井上 聡 院長の独自取材記事
井上さとし内科
(福岡市西区/橋本駅)
最終更新日:2021/10/12

壱岐南小学校前バス停から徒歩3分、道隈交差点に2020年10月8日に開院したばかりの「井上さとし内科」。21台分の駐車場を備えており、車での通院も便利だ。院内は感染症対策のため換気や動線にこだわった造りになっており、まるでホテルのエントランスのような待合室は清潔感とリラックス感にあふれている。院長の井上聡先生は内科全般をはじめ、消化器外科や外傷外科に精通するほか、佐賀大学医学部附属病院の高度救命救急センターであらゆる急病を専門的に診療しながら、外傷外科を立ち上げるなど、幅広い診療に対応する目と腕を磨いてきた。今回のインタビューでは井上院長にこれまでの経歴をはじめ、クリニックの特徴、めざすクリニックの姿などについて幅広く話を聞いた。
(取材日2020年11月20日)
米国での臨床・研究、佐賀大学での外傷外科の立ち上げ
大学卒業後、消化器外科を選ばれたそうですが、その理由を教えていただけますか?

祖父の代からの医師家系で、特に外科だった父の背中をずっと見てきたことが大きく影響し、私も医療の道をめざして東京医科大学医学部に入学しました。卒業時には内科に進むか外科に進むかで迷っていましたが、医師の姿をイメージした時に、やはりメスを持っている印象が強かったこともあって消化器外科に入局し初期研修を受けました。以来、東京都立駒込病院や東京慈恵会医科大学附属病院などで主に消化器系のがん治療に取り組んできました。
先生はアメリカでも外科医師として臨床に携わったそうですね。
東京慈恵会医科大学時代に米国のMDアンダーソンがんセンターに留学しました。それまでは臨床ばかりでほとんど研究をする暇もなかったので、良い機会だと考え2年半の間、がんの研究に打ち込みました。一時帰国したのですが、どうしてもアメリカで臨床にも挑戦したいと思い医局を退局。退路を断ちシダース・サイナイ医療センターに着任しました。そして研究を重ね、UCLA外科学講座外傷外科チームに参加することに。日本で外傷といえば交通事故を思い浮かべる方も多いと思いますが、アメリカは銃社会なのでガンショットによる患者が非常に多かったのを思い出します。命に関わるという緊張感ある現場の中で、治療におけるスピード感に加えて、医師としての一瞬一瞬の判断力などが非常に鍛えられたと思います。またさまざまな人種や宗教の方々との接点があり、今後日本においても必要になると思われる多様性への対応能力の重要性について考えさせられました。
日本に戻られた後は、大学病院の救命救急センターで外傷外科を立ち上げられたとお聞きしました。

一時はアメリカに永住しようとも考えていたのですが、初期研修時代を過ごした佐賀大学医学部附属病院の高度救命救急センターで外傷外科を立ち上げるというお話をいただいたことをきっかけに日本へと戻りました。そこでなら外傷外科の医師としてアメリカでの経験も生かせると思ったのです。日本での外傷外科、および救命救急の多くは交通事故や転落事故によるけがですが、それ以外にも脳卒中や心筋梗塞、重症肺炎、敗血症などさまざまな病気の患者さんが運ばれてきます。そうした患者さんに対して、既往歴もわからないまま処置を行うためにはすべての領域をカバーできるような力が必要です。そうした経験の中で、外科だけにとらわれない内科的なアプローチを含めた治療を学んでいきました。
重大な病気を見逃さず早期発見・早期治療につなげたい
開業しようと思われたきっかけは?

救命救急という特殊性もあって、やりがいはある一方で患者さんとのコミュニケーションが少ないことに少し物足りなさを感じていたんだと思います。医師としてのモチベーションは回復した患者さんの喜ぶ姿にありますから。教授という職務上、現場から離れて対外的な活動や講演などの出張も多くなり、一生地に足をつけてやりたいことは何だろうと自分に問うた時に、開業していた父の姿が浮かびました。それからご縁もあって、2020年10月に当院を開業しました。周辺は住宅街なので、自分の知識と技術を生かしながらさまざまな面から力になれるのではないかと思っています。
めざすクリニック像を教えてください。
地域のかかりつけ医になりたいですね。救急という現場で幅広い病気に対応してきたので、内科をはじめ、消化器科、内視鏡内科、外科を診療していますが、それだけに留まらず、何科を受診すれば良いのかわからないような時にも気軽にご相談ください。軽傷と重傷を見分ける嗅覚があるというのは、救急に携わってきた医師の特徴でもあります。ちょっとしたけがでも構いませんし、おなかが痛い、風邪をひいた、慢性疾患があるなど、地域のクリニックとしての役割を総合的に果たしていきたいと思っています。内視鏡による大腸ポリープ切除などにも対応していますが、入院が必要な場合や大きな手術が必要な場合などには高次医療機関へつなぎ、退院後にはこちらでフォローアップするような病診連携も積極的に行っています。
外科的見地からの生活習慣病など慢性疾患へのアプローチについて教えていただけますか?

救命救急センターには糖尿病が原因で起きるケトアシドーシス、低血糖、高血圧に起因した大動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中などの患者さんも運ばれてくるため、そういった面から重度の生活習慣病の治療に携わってきました。また急性期を脱した患者さんのコンサルテーションを通して生活習慣病についての知識を深めてきたので、総合的な診療が土台となっていて、さらに外科という強みを生かしながら慢性疾患にも関わっていきたいですね。近隣にはご高齢の方も多く、一般的な生活習慣病は一つの命題でもあります。糖尿病の合併症として網膜症、腎症、末梢神経障害などが有名ですが、がんの発生のリスクも高くなります。そうした患者さんには消化器科の見地から早期発見・早期治療につなげるなど、重大な病気の兆候を見逃すことなく診療にあたっていきたいと考えています。
一人ひとりのニーズに合った解決方法を探る
開業されるにあたってこだわった部分はありますか?

まずは、患者さんがリラックスして過ごせるように清潔感やぬくもりのある居心地の良い空間づくりです。また感染症対策として、効率的な院内換気ができること、トイレや出入り口の位置など発熱のある患者さんの動線なども工夫を凝らしています。一通りの検査に対応できるよう、検査機器も充実させました。心電図やエコー、エックス線検査機器、簡易な血液検査、血管年齢や骨密度の測定も可能です。内視鏡に関しては、患者さんのニーズに応えられるよう苦痛が少ない経口及び経鼻の胃カメラ・大腸内視鏡検査が可能です。鎮静剤を用いて眠っている間に検査を行うこともできます。また内科のクリニックでありながら、皮膚や皮下の腫瘍、肛門病変、ケガなどの外科的疾患の診療ができるのも当院の強みです。私がこだわった部分は地域のかかりつけ医としてほとんどの病気は自院で検査や治療が可能であるという、今までの自分のキャリアを生かせるクリニックづくりです。
患者さんと向き合う際に、大切にしていることをお聞かせいただけますか?
押しつけがましくならず、かつ患者さんの言葉によく耳を傾けること。抽象的かもしれませんが、近づきすぎず離れすぎず、ちょうど良い距離感で向き合えるように気をつけています。また患者さんに対しては「私の健康手帳」をお渡ししていますが、これにより治療の内容や気をつけるポイント、検査データなどをファイリングして経過を振り返ることができるようになっています。特に慢性疾患の方については、今どのような治療をしていて、どこをめざしているかというゴールを示すことが大切ですから。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

何となく調子が悪い、疲れやすくなったなど、主訴がはっきりしない体調不良でも構いません。病気を見つけること、何が問題になっているのかを発見することは、救命救急や外科の経験があるからこそ得意な点です。おかしいなと思ったらまずはご相談ください。私も1日も早く地域の皆さんに溶け込んで、地域の頼れるかかりつけ医になりたいですね。きちんと話し合いながら、皆さんのニーズに合った解決方法を一緒に探していきましょう。