草川 由佳 院長の独自取材記事
草川クリニック 内科・循環器内科
(横浜市金沢区/能見台駅)
最終更新日:2024/11/05
京急本線・能見台駅。横浜のベッドタウンとして知られる落ち着いた住宅地が広がる町の駅前に「草川クリニック 内科・循環器内科」はある。「9年間勤務していた神奈川県立循環器呼吸器病センターのお膝元で開業したいと考えていました」と話すのは日本循環器学会循環器専門医でもある草川由佳院長。地元金沢区の能見台駅前には多くの医院が軒を連ねていたが、循環器専門のクリニックが少なかったため「地域の皆さんのお役に立てるに違いない」と2020年に開業。近年は専門の循環器疾患で訪れる働き盛り世代の患者が増え、心臓や血管、血圧の悩みに親身に寄り添う。そんな草川院長にめざす医療について語ってもらった。
(取材日2024年9月12日)
循環器専門医として地域の役に立ちたい
能見台は先生にとってなじみ深い町のようですね。
はい、私は金沢区出身です。区内にある横浜市立大学を卒業しており、今も市大の循環器内科医局に属しております。私が開業前に長年勤務していた神奈川県立循環器呼吸器病センターもあります。この地域の方々との関わりや経験があって今の自分がいると言っても過言ではないですね。このエリアのクリニックは診療科目が細分化されているという特徴があったのですが、循環器のクリニックはしばらくなかったんです。地域に不足しているものを補いながら、引き続きこの地域で苦しむ方をもっと早い段階で救っていきたいと思い、この地で開業することに決めました。循環器以外の専門家の先生方がお近くにいらっしゃるのはたいへん心強く、患者さんにも適切な科へ受診していただけるようアドバイスさせていただいております。クリニックから専門病院レベルまで、必要な医療へおつなぎさせていただけることも当院の特徴の一つですね。
クリニックに来られる患者さんの主訴はどのようなものが多いのでしょう。
健康診断で血圧やコレステロール、心電図異常、心雑音など何かしらの異常が出た方たちが多くいらっしゃいます。血圧やコレステロール、中性脂肪に問題がある方の多くは、普段の生活習慣を改善したりこの先の病気を予防すべき方たちですが、中には救急車で病院に緊急搬送しなければならないような方も時々みえますので決して侮れません。そもそも生活習慣病というのは、ほとんどが慢性期疾患で自覚症状も乏しいため、自分が生活習慣病になっていることに気づいていない方も多いんです。心電図異常や心雑音についても、治療が必要な状態であっても自覚症状がない方も多くいらっしゃいます。
先生がめざすクリニック像についてお聞かせください。
患者さんに「また来たい」と思ってもらえるクリニックにしたいです。そのためにも、病気の治療はもちろん、スタッフ一同が誠意を持って患者さんと接することを心がけていきたいですね。クリニックの運営でお手本にしたいのが、日本で非日常を追求して成功したリゾートホテルや旅館を経営する会社のノウハウです。その宿泊施設では、仲居さんや板前さんはそれぞれ専門の業務を持ちながらも、空いている時間はほかの業務も分け隔てなくアシストするそうなんです。それに倣って、自分事だけにこだわらず全スタッフが、患者さんのためにみんなの仕事を理解して、患者さんにとっても快適な場所をおつくりすることをめざしています。
患者の普段の生活環境を詳細にヒアリング
患者さんを診療する際に心がけていることはありますか?
生活習慣病というのはいきなり患うものではなくて、日々の生活の積み重ねから発生してくるものなんです。なので、患者さんが日頃どんなことにお困りなのかをより具体的に深く理解するためにも、患者さんの日常生活やバックグラウンドを、可能な限りしっかり伺うようにしています。ただ、診察時間は限られていますから、あらかじめ看護師がヒアリングを行い、お仕事の内容や運動の頻度、食生活などを診察前に把握できている状態をめざしています。その上で、そこからできるだけ話を深掘りして、生活の状況に寄り添って治療方針を組み立てるということを意識しています。
検査で異常が出ても、なかなか受診に踏み切れない人も多そうです。
そうですね。健康への意識が高い方でないと、なかなか貴重な時間を割いてまで受診しようとはならないと思います。しかし、日々の好ましくない生活習慣の積み重ねの先に待ち構える心筋梗塞や心不全、脳梗塞、腎臓病の方を見てきた循環器専門医として、そういった病気を食い止めたいという気持ちで診療しています。勤務医時代は基本的に心筋梗塞や心不全を起こして救急搬送される方たちの治療を行う立場でしたが、搬送されるほど重症化するまで、まったく医療の介入がなかった方も少なくありません。もし、医療機関を受診し、かかりつけ医の指導を受けて食事や運動など生活を改善していたら防げたケースも多かったと思います。ですので、今は町の身近なかかりつけ医として、できるだけ早く医療介入し、地域の方の重症化を防ぎたいと思っています。
病気を未然に防ぐという考えは、開業の思いに通じるのでしょうね。
病院というのは発症後に来られる場所ですが、中には症状があっても「わざわざ病院を受診するほどのことではない」という方もいらっしゃるんです。そういう方のために、当院のような町のクリニックがあると思っています。大きな病院に行く前に、ちょっとした症状から診断し、必要な処置や治療法を提案するのが開業医です。町の身近なかかりつけ医が、一人ひとりの患者さんを適切に診て、どこでどのような医療を受けるべきか判断することができれば、患者さんご本人にも日本の医療体制にも絶対的にプラスになる、そういう医師の一人になろう、という思いがありました。そのため、これまでの自身の経験とガイドラインの遵守をもって、大規模病院レベルの質の高い外来を提供し続けることにもこだわっています。
患者の立場や思いに共感し、くみ取れる医療者に
ところで、先生はなぜ循環器を専門に選んだのですか?
医師になったばかりの頃、初めに循環器内科を研修しました。その時に、救急車で運ばれてきた時はすごく苦しそうにしている患者さんでも、注射や飲み薬で症状の改善を図ることによって、入院1週間ぐらいで普通に歩いて退院することも見込めるようになるという経験をたくさんしました。その経過のダイナミックさに惹かれたことと、懸命に治療を行う先生たちを見てかっこいいなと思ったのが大きな理由ですね。
先生は先頃3人目のお子さんを出産されたばかりだとか。
はい。10歳・6歳・0歳の母です。出産時期にご迷惑をおかけした分、患者さんにもずいぶん祝福していただき、たいへんありがたかったです。真ん中の子はやんちゃで走り回っていますがやっぱりかわいいですね。長男は病気を患っていて寝たきりですが、ちゃんと話も理解できるし、弟や妹を優しい目で見守っていて、お兄ちゃんとしての自覚も出てきているみたいで、そんな子どもたちの様子を見るのがとてもうれしく、幸せを感じています。また、親として長男の病気と介助を経験し、それまで以上に患者さんの目線を持つことができるようになりました。私生活では患者の親の立場として医療者を見ている一方、ここでは医師として仕事をしていますから、患者さんに向き合う時、以前よりもずっと深く患者さんに共感できるようになったと感じています。
最後に、地域の方へのメッセージをお願いします
産休を通じて改めて実感したのが、私はやっぱり患者さんのことが大好きなんだなということ。久しぶりにお会いするとうれしいですし、地元トークをするのも楽しいです。診療時間の関係で長くお話しできないのがもどかしく、本当はもっとお話ししたい気持ちでいっぱいですね。今後の1つの目標が、「もっと早く介入できたらこんなことにならなかったのに」という方を能見台からゼロにすること。何か少しでも気になることがありましたらまずは気軽にご相談いただきたいです。仕事で時間の取りづらい働き世代の方へは、仕事をしながらでもケアできるサポートを積極的に行っていきたいと考えています。地域において、安心して頼れる循環器クリニックをめざします。