内田 宙司 院長の独自取材記事
内田宙司整形外科
(横須賀市/逗子駅)
最終更新日:2025/01/24

三浦半島の真ん中に位置する湘南国際村で、青く広がる空と緑の木々に抱かれて建つ「内田宙司整形外科」。一歩中に入ると、遊び心あふれる意匠が目を引く。院長の内田宙司先生は整形外科診療の傍ら、独学でデザインを学び、数々の作品を生み出してきた異色の経歴の持ち主だ。「ありがたいことに多くの方に来院いただいています。反面、開院から4年が経過し、クリニックとして克服すべき課題も明確に見えてきました。次は何をしようかと常にわくわくしています」と語る朗らかな笑顔が魅力の内田院長に、同院のこだわりについて聞いた。
(取材日2024年11月16日)
デザインにもこだわり、心と体に働きかけるクリニック
開院から4年が経過したそうですね。

患者さんにとってもスタッフにとっても「ここへ来て良かった」「また来たい」と思える、身も心も癒やされるクリニックをめざした開院から4年。近隣はもちろん、以前診療していた三浦市などの遠方からも多くの患者さんに来院いただいています。友人・知人やご家族間でのご紹介も多いようで、高齢者に偏ることなくお子さんや若い世代も含めた全年代の方にご利用いただいています。認知が広がったことで、混雑してお待たせすることが増えてしまい心苦しく思うことも。そのため、院内やウェブ上に待ち時間情報を可視化するシステムを導入。順番が近づいたらお知らせするコール端末を活用し、周辺や駐車場の車内などでお待ちいただくことも可能です。また、ウェブ経由で順番を取れますが、診療開始直後はクリニック前でお待ちいただいた方を優先とするなど、少しでも多くの方に快適に受診していただけるよう工夫を重ねています。
まるで美術館のような空間が印象的です。
聖マリアンナ医科大学を卒業後、大学院で筋生理学を学びながら、整形外科のさまざまな症例や研究に携わってきました。並行して独学でグラフィックデザインを学んでいたので、「医療現場はデザインで変化する」と確信。デザイン・アートと医療が相乗効果を生み出すクリニックをつくるのが夢となり、「この土地でなら」と思える場所と出会えたことで、形にすることができました。クリニック内に自然の光が降り注ぎ、窓の外に広がる林もデザインの一つとして捉えた開放的な空間は、訪れる人を優しく受け入れ癒やしてくれると思います。集う人、働く人がわくわくするような空間にするため、所々にアーティストの作品を飾ったり、僕の気分で毎日院内に流れるBGMを変えたりしています。実は診察室の隠し扉には僕のおもちゃを隠してあり、興味のありそうな方がいたら、こっそり見せているんです(笑)。患者さんが目を輝かせるのを見ると僕までうれしくなりますね。
診療内容について教えてください。

骨折や捻挫などの一般外傷から膝・腰・頸の痛み、四十肩、ヘルニア、関節リウマチ、小児整形外科、小児スポーツ障害など幅広く対応しています。患者さんが抱える痛みの原因はさまざまで、整形外科疾患ではないこともあるのです。慢性的な頭痛は頸椎の異常から生じる筋緊張が原因のことが多いですが、噛み合わせなどの歯科的な問題が原因のこともあります。ぎっくり腰の原因は骨折、筋緊張、神経痛だけでなく悪性腫瘍、大動脈の解離の場合も考えられるでしょう。だからちゃんと診察しないと駄目なんです。また、体重増加が影響する腰や膝の痛みがある方には、ダイエットのご指導をすると、高血圧や高脂血症の改善にもつながります。整形外科は全身の骨や筋肉、関節などの運動器を治療する領域です。全身の状態を改善しないと、なかなか望む結果は得られないのです。
まず痛みの緩和を図り、再発しない体づくりをサポート
診療方針を教えてください。

整形外科の仕事でまず重要なのは、患者さんの痛み取ること。そのため一般的な治療だけではなく、運動療法やハイドロリリースなど多彩な治療を用意しています。また、痛みを取るためには正しい診断が不可欠。痛みの原因が外傷によるものなのか、神経障害なのか、痛みを感じる機能障害なのかによってアプローチも変わります。問診や視診だけでなく、患者さんの姿勢や生活様式、仕事、考え方、時には問診票に書かれた文字からもヒントを得て、原因を考えます。何より大切なことは、実際に患者さんに触れて所見を取ること。超音波検査やエックス線撮影も行いますが、できるだけ不要な検査はしないよう心がけています。もう一つ大切にしているのが、患者さん自身に病気を正しく理解していただくこと。例えば膝の痛みを訴える患者さんには、原因が関節のどこにあるのか、痛みを取り除くためにはどんな治療法があるのかなどをわかりやすく説明しています。
患者さんの理解も大切なのですね。
地域柄アクティブで健康意識の高い方が多い印象ですが、中には間違った認識で症状を悪化させてしまっているケースもあります。患部の現状に加え、生活背景や運動歴、ご自身の思いなどを正確に把握しなければ、適切な治療にはつながりません。当院では僕が患者さんからお話を詳しく伺い、内容をメディカルクラークがカルテに記録しています。僕ひとりで診察とカルテ記載を同時に行うには限界がありますから。詳細な記録が将来的な診療に役立つことも少なくありません。カルテの記載も重要な診療の一部です。「長く続く痛みを自己流で誤魔化してきたが治らない」「大きな病院で診てもらったが痛みが取れない」といった方が多くいらっしゃるのも、こうした診療姿勢によるものだと考えています。
痛みが再発しない体づくりをめざしたサポートにも取り組んでいるとか。

患者さんの悩みに対応できれば、医師としてはガッツポーズしたくなります。しかし一時的に痛みが軽減したように思えても、原因となる姿勢や運動などの生活習慣を改善しなければぶり返してしまうでしょう。そうならないよう、筋力を中心とする身体評価から病歴、生活歴や考え方、性格まで考慮した独自のプログラムで、痛みが再発しない体づくりをめざします。また、チームには動作解析の専門家に師事して学びを深めた理学療法士もおり、さまざまな角度からのアプローチが可能です。医師や看護師、助手、理学療法士などスタッフ全員が一つのチームとなり、最終的にはご自身で痛みをコントロールできるようになることをゴールとして、結果を出すことに努めています。
筋肉は裏切らない。痛みのない生活を諦めないで
医師を志されたきっかけは?

子どもの頃に急性糸球体腎炎になり、長期間入院したことがあるんです。その時、お世話になった先生との出会いが医師をめざすきっかけになりました。先生からの質問に母が答えようとすると「お母さんには聞いていません」とぴしゃりと言うほど厳しい反面、空き時間に僕を院長室に招き入れて、「こんなの買ったんだよ」とお気に入りのモデルガンを見せてくれるお茶目な面もあって、通うのが楽しみでした。僕は学生の頃からテニスをしており、膝の前十字靱帯断裂や頸椎と腰椎の椎間板ヘルニアなど、さまざまな痛みを経験してきました。自分も痛みを経験したからこそ、そのつらさや治療中の不安にも共感できるのだと思っています。
装具に施すオリジナルデザインも特徴だとか。
これも自分の経験から生まれたものです。けがをすると、思うように体を動かせず落ち込みますよね。何より痛いし、仕事や部活のことも大きな心配事です。でも、そんな時にギプスや松葉づえ、三角巾のデザインが良かったらちょっとテンションが上がりませんか? そんな思いで、2013年に医療とデザインとアートの融合をテーマにしたイベントを開いたのですが、反響はとても大きかったですね。待合室には色やデザインにもこだわり抜いたつえや、緊急時は三角巾にもなるバッグなどを展示しています。本来、装具は隠すのではなく目立たせるもの。ファッションとして楽しめる上に、目立つことで必要な支援が受けやすくなると思います。優れたデザインには、医療現場を変える力があります。これからも、患者さんの気持ちを明るく前向きに変えていくようなデザインやアートにこだわった活動をしていきたいですね。
最後にメッセージをお願いします。

某番組よりもずっと前から「筋肉は裏切らない」と言い続けていますが(笑)、実際に高齢になっても筋力の強化は可能です。75歳で生まれて初めて腹筋ができるようになったという患者さんもいらっしゃいます。痛みなく、思いどおりの動きができる生活を諦めることなく、ぜひ当院を受診していただきたいと思います。