河野 英司 院長、河野 百合子 副院長の独自取材記事
かわのデンタルクリニック
(札幌市清田区/福住駅)
最終更新日:2021/10/12

札幌市清田区に2020年5月に開院した「かわのデンタルクリニック」は、障害者の歯科診療に長年携わってきた河野英司院長と、小児歯科を専門に今も北海道各地を飛び回って診療を行っている河野百合子副院長が、夫婦二人三脚で運営している歯科クリニックだ。一般歯科も診ながら、「障害がある方や小さいお子さんなど、自分ではお口の管理ができない人たちの健康をサポートしたい」と専門性を打ち出している。穏やかで優しく語る2人に、患者への配慮や今後の展望などを聞いた。
(取材日2020年10月27日)
障害者、小児を対象とした専門的な歯科診療を提供
開院から間もないですが、クリニックの特色をお聞かせください。

【英司院長】障害がある方や小児の診療をメインに据えて、一般歯科の診療も行っています。私も副院長も、大学卒業後は母校の小児歯科学講座に進み、研鑽を積んできました。副院長はこれまで小児歯科を専門に診療し、私はさらに障害者の歯科診療に進んで経験を重ねてきました。小さなお子さんも、障害のある方も、自分で自分の健康を管理することが難しく、多くは保護者や介護者に管理が委ねられます。そういった自分で自分の健康を守ることができない人たちを少しでも助けたいと、設備を整え、積極的に患者さんを受け入れています。
お二人はなぜ歯科医師を志したのでしょうか?
【百合子副院長】父が歯科医師で、その姿を見ていた影響か、小学校の卒業アルバムの将来の夢にも歯医者さんと書いていました。小児歯科を専攻したのは、子どもが好きなことと、大学の研修などで自分に合っていると感じたから。小児歯科を専門にする歯科医師の数はまだまだ少なく、お子さんのお口の健康を守りたいと思ったことがきっかけです。
【英司院長】父が教育熱心で、その期待に応える形で歯科医師になりました。やはり子どもが好きで、大学の講義で興味を持って小児歯科へ。障害者歯科が独立した講座として存在する大学は少なく、多くは小児歯科の中で、教育や診療の指導が行われています。その中で自分自身で健康を管理することができない方たちの力になりたいと思い、専門に選びました。
どのような患者さんが多く来院されていますか?

【英司院長】患者さんは、一般歯科を受診される成人の患者さん、障害がある方、小児歯科のお子さんの大きく3つに分かれます。成人だと近隣の方がほとんどですが、障害者や小児の患者さんは遠方から来る人も多いですね。私の以前の勤務先が、障害者福祉施設内の歯科だったので、そちらで診ていた患者さんが継続して通ってくださっています。小児だと、インターネットやホームページを調べて来る方が多いようですね。
【百合子副院長】低年齢のお子さんだと、フッ素塗布を求めて来院される患者さんが多く、1歳前から来ているお子さんもいます。1歳半健診、3歳児健診をきっかけに来るお子さんも多いです。乳歯が生えそろい、3歳を過ぎたお子さんだと、食生活の変化から虫歯になってしまう患者さんが増えてしまいますね。
ベテランの歯科医師とスタッフがこまやかに配慮する
障害のある人への診療ではどのような点に気をつけていますか?

【英司院長】障害者の患者さんは、全身疾患を持っている方が少なくありません。不随意運動や不意の体の動きもあるので、いかに安全安心な治療を行えるかを第一にしています。基本的に、患者さんが動くことを前提に注意深く治療を行っていますが、私を含め、歯科衛生士にも長年障害者の歯科診療に携わってきたベテランスタッフが在籍していますので、その点は患者さんにとっても安心かと思います。20年来のお付き合いの患者さんも多く、長く診ている患者さんだとその方の特徴を把握した上で治療していますし、初めての方に対しては、事前の問診と観察をしっかりと行って、危険がないように慎重に治療を進めています。
小児歯科ではどのような点を気をつけていますか?
【百合子副院長】3~4歳のお子さんはどうしても診療中に動いてしまって危険なので、親御さんの了承を得た上で固定をさせてもらっています。またお子さんのお口の中が傷つくのを防ぐのと、お水が入り込まないようにするために専門のカバーもさせてもらいます。子どもにとって、口を開け続けることはかなり労力を要します。このため必要に応じて口を開けた状態に固定する器具も使用しますが、お子さんにとっては固定したほうが楽なためか、中にはそのまま寝てしまう子もいるんですよ。もちろん、お子さんの状態、治療の方針、どのような器具を使うかなど、親御さんに事前にしっかりと説明と確認を行い、承諾を得ることを基本にしています。
小児歯科では0歳からの受診を推奨しているそうですね。

【百合子副院長】歯磨きを嫌がるお子さんのために、今現在苦労しているお母さんも多いかと思います。できるだけそういったお子さんを減らしたいと、歯が生え始める前から親子のスキンシップを通して歯磨きに慣らす指導を行っています。お口の周りに触れたり、ガーゼを使ってお口の中を拭いたり、マッサージをしたりして、歯磨きにつながる練習をしていきます。
【英司院長】中学生、高校生になり、親御さんの管理を離れると急激に口腔ケアがおろそかになるお子さんがいます。「歯磨きの反抗期」と言えばいいのでしょうか。小さい頃から歯磨きを習慣づけることで、この反抗期も乗り越えられるのではと思います。
受け入れてもらえない患者を積極的に診療したい
保護者や介護者への口腔管理のためのアドバイスをお願いします。

【英司院長】障害者にも小さなお子さんにも言えることですが、歯磨きの習慣をつけることが将来の歯の健康につながります。できれば0歳から始めてあげてください。そして歯磨きで嫌な思いをさせないことも大切。歯磨きは本来気持ちが良いものですから、正しい方法で歯磨き好きのお子さんにしてあげてくださいね。
【百合子副院長】3歳を過ぎると乳歯が生えそろい、友人関係も広がって、食生活も変化していきます。奥歯の虫歯、歯と歯の間の虫歯が多いですが、乳歯は虫歯の進行が早いので、気づいたら神経に達していることも。フッ素だけでは虫歯の予防は難しいので、歯科医院で定期的なケアを行い、お菓子やジュースは時間を決めて食生活を整えてあげることが大切です。
今後の展望をお聞かせください。
【英司院長】今まで受け入れてもらえなかった人たちを、すくい上げることができる歯科医院になりたいですね。専門性を求めて受診される新規の患者さんは、ご自身で調べてたどり着いた方が多いです。クリニックの認知度を上げて、他院から紹介状を書いてもらえたり、困っている人たちに頼ってもらえたりする歯科医院をつくっていきたいです。
【百合子副院長】小児歯科でも、他院で受け入れが難しいお子さんを積極的に受け入れて、お口の環境を整えてあげたいです。治療ができなくて、行きづらくなり足が遠のいている患者さんもいるかと思います。一度来ていただいて、どういう状況か、どういう治療が必要か積極的に診ていくと同時に、今後虫歯にならないように、計画的に定期健診でケアをしていきたいです。
読者へのメッセージをお願いします。

【百合子副院長】どこの歯科医院に行っていいのかわからないなど、小さなお子さんがいる親御さんは、まずは遠慮なく来ていただければと思います。長年の小児歯科での経験を生かし、お子さんの現在のお口の中の状態をお伝えし、適切なケアや予防のための計画などサポートしてまいります。
【英司院長】小さな歯科医院ですが、障害がある方、小さなお子さまがいる方のために、院内をバリアフリー化して車いすやシーティングバギーで不自由なく移動できるよう、環境を整えています。多目的トイレ、キッズスペースも備えているので、気兼ねなく来院してください。障害を理由に受け入れもらえなかった方、通院をためらわれている方はぜひ一度お訪ねください。できる限りの配慮をして診療を行っています。