野上 敦史 院長の独自取材記事
のがみ歯科医院
(大阪市東住吉区/東部市場前駅)
最終更新日:2025/05/01

大和路線の東部市場前駅を下車し、天王寺方面に歩いて10分ほどの静かな住宅地にある「のがみ歯科医院」。桑津で生まれ育った院長の野上敦史先生が2020年3月にオープンしたクリニックで、かわいい動物のイラストが描かれた外壁が印象的だ。今まで歯科が身近でなかった人にも「気づけばそこに歯科があった」というくらい自然で身近な存在になることをめざしているという同院は、あらゆる人にオープン。就労支援やコミュニティーづくりにも寄与しながら、地域に根差した医療を提供している。語り口がやわらかで、患者の緊張や不安を取り除くことに尽力する野上院長に、同院の特長、診療時の心がけなど、幅広く話を聞いた。
(取材日2022年6月9日)
人と人がつながるクリニックをめざして開業
広々として、子どもだけでなく大人も居心地の良いクリニックですね。

ありがとうございます。院内には、診療室のほかにイベントができる空間やカフェスペースも併設しています。歯科クリニックというと「行きづらいところ」といったイメージがありますが、「今まで歯科クリニックに足が向かなかった人にも来てほしい」という強い思いがありましたので、立ち寄りやすい環境を整えることで誰もが気軽に来られるクリニックにしようと考えました。コンセプトは「気づけばそこに歯科があった」です。歯科クリニックの枠にとらわれず、不定期でシェフや鍼灸師、アーティストなど異業種の人々とさまざまなイベントも行っていますので、気軽にのぞいてみてほしいですね。
すてきなコンセプトですね。こちらの場所に開業したのはなぜですか?
私の地元なんですよ。昔から開業するなら地元にと考えていました。以前にシェアハウスを開設したことがあるのですが、その時にいろんな国籍の人が老若男女問わず喜んでくれて、地域の人とつながるって大事だなと感じたんです。こちらのクリニックを開業してからも、訪問をすると患者さん家族が喜んでくださったり、逆に患者さんたちが私や私の家族のことまで気にして声をかけてくれたりします。地域貢献や社会寄与といった目的のためというよりは、一人の人間として自分のスキルを生かしつつ、自分が育った町の人たちとのつながりの中で生きていくということを大事にしたいと思ってここに開業しました。
こちらのクリニックが注力している診療は何ですか?

やはり予防ですね。当院では、10年後、20年後を見据えた治療プランの提案をめざしています。長期間にわたって患者さんを診ていくためには、資料を取って比較することが重要です。そこで、当院では毎回患者さんのお口の中を撮影しています。例えば、定期的な検診で「きれいに磨けていますよ」とただ歯科医師に言われるよりも、前回と今回の画像を見比べながら「ここが前回よりもきれいになりました」と視覚で確認できるほうがよりわかりやすいですし、患者さんのモチベーション維持にもつながりますよね。さらに、歯科衛生士の教育にも力を入れています。定期的に勉強会に参加して技術面のアップデートを図っているほか、心のこもったケアができるようサブカルテに患者さん情報を書き込んでスタッフ間で共有しています。また、個性豊かな歯科衛生士がそろっているのも当院の魅力になっていると思います。
診療データを蓄積・解析して、適切な治療につなげる
クリニックでは、さまざまな取り組みもされているそうですね。

ええ。例えば、SDGsへの取り組みとして使用済み歯ブラシの回収をしています。きっかけは、廃棄食材を活用した飲食店をやっている知人でした。それに刺激を受けて、私も歯ブラシのリサイクルプロジェクトに参画したんです。始めてみると、当院がめざしている予防医療の姿にも通じるところがあるとわかりました。患者さんの持ってくる歯ブラシで定期的なチェックができることに気がついたんです。歯ブラシの毛の曲がり方や減り方で、どのくらい磨いていたのか、強さはどうなのかなど、患者さんの日常が読み取れます。今はお口の中の写真だけでなく、歯ブラシの写真もデータに蓄積しています。歯科医師の目が届かない日頃のケアまで見えてくるので、アドバイスもより的確になったように思いますね。
診療において、心がけていることはありますか?
健康な歯はできるだけ削らないよう、入れたかぶせ物や入れ歯はできるだけ長く使えるような提案を心がけています。そのため、治療ではマイクロスコープを使うケースも多く、特に根管治療や前歯などの審美的なところは必ず使用しています。一般的に、マイクロスコープを使った治療は自由診療のみと限定しているクリニックが多いですが、当院ではマイクロスコープの使用においては、すみ分けを行っていません。もちろん、材料などで自由診療となる部分はあるのですが、まずは「自分ができる限りの治療を提供する」「医療人として納得できるものを提供したい」と考えているんです。
患者さんと接する中で、気をつけていることはありますか?

歯科クリニックは歯を診るだけでなく、医療機関として、その人の全身の健康を診る必要があると思っています。ですから、患者さんとのコミュニケーションでは、日常の変化や何げない習慣など些細なことも聞き逃さないように気をつけています。例えば、歯はきれいなのに虫歯になりやすいという人がいて、普段の様子を聞くと食後に吐き気がすると言う。すぐに内科を受診してもらったら、胃酸過多であることがわかったというようなケースもあります。また、いつもはきれいに歯磨きができていたのに急に雑なケアになって、調べてもらったら認知症が見つかったというケースも。インプラント治療や根管治療などの治療技術を高めていくことはもちろんですが、「どんな小さな変化も見逃さない」といった目も養っていきたいと思っています。
患者に寄り添い、歯を見つめるきっかけを提供していく
ところで、お休みの日はどのように過ごされていますか?

休日は、子育てや家事などを私が一手に担っています。自分自身が子育て世代ですから、子どもは本当にかわいいけれど本当に大変だということを、わかっているつもりです。患者さんの中には、子どもが騒いで申し訳なさそうにしている人もいるのですが、まったく気にせずお越しいただきたいですね。院内は広く、ベビーカーや車いすも楽に移動できるスペースを確保していますから、多少走り回っても大丈夫ですし、2階には滑り台のあるフリースペースや人工芝が敷いてあるベランダもあるんです。中には、ごろんと寝転んで子どもの診療をのんびりと待っているお母さんもいるほど。また、どうしても怖がって治療ができない子どもには笑気麻酔といった設備も備えていますので、安心してご相談いただければと思います。
今後の展望もお聞かせください。
当院はヘルスケアに重きを置いた診療を心がけています。そのために欠かせないのは、予防歯科の発展です。予防への関心は、若い世代で定着してきているといってもまだまだだといえます。また、予防歯科に直接的に関わる歯科衛生士の育成も重要な要素です。今の自分にできることは、これまで蓄積してきた患者さんの治療データをしっかり分析して次の世代につなげること。例えば、何歳の時のこういったケアが重要とか、こういった傾向の人にはこの歯ブラシがいいとか。まだ数年ですが、20年、30年と収集して、いつか歯科衛生士や歯科医師のより良い処置に結びつく成果を発表できればと考えています。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

お口の健康寿命を延ばすには、まず自分の状態を知ることが大事です。その結果を知った上で、治療を受けるか・受けないかは、患者さん自身が決めればいいのではないでしょうか。なぜなら、治療を受けること自体が患者さんの健康寿命を延ばすのではなく、患者さん自らがご自身の健康に目を向け、ライフスタイルそのものを見直さなければ健康寿命を延ばすことにはつながらないからです。当院では、患者さん一人ひとりの生活スタイルに合わせた治療提案を行い、健康な歯につながるアドバイスを心がけています。一般的な歯科クリニックとは雰囲気の異なる当院なら、今まで歯科クリニックに行く気になれなかった人でも、気軽に来ていただけるかと思います。当院との出会いが、豊かな人生を過ごすための一つのきっかけとなればうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはセラミックを用いた補綴治療/詰め物:2万円~、インプラント治療/前歯:49万5000円~、奥歯:44万円~