山田 圭造 院長の独自取材記事
うめだ心と体のクリニック
(大阪市北区/梅田駅)
最終更新日:2025/04/14

大阪の中心、梅田駅近くのビルの22階に「うめだ心と体のクリニック」はある。同院は山田圭造院長と、関西医科大学名誉教授の木下利彦先生の二診体制で診療にあたる。現代社会の中で過度なストレスにさらされ、心が疲れてしまったり、職場復帰をめざすビジネスパーソンのケアやサポートを中心に、一人ひとりに合わせた丁寧な医療を提供している。本院との連携は密で、働く女性をターゲットにしたリワークプログラムも共同で実施する。「心の疾患も早期治療が大切です。なるべく早い段階で来院していただけるよう、心療内科受診のハードルを下げることをめざしています」と語る山田院長に、クリニックの特徴や診療方針、リワークプログラムなどについて聞いた。
(取材日2024年12月27日)
専門教育を受けた医師による治療や復職サポート
まずは院長先生が精神科を選んだ理由・精神科医としてのやりがいを教えてください。

大学6回生の頃は「うつは心の風邪」というキャッチコピーが妙に頭に残っており、うつ病が一般に注目されるようになってきた時期でした。まだ、取り組んでいる人も少なく、少し興味があったことがきっかけで自然とこの分野に入っていきました。しかし、勉強してみると思ったよりずっと深いことがわかりました。治療には正解がなく、一人ひとりに合った答えを探していかなくてはいけません。環境が変わることで改善につながる方もいれば、考え方を変えないと良くならない方もいます。そんな中で患者さんの考え方が少しずつ変わっていくのを見るのが、何よりの喜びですね。ただし、あくまで患者さんが自ら良くなろうとしており、私はそのお手伝いをしている感覚です。
先生の経歴・クリニックについて教えてください。
大学病院で約10年間勤務し、基礎をたたき込まれました。その後、精神科病院で約10年研鑽を積みました。その頃は、長期間入院されている患者さんの社会復帰をめざした治療を中心に行ってきました。しかし、入院はしていないけれど、心の疲れた方はもっと数多くいるのではないかと考えるようになったんです。大学病院でも精神科病院でも、大学の先輩の入澤聡先生と一緒に働かせていただきました。入澤先生は医療法人入澤会の理事長であり、「いりさわ心と体のクリニック」の院長でもあります。入澤先生はシンプルに、苦しんでいる患者さんを良くしてあげたいという気持ちが強い医師で、以前から多忙なビジネスパーソンの心のケアをされていました。医師の気持ちは鏡のように、患者さんに伝わるので、本気で治そうと考えている医師は患者さんに頼りにされるんです。そんな入澤先生のお考えに強く共感し、2020年より当院の院長に就任しました。
クリニックの特徴を教えてください。

現代はストレス過多の時代なので、気づかないうちに多くのストレスにさらされ、心が徐々にむしばまれる方が数多くいらっしゃいます。当院のある梅田駅や、本院である「いりさわ心と体のクリニック」があるなんば駅は、人の移動も多く、会社もたくさんある場所です。そのため、働いている方がふだんどおり自然に過ごせるためのサポート、そして、心が疲れて休んでいる方の復職サポートに力を入れています。2つのクリニックの診療方針は共通しています。社会復帰を目的に、一人ひとりに合わせた丁寧な医療を提供することをめざしています。また、両院にはしっかり教育を受けた医師が複数在籍し、心理検査を用いて客観的に診察しています。さらに、それぞれ専門があるので連携しながら診療できる点が強みです。
精神療法や心理検査に基づくクオリティーの高い医療を
医師・スタッフを含め、チームで医療を提供することを大切にされているそうですね。

木曜日の午後のみ関西医科大学名誉教授の木下利彦先生と二診体制で診療しています。私の関西医科大学時代の恩師であり、大学病院や企業で豊富な経験をお持ちの木下先生がいらっしゃることは、とても心強いです。また、心理士や受付スタッフなどチーム全員が精神医療に携わってきたので、クオリティーの高い医療の提供に努めています。心理士については病院や企業などでのカウンセリング経験も豊富なスタッフばかりです。受付スタッフは初診受付から診察終了まで丁寧な説明と誠実な対応を心がけ、患者さんが安心して相談できるクリニックとなるよう接遇面などを定期的に学んでいます。患者さんの情報についても問診票を介して不明点を聞いてもらい、医師と連携を図り統一した対応を行うようにしています。
精神科の診療において受診のタイミングは重要なのですね。
場所柄ビジネスパーソンが多く、「気持ちが落ち込む」「会社に行くと思うと涙が出たり、えずいたりする」などの症状が数多く見られます。心療内科は、初発のタイミングできちんと診ることが大切です。治療は症状を軽くするよう図ることから始め、少しずつ視野を広げていきます。ただ薬を処方するのではなく、ストレスには休養が大切なので、まずはゆっくり休んでもらいます。体が動いたり、仕事のことを考えてもつらくなくなったりするような状態にまでつながれば、次の段階に入っていけます。ストレスに弱い方は生真面目な場合が多いので、最終的には物事に対しての捉え方を変えるようめざします。できるだけつらいと思わないよう、心の持ちようをコントロールしたりストレスから避けたりできるように促すことができたら、生活しやすくなるでしょう。
治療の流れはどのようになるのでしょうか?

抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬など一人ひとりに適した薬を処方します。当院では漢方も用いています。精神療法では、患者さんの生活状況や原因となったイベントを聞きます。その時、どう感じたか深く掘り下げ、考え方の傾向を分析してお伝えします。本人が考え方を変えていくためのお手伝いをするんです。さらに、患者さんの生活パターンを聞き、睡眠や食生活のアドバイスをします。心理検査では、エゴグラムを用いて目に見える形で性格傾向を明らかにしたり、さらに専門的な検査を行い、わかりやすく本人にフィードバックします。その際は、患者さんの性格や日常生活にからめた形で、実例を挙げて説明しています。
働く女性を対象にしたリワークプログラムも充実
リワークプログラムについて教えてください。

仕事を休んで病状の回復が望めるレベルに比べて、職場で仕事ができるレベルの病気の回復度合いははるかに高いのです。医師を含めたスタッフの観察と評価で復職に至る回復度合いに足りているかを測るプログラムが、リワークプログラムといえます。当院はなんばの本院と連携して、リワークプログラムを行っています。これは働く女性をターゲットにした、女性公認心理師による復職のためのプログラムです。受講者の人数を絞ることによって、より深くアプローチしたいと考えています。心理教育の講義を受講したり、グループワークを行うことで、対人関係能力の改善をめざします。しっかり連携して患者さんの情報を共有し、本院のスタッフに治療に関する希望も伝えることができます。患者さん本人の報告だけでなく、診療的な視点から客観的な経過も知ることができる点は、治療に大いに役立つと考えています。
患者さんと接する時、心がけていることはありますか?
初診時にはうまく話せない患者さんも多くおられます。そういった方にはゆっくり時間を取り、適切な声がけを行うことで患者さんに安心してお話しいただけるよう心がけています。そうすることで、信頼関係を築くことはもちろん、できるだけ詳細に状態を把握し、その方にとって有用な治療にもつなげていきたいと思っています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

いかに心療内科を受診するハードルを下げられるかが課題だと思います。心の疾患も早期治療が大切です。「もっと早く来てくれていたら……」というケースが多く、もどかしい思いをすることがよくあります。無理をしすぎないことが大切なのですが、日本人は加減ができず頑張ってしまう方が多いんです。体が動かないため、やむを得ず仕事を休みますが、「周りに迷惑をかけていないか」と悩んだり、復職した時の不安を抱えてしまいます。体がつらいとか、眠れないというのはストレスがあふれ出る限界が近いという合図かもしれません。動悸・めまいなど体の不良を感じたら、内科・耳鼻科など専門の科を受診されると思いますが、そこで異常がなければ、体がストレスに過剰に反応している可能性もあるので心療内科に相談してほしいですね。仕事帰りでも、買い物のついででも、気軽に来院してください。