどになり、市販薬を使って一気に下痢をして、また便が出なくなるというパターンですね。最近では処方薬に良い薬が出ているので、診察し相談しながら治療方法やお薬を決めています。下痢と便秘を繰り返す負のサイクルから抜け出せるように、早めにご相談いただければと思います。
地域の基幹病院や診療所と連携、専門治療をより身近に
ストレスと消化器は、関係が深いんですね。
病気とストレスの関係には、消化器以外にも分野ごとにエビデンスがいくつもあり、科学的に証明されています。炎症とストレスの相関は強く、難病もまたストレスで悪くなるという論文も世界中で書かれています。炎症性腸疾患の一つである潰瘍性大腸炎などは、完治することがなく治療が一生続くため、メンテナンス治療を続けないといけません。例えば若い女性では、進学、就職、結婚、妊娠・出産と数多くのライフイベントがあり、その中で心身にさまざまなストレスを受けることになりますよね。ライフステージの変化で食生活が変化し、ストレスが引き金になるという点では、アトピー性皮膚炎と似ているところがあります。腸の中もそういう状態なので、日頃からのメンテナンス治療と同様に、ストレス発散も大切です。
今後の展望について教えてください。
クリニックとしては事業拡大ではなくて、より「深化」させたい、深く進化させて質を高めていきたい、ここでできることを洗練されたものにしたいです。そのためには自分もどんどん知識と技術を身につけていかないといけないとも思っています。また、都心では炎症性腸疾患を専門にしているクリニックがありますが、群馬県ではまだ少ないので、当院にも予想以上に重症の方が来院されることがあります。患者さんとしても最初から大きい病院には行けないですから、まず当院で受診していただき、症状が重い場合は適切な病院に紹介するという中継地点の役割も担っていきたいです。最近ではほかの内科クリニックからの紹介や検査依頼、大きい病院からの紹介で、治療が落ち着いた患者さんを受け入れることもあります。これからも地域の他の医療機関と連携しながら、胃腸の難病でお困りの患者さんを診ていきたいと思っています。
読者にメッセージをお願いします。
当院では、老若男女どの世代のおなかの症状にも対応していますが、特に子どもの場合はおなかの所見が取りにくいので、小児科から紹介で来院される方もいます。おなかが痛くて学校に行けなくなっちゃったとか、つらいですよね。診察の結果、緊急を要するという場合以外は、いきなり検査をするのではなくて、先に治療を始めて改善しなければ検査を行います。患者さんが訴える症状は病気の全部ではなく一部分かも知れないので、何かおかしいというときはエコーを取り、内視鏡検査をお勧めしています。胃カメラ、大腸カメラとも、苦痛の少ない内視鏡検査と、ポリープ切除などの日帰り手術も可能ですので、おなかのことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。