乳幼児の食生活や歯磨きなど
ライフステージに合わせた口腔ケア
エビナ歯科医院
(新宿区/西早稲田駅)
最終更新日:2022/03/01


- 保険診療
乳歯が生え始めた時から高齢になるまで、私たちは毎日歯を使ってものを食べている。訪問診療などで、高齢者の歯科医療に多く携わっている「エビナ歯科医院」の蛯名勝之院長は、口の機能の衰えてしまった高齢者を数多く診ているうちに、「今のこの状態にならないためにはどうしたら良かったのだろう」と考えるようになったという。「わかってきたのは、より快適な口内環境を維持するためには、やはり小さい頃からのケアが大事だということです」と言う蛯名院長に、乳幼児の頃から高齢になるまで、それぞれのライフステージで何を気をつけたらいいのか、注意点を聞いた。
(取材日2021年12月16日)
目次
高齢になっても口腔の機能を良好に保つには小さい時からのケアが大切。年代ごとに注意すべき点をレクチャー
- Q乳幼児の食事にはどういった注意が必要ですか?
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A
▲乳幼児の食事について注意喚起する蛯名院長
まずお子さんがよく噛んで食べる習慣を身につけるよう、指導してください。最近はやわらかい食べ物が多くなって、お子さんの顎が小さくなる傾向がありますが、顎をきちんと発達させるためにはよく噛んで食べることです。それには食事をせかさないことも大事。また甘い飲み物にも注意しましょう。糖は、ある程度は子どもの脳の発達に必要でもあるので絶対駄目ではないんです。要は飲み方。糖分の強い炭酸飲料水やスポーツドリンク、意外なところでは野菜ジュースも糖分を多く含みます。それらを飲んだ後は必ず口をゆすぐようにするか、食事の際は水や麦茶を飲むことを習慣にしてください。
- Q正しい歯の磨き方とはどのようなものですか?
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A
▲模型を用いての丁寧な歯磨き指導
歯磨きといっても、歯の表面だけ磨けばいいわけではなく、要は口の中のお掃除と考えてください。歯と歯の間の汚れを落とし、歯茎のマッサージをして歯肉炎や歯周病を予防し、さらに唾液の分泌を促す、そのためのブラッシングです。回数は毎食後が理想ですが、朝は忙しく、昼は外に出ていれば難しいのもわかるので、その場合、朝は簡単に、昼はゆすぐか水を飲むだけでも違います。その代わり、夜は丁寧に1日の汚れを落としてください。冬の寒い時期など、お風呂につかりながらゆっくり磨くのもいいですね。また、お口は閉じて磨くことをお勧めします。飛沫が飛びませんし、鼻呼吸の練習になり、口の周りの口輪筋を鍛えることにもなります。
- Q歯ブラシの選び方を教えてください。
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A
▲歯ブラシの選び方も大切だという
小さい歯ブラシは小回りが利くので、丁寧に磨くのであればそちらを推奨します。ブラシを歯の根元に当てて揺する、少し移動させてまた揺する、を繰り返してください。奥歯を磨く時は頬で毛先をつぶしてしまわないよう、一度頬を押し広げてから磨くようにするといいでしょう。ただ、最近虫歯が減ってきたのは、歯磨き粉のフッ素の含有率が上がったからだという説があります。そのフッ素をお口の中に行き渡らせるためには、運ぶのは大きな器、つまり大きな歯ブラシがいいという考え方もあります。よく「自分は磨いているのに、なぜトラブルに?」と首をかしげる方がいますが、「磨いている」と「磨けている」は違うということですね。
- Qストレスも歯に影響を与えますか?
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A
▲食いしばりや歯ぎしりをしている患者にはアドバイスも
寝ている間、無意識のうちに歯を食いしばっている人や歯ぎしりをしている人は少なくありません。日本人の9割ともいわれています。寝ている時は本来リラックスしているはずなのに、知らず知らずのうちにストレスがかかって力が入り、口の周りの筋肉に力が入っています。そういう方は、歯が摩耗していたり、舌の横や頬の内側に歯型がついていたりするので、すぐわかります。ですので、そういうときは「最近忙しくないですか?」「何かストレスはないですか?」とお聞きしたり、「歯型がついていますよ。疲れたと思ったら温泉にでも行って息抜きするといいですよ」とアドバイスも兼ねてお話ししたりしています。
- Q高齢者の口腔ケアで気をつけることを教えてください。
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A
▲高齢者の口腔ケアにも力を入れている
虫歯や歯周病の治療、義歯の作製などは当然のことですが、最近新宿区では定期検診の中で摂食嚥下機能もチェックしています。具体的には、30秒間で何回唾が飲み込めるか、5秒の間に「カカカカカ」と何回言えるかなどを診ています。要は口の機能を衰えさせないよう、歯科医師も手助けするようになってきたということです。当然食事についてもアドバイスしますし、それが高齢者が寝たきりにならないための予防にもつながります。日本人の死因の上位に肺炎がありますが、その多くは誤嚥性肺炎で、飲み込む機能が衰えたことにより起こっています。それを防ぐためにも、私たち歯科医師が全身の疾患の勉強をすることも必要だと思っています。