優れたデザインが医療現場を変える
こだわり抜いた癒やしの空間
内田宙司整形外科
(横須賀市/逗子駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
今、医療現場にアートを取り入れようという取り組みが世界で注目を集めており、欧米ではすでに20年ほど前からこの取り組みが続いているそう。「内田宙司整形外科」の院長、内田宙司先生は、独学でグラフィックデザインを学び、アートと医療施設建築を結びつけるプロジェクトに参加した経歴から、「医療現場はデザインで変化する」という理念のもと、建築家とともにデザインとアートにこだわり抜いたクリニックを造り上げた。「次は何をしようか、常にわくわくしています」という内田先生に、2020年6月に開院した同院ならではのこだわりや魅力について、詳しく聞いた。
(取材日2020年8月9日)
目次
アートと医療のコラボレーションを追求した整形外科クリニック
- Qクリニックの建築理念について教えてください。
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A
▲アートを取り入れ、訪れる人がわくわくするクリニックをめざす
僕はこれまでもアートと医療をコラボレーションさせる試みとして、松葉杖や三角巾、スクラブや白衣などのデザインを手がけてきました。優れたデザインは人を元気にし、前向きな気持ちにする力があります。開業するにあたっては、建物そのものが作品となるようその立地から徹底してこだわりました。自然光を取り入れた開放的な空間に、大好きな作家さんの家具や絵画を展示するアートスペースだけでなく、待合室の大きな窓から見える中庭とその先に続く林もデザインの一部です。機能美を追求しつつ遊び心あふれるクリニックは、来るだけでもワクワクしていただけると思います。自然と人が集まってくるような、そんなクリニックにしたいと思います。
- Qストレスを軽減するために、どのような工夫をされていますか?
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A
▲待ち時間が苦にならないよう、さまざまな工夫をしているという
以前勤めていたのが混み合うクリニックだったので、待ち時間を短くすることと、待ち時間が苦にならないよう配慮しました。具体的にはチーム体制で仕事の効率を良くしたり、スマートフォンなどから受付番号をとれるシステムも導入しました。受付後は近隣まで電波の届く呼び出しブザーをお渡しすることで、待合室でくつろいだりアート作品をご覧いただくだけでなく、中庭を散歩したり駐車場の車内でお待ちいただくことも可能です。「診察台に横になった時に見える天井の木目に癒やされたよ」と患者さんに言われた時は、僕は間違ってなかったんだなって感動しちゃいました。患者さんそれぞれの目線で、新しい発見をしていただけたらうれしいですね。
- Qアート展示など見どころ満載ですね。
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A
▲アーティストが院内で展示会を開いたことも
これまでデザインされた装具を身につけた患者さんの表情がとても明るくなり、生き生きとしてくる様子を何度も見てきました。僕はアートやデザインが医療に良い影響を与えると確信しています。ありがたいことに、開院を記念して友人のアーティストが展示会を開催してくれました。内覧会の時、院内に足を踏み入れた方たちが「これは何?」「次は何が出てくるの?」と、わくわくしながらあちこちを見て回ってくれた時は本当にうれしかったですね。受診してくださった患者さんの心が癒やされ、「ここへ来て良かったな」と思っていただくことで自然に人が集うような場所にしていきたいと思っています。
- Q痛みの緩和のために、さまざまなアプローチ法があるとか。
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A
▲広々としたリハビリテーション室。天井の木目に癒やされる
臓器と臓器を結合させる組織である間質が新しい臓器として認知され始めたことによって、ハイドロリリースという痛みに対する新しいアプローチが生まれました。また、膝や腰に酷い痛みを抱えていても手術はしたくないという患者さんも多いので、本当につらいという方には関節内注入やブロック注射もしています。痛みを取り除くことは整形外科の基本だと思いますが、大切なのは患者さんに痛みの原因や治療法について正しく理解していただくこと。なぜこの薬をを処方するのか、なぜこの注射をするのか、なぜ今運動してはいけないのかなどをきちんとご納得いただいて、その上で治療に前向きに取り組んでいただけるように心がけています。
- Q今後の展望をお聞かせください。
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A
▲前向きな気持ちで治療に取り組めるよう、サポートしていく
この建物は、僕の自宅をデザインしてくれた建築家が手がけてくれました。長い付き合いなので、彼は僕の性格や考え方を十分理解してくれています。これから僕が歳を重ねてもずっと診療ができる、最高の建物を造ってくれたと思っています。建物は、建ってから使う人間が育てていくことで、新たな価値を生み出すと思います。僕にとっては、ここが本当の意味でのスタートラインです。スタッフや患者さん、クリエイターや地域の方たち、ここに集う人たちと一緒に、「次は何をしようか?」とわくわくしながら、この空間をデザインし続けていきたいと思っています。