島田 学 院長の独自取材記事
はなこ こどもの歯のクリニック
(小平市/花小金井駅)
最終更新日:2023/02/07

最寄り駅も住所も花小金井。地元での花小金井の愛称「はなこ」を名前にした「はなこ こどもの歯のクリニック」は、この地域に長く住む島田学(がく)院長が、大学病院などの小児歯科10年以上診療してきた経験を生かして開設した子どものための歯科クリニックだ。「昔は歯医者さんが大嫌いだった私が、お子さんが一生自分の歯で過ごせるようお手伝いをしたくてつくりました」と話す島田院長に、同院の狙いや特色を聞いた。
(取材日2020年10月12日)
みんなが笑顔になって帰るクリニックをめざして
先生が小児歯科の専門クリニックをつくられた経緯をお聞かせください。

私も歯医者さんが大嫌いな子でしたから、お子さんが歯科検診や治療に来たくない気持ちはとてもよくわかります。しかし、悪くなった歯は決して元に戻りません。虫歯は治療できるといっても、悪くなった部分を削って人工物を詰めるもので、以前と同じ歯が再生するわけではないのです。お子さんがずっと自分の歯で食べていくためには、まず悪くしないための予防が重要です。そのスタートをしっかりお手伝いしたいと考え、小児歯科専門で診療してきた経験を生かして、当院を開設しました。大切にしているのは、お子さんがどんな気持ちで来ているのかを思い、スタッフ全員で一人ひとりをしっかりと見て、話を聞いて、コミュニケーションをとりながら検診や治療を進めていくこと。子どもは小さな大人ではありません。ですから大人の診療の合間に診るのではなく、お子さんだけを診る環境を整えました。
来院はしても嫌がって治療できない子はいませんか?
まさに私がそのタイプでした(笑)。暴れたり逃げたりして、「今日はもうやめよう」と言ってもらうのを待っているんですね。ただ、そういう子は、以前に何の説明もなく歯医者さんに連れて来られて、不安だった気持ちがずっと残っているなど、それなりの理由があるものです。相手の気持ちを正面から受け止め、その子の今と未来のために治療が必要なことを伝え、わかってもらわないと、いつまでも協力してくれません。この役割をうまく果たせるのは、私とは限らず、歯科衛生士や歯科助手だったり、受付のスタッフだったり、お子さんによってさまざま。私が治療を受けるようになったのも、受付の女性が話を聞いてくれて、安心できたことがきっかけでした。私のように最初は泣いて暴れていたお子さんが、笑顔で楽しい気持ちになって帰ってくれて、次回は自分から入り口のドアを開けてくれるようになったら本当にうれしいですね。
スタッフの皆さんの力も重要なのですね。

もちろん、私たちは一つのチームで、それぞれの得意分野や個性を生かして協力し、お子さん一人ひとりの歯の健康を守ることをめざしています。当院オープン前には、お子さんとのコミュニケーション重視の意識を全員で持つため、何度も勉強会を行い、例えばお子さんの気持ちに早く気づくには観察を怠らないことが大切、といったことも共有しました。親御さんから何かご質問いただいても、みんなが同じように答えられると思いますし、私に言いにくいことでも、スタッフには話しやすいこともあると思いますから、誰にでも気軽にご相談いただければと思います。
治療だけでなく、歯磨きの指導や食育にも力を入れる
どんなご相談が多いのでしょうか。

最近多いと感じるのは、お子さんの歯並びや歯磨きのご相談です。特に歯磨きは、子ども用の歯ブラシや基本的な磨き方はメディアなどでも紹介しますが、一人ひとり違う口の状態に合わせてどう磨いてあげるかまでは教えてくれないですよね。当院は授乳室にも使う個室がカーペット敷きなので、そこにお子さんを寝かせて歯磨きをしていただきながら、その子に合った磨き方をお教えしています。それと「ちゃんと磨かなくては!」と真顔になり過ぎると、お子さんは怒られているように感じますから、笑顔で「お口の中をきれいにしようね」など話しかけながら磨いて、終わったら「頑張ったね」と褒めてあげてください。そもそも歯ブラシは口の中の異物をいれることなので、最初のうちは指でお口の周りや中を触ってあげたり、磨く時間を短くしたりして、慣れさせていくことも大切です。
初診時はどのように対応されていますか?
まず初診前の話ですが、「痛くない」「何もしない」など、お子さんを騙して連れて来ないでくださいとお願いしています。もし処置をすることになった場合には、親御さんも私もお子さんにうそをついたことになって、お子さんは誰も信じられなくなりかねません。そして初診のときは、親御さんに受診された理由や気になること、普段の食事やおやつの内容、食べる時間帯など、お子さんについて問診票に書いていただき、それをもとに詳しく話を伺います。例えば虫歯は結果であり、その原因を探っていかなくては何度も同じ治療をしなければなりません。虫歯はお子さんの歯の質、菌の数、食べ物や食べ方などの原因が複合しており、どれが主な原因かがわかれば、親御さんがご家庭でどう対策すればいいかもわかりやすくなるはずです。
今後は食育にも注力されると聞きました。

ええ、歯の磨き方と同様、離乳食のタイミングやお子さんの食べ方などでお困りでも、なかなか相談する場所がないんですね。そこで、当院ではお子さんの食育についてもアドバイスできればと考えています。例えば、院内の個室で実際にお子さんに食事をしていただき、横から食べさせていると片側の歯で噛むようになりやすいなど、食事内容や食べ方で気になる点をお伝えしたいと考えています。また、離乳食は歯の生え方や噛み方によって食べられる時期が変わるので、標準的な月齢からずれても問題ありません。食事も無理に食べさせようとすると、噛まずに飲み込むことも多くなって、口の中の発達にも影響します。お子さんによって成長が違うことをご理解いただくことが大切だと思っています。
子どもの歯や口の中にトラブルがないうちに相談を
先生のこれまでのご経歴をお聞かせください。

私は歯学部在籍中から小児歯科が希望だったので、卒業後の研修を終えたらすぐ母校の大学病院の小児歯科に入りました。歯の治療には一定の手順がありますが、お子さんの個性は本当にさまざまで、基本を現場でどう応用するかは経験からしか身につきません。その中でも、昔の自分のように泣いたり暴れたりする子とたくさん向き合いたくて、高度な技術も学べる大学病院を選んだのです。その後、東京都内の婦人科・歯科併設のクリニックで診療し、さらに神奈川県の葉山町にある小児歯科専門クリニックで経験分院長を務め経験を積みました。その後、私が慣れ親しんだ小平市に理想の小児歯科クリニックをつくりたいとの思いで当院を開設しました。
キッズスペースがとても広いなど、見た感じもユニークですね。
基本的にお子さんは連れて来られ緊張しているので、狭い場所で椅子に座って待つのは苦手なはず。ですから院内はなるべく広く、特にキッズスペースは診療の前後に自由に遊んでもらえるよう、広さと海や船をイメージした楽しい内装にこだわりました。しかもキッズスペースは診療室に隣接し、壁にはのぞき窓も設けているので、友達がいたら治療しているところをのぞき見したり、自分が治療中の時に応援してもらったりと、伸びやかな雰囲気を生んでいます。治療で泣いていた子も、ここでしばらく遊んで元気になって帰ってほしいですね。診療室はお子さん用にベッド型の診療ユニットを置き、ご家族に同席いただけるスペースも十分に確保しました。昔の母子分離型ではなく、協力型の診察を行っています。また、院内は一部の個室やレントゲン室を除いて扉はなく、中が見えないことによる不安を感じることもありません。もちろん衛生管理、感染症対策は徹底しています。
地域の皆さんにメッセージをお願いします。

歯科クリニック、特に小児歯科は、お子さんの歯や口の中にトラブルが起きないうちに来ていただき、良い状態を保つ方法を考えていく場所でもあります。おとなしく横にならない子の歯磨きが難しいとか、離乳食はいつからだろうとかの相談でも構いません。定期検診も歯が生える前、0歳の時から来ていただければ、親御さんにこれから数ヵ月、数年の間にお子さんの口の中で何が起き、どんな点に注意していただくかもお伝えできます。また、泣いて暴れて治療がうまく進まないお子さんもぜひ連れて来ていただければ、一緒にサポートしたいと考えています。どんなことでも、どこに行っていいかわからない方も、お気軽に受診してください。