稲本 隆平 院長の独自取材記事
いなもと耳鼻咽喉科
(高松市/一宮駅)
最終更新日:2021/10/12

「地域のかかりつけ医として、皆さんの生活をサポートできる医療を提供したい」。そんな思いを胸に、院長の稲本隆平先生が高松市一宮町に2020年に開業した「いなもと耳鼻咽喉科」。香川で生まれ育った稲本院長は、香川医科大学医学部を卒業後、香川大学医学部付属病院、小豆島中央病院などで研鑽を積んだ。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医の資格を持ち、耳、鼻、喉、めまいなどの症状に幅広く対応する。専門である小児難聴については、小児専用の検査機器をそろえ、検査体制の充実にも取り組む。やわらかい物腰と穏やかな語り口が印象的な稲本院長に、クリニックづくりや力を入れる治療、今後の展望などについて語ってもらった。
(取材日2021年5月28日)
なんでも気軽に相談できる地域のかかりつけ医めざして
すてきなクリニックですね。外観や内装のこだわりをお聞かせいただけますか。

患者さんに心穏やかに過ごしていただけるよう、森をイメージしています。木を多用し、黄緑色をポイントカラーにして、待合室には大きな窓を設けて開放感を意識しました。院内はバリアフリー設計で、車いすの方やベビーカーでも入り口から診察室までスムーズにお入りいただけます。待ち時間も楽しんでもらえたらと思い、キッズスペースには絵本や漫画をたくさん置いています。今の時期の開業なので、発熱の症状がある方は通常とは異なる場所から出入りできるようにしたのもポイントです。実は父が設計士で、今回設計を手がけてくれたんですよ。さまざまなアイデアを出して工夫を凝らしてくれて、僕の思い描いていたとおりクリニックができあがり、父には感謝しかないですね。
この場所を選んだのはなぜですか。また、患者層と主訴についても教えてください。
僕は香川県出身で、高校、大学、勤務先もずっと香川なんです。実家の近くで開業したいなと思って探す中で、住宅地で交通の便が良い場所ということでこちらを選びました。患者さんは、近隣の方を中心にお子さんからお年寄りまで幅広いですね。特に小さなお子さんが多く、鼻水や咳が出るといった訴えが中心です。若い方では春は花粉症、今は風邪が増えてきました。最近はお年寄りの方も多くなり、耳、鼻、喉の症状に加えて、補聴器のご相談もお受けしています。
患者さんと接するときに心がけているのはどんなことですか。

なんでもご相談していただける地域のかかりつけ医をめざして開業しましたので、患者さんの苦痛や不安の声にしっかりと耳を傾けて、病状や治療方法を丁寧にわかりやすくご説明することを心がけています。時間に余裕があれば十分に時間をかけるようにしていますが、お待たせするのも申し訳ありませんので、その辺りは調節しながら対応しています。
補聴器の適正な購入・活用をしっかりサポート
小さなお子さんによく見られる症状について詳しく教えていただけますか。

鼻水や咳が出る原因としては、ダニやハウスダストによるアレルギー性鼻炎が多いです。放置すると喘息やアトピー性皮膚炎などに移行することがありますので、早い段階からきちんと治療することをお勧めします。また、鼓膜の奥に液体がたまる滲出性中耳炎は、鼻水をそのままにするといつの間にか発症することが少なくありません。症状としてはそれほどひどくないのですが、聞こえが悪くなると言葉の発達やコミュニケーションに影響を及ぼすことがありますので、しきりに耳を触る、呼びかけに応じない、聞き返しが多いといった様子があれば、検査、治療を受けたほうがいいと思います。ちなみに、小さなお子さんの聴力検査には専用の検査機器が必要になりますが、当院では聴力を測定する「条件詮索反応聴力検査(COR)」「ピープショウテスト」という方法を導入して、小児難聴にも対応しています。
補聴器に関する診療にも力を入れているそうですね。補聴器の選び方について教えてください。
まず、補聴器を装着するかどうかは、ご本人がお困りかどうかがポイントです。たとえ難聴でもご本人が不便を感じていなければ補聴器の購入をお勧めしません。補聴器の使用を考え始めたら、最初に耳鼻咽喉科で診察を受けることをお勧めします。聴力を詳しく調べると同時に、難聴以外の病気がないか確認して、何かあれば治療を行います。その上でお一人お一人に合った補聴器を選びます。補聴器は使い始めてからも聞こえ方や音量など細かく調整しなければなりませんが、繰り返し調整することで脳が慣れて聞きやすくなります。当院では専門的に調整することができますので、使い始めはもちろん使ってみて不具合などがあれば遠慮なくご相談ください。
難聴は認知症のリスクを高めることも問題だとお聞きしました。

難聴になると、家族や友人などとコミュニケーションが取りづらくなり、自信を失って認知症を発症したり、社会的に孤立してうつ状態に陥ったり、さまざまな影響が表れます。さらに、昨年から新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、マスクをすることで高音が聞こえにくい、パーティションがあることで音が届きづらいなど、これまでより聞こえづらい状況になっています。外出や外食する機会が減って会話も少なくなっていますよね。こういった状況が続くと、認知症が進んでしまう可能性があります。認知症予防には、補聴器をうまく活用してコミュニケーションを増やすことが大事だと思いますね。
めまい、睡眠時無呼吸症候群、舌下免疫療法にも対応
めまいや睡眠時無呼吸症候群にも対応されているんですね。

めまいは、自分や周囲がぐるぐる回る「回転性」のものと体や地面がふわふわするように感じる「浮動性」のものに分けられます。当院では回転性めまいの方が多いですね。めまいの診療ではベッドに横になっていただく処置が多いので、診療室を広めに取っています。睡眠時無呼吸症候群は、鼻が詰まったり肥満によって首回りに脂肪がついたりすることで舌が奥に落ち込み、空気の通り道が狭くなることで生じます。ご家族にいびきや無呼吸を指摘された、日中眠いなどの症状があれば、検査を受けることをお勧めします。睡眠時無呼吸症候群はさまざまな診療科で診ていますが、耳鼻咽喉科では鼻の中や喉まで詳しく診ることができます。
鼻、耳、喉の健康を保つには、普段どのようなことに気をつけたらいいでしょうか。
鼻が不調だと耳や喉も悪くなりやすいですし、鼻が詰まると口呼吸になりやすくなります。口呼吸は外気と一緒に細菌やウイルスを直接取り込んでしまいますので、喉のバリア機能が低下して風邪などの病気になりやすくなるんです。うがいやこまめな水分補給などで鼻と喉が乾燥しないように、また、口呼吸をしないように気をつけられたら、病気にかかりにくいと思いますね。
最後に、これから力を入れていきたいことについてお聞かせください。

一つは、お子さんの聴力検査です。大学病院で小児難聴を専門にしていたのですが、小児難聴の検査ができる施設が少なく、学校を休んでいただかなければいけないことも少なくありませんでした。クリニックでも専門的な検査ができたら便利だと思いますので、今後さらに検査体制を充実させたいと考えています。もう一つは、アレルギーですね。当院では、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎の方に対する「舌下免疫療法」を行っています。これはアレルギーの原因となる物質を舌の下に少しずつ投与し、3~5年かけて体質の改善を促し症状を抑えることをめざすという方法です。お子さんの場合は、薬をきちんと飲むことができる5歳くらいから始めることができます。興味のある方は、ぜひご相談ください。