関口 隆 院長の独自取材記事
あおぞら歯科小児歯科
(松山市／松山市駅)
最終更新日：2021/10/12
松山市中心部の交通拠点でもある伊予鉄道・松山市駅から徒歩6分。複数の高校や小学校、幼稚園が集まる町の一角で、「あおぞら歯科小児歯科」は家々と軒を並べる。院長の関口隆先生は北海道の出身。縁あって愛媛県内の歯科医院に勤務した際、同地に魅了されクリニックを構えることに決めた。2019年に開院すると古くからの住民らにも歓迎され、今では老若男女が頼りにする町のかかりつけ医だ。信頼の理由は、技術はもちろんのこと、関口院長の人柄も大きい。表情豊かに明るく語りかけ、指先までこまやかに行き届いた優しい治療を施す院長に、患者たちは安心と元気を与えられる。「丁寧に生きる」が座右の銘と語る関口院長に、小児歯科への思いや、子どもにも大人にも共通する治療方針について話を聞いた。
（取材日2020年7月16日）
子どもにとって快適で良質な歯科医療を追求
歯科医師をめざしたきっかけと、開院までの経緯を教えてください。
歯科医師をめざしたのは幼少期の体験がきっかけです。歯科医院が苦手だった私にとても優しく接してくれた先生がいて、あんなに怖かったのに魔法のように平気で通えるようになったのです。細かい作業が得意で、自分にしかできない技術で人の役に立つ仕事がしたいと漠然と考えていた頃、その経験を思い出し、こんなに素晴らしい職業があるのだと感動し、歯科医師をめざすようになりました。私は北海道の出身なのですが、愛媛県今治市の歯科医院に3年間勤務したことがあり、愛媛の温暖な気候、美しい海や山、そして人の温かさに魅了されました。両親が松山市に住んでいたこともあり、ここで開院しようと決めました。
クリニック名に「小児歯科」とも掲げていらっしゃいますね。
もとは歯科口腔外科といって、一般の歯科と、口の中や顎など口の周囲の多岐にわたる治療にも携わり、小児歯科に特化してはいませんでした。勤務していた歯科医院の近所に幼稚園があり、子どもたちを治療するうちに、子どもと大人は同じではないと思うようになりました。子どもは大人の縮小版ではなく、子どもに適した治療の仕方があるのです。もっと良い歯科医療を提供したい。今の自分に足りないものを学びたい。そう考え、小児歯科医院の門をたたき、約10年間の経験を積みました。そして「小児歯科」という名も入れて開院したのですがよほど印象的だったのか、開院当初は「大人も診ているの？」とよく聞かれましたね。もちろん大人も大歓迎です。
大人とは違った小児歯科の特徴はどんなところにありますか？
多くの面で子どもは大人とは異なります。治療台に座ってもくれない子もいますので、まずは心の扉を開き、無理強いしないで座ってもらうことから始めます。怖くないとわかってもらい、話ができる年齢なら治療の内容をしっかり説明し、不安と恐怖を取り除きます。そして口はゆっくり、手は早く。信頼関係をつくることには時間をかけますが、治療自体は短時間で終わらせます。言葉の選び方も重要です。子どもがマイナスの印象を抱きそうな言葉はプラスの言葉に置き換えて話します。例えば「麻酔」なら「魔法の薬」と言ったり、「歯を抜く」ではなく「歯をつまむ」と言ったりします。歯医者さんは虫歯をやっつけてくれる味方で、歯もきれいになってうれしい、楽しい。そんなふうに思ってもらえるようにしています。
心に寄り添い、頑張らない治療で治る喜びを共感したい
印象深い患者さんとのエピソードはありますか？
小学3年生の男の子のことです。どこから手をつけようかと頭を抱えるほど虫歯だらけなのに、治療を拒み問いかけにも答えず、診察台から降りて逃げ出す始末。やっと座っても、少しでも痛いと母親にしがみついて鬼の形相でにらみます。困り果てた時ふと、自分が幼少期に押さえつけられて治療をした怖い記憶がよみがえりました。「君の気持ち、わかるよ。僕も怖がりなんだ。だから君には、つらい思いをしてほしくない。楽に治療を受けてほしい。僕は君の味方だ。力を合わせよう」と声をかけました。そして「頑張らなくていいんだよ」と伝えると、彼は心を開いてくれました。初めての言葉が新鮮に響いたようです。その後は驚くほどスムーズに進みました。患者さんの気持ちに寄り添うことの大切さを彼から教わりました。
気持ちに寄り添うという面で心がけていることを教えてください。
患者さんにかける言葉を大切にしています。私は治療中に「頑張って」と絶対に言いません。「頑張る」とは、つらいことを乗り越える時の言葉です。つらいというイメージを持ってほしくないのです。でも治療が終われば「よく頑張ったね」とたくさん褒めます。私は話をするのも聞くのも大好きなので、こちらから積極的にプラスの声かけをします。そうすれば緊張や恐怖で閉ざされた、心の扉が徐々に開きます。大人も子どもも、痛い、怖い、つらいことは嫌ですよね。患者さんの「こころ」に寄り添い、声や指先を通して優しさを伝えたいと思っています。
優しい治療のためにどのような工夫をしていますか？
見える恐怖と見えない恐怖、どちらも与えないようにしています。例えば麻酔注射は、針を患者さんから見えない角度で近づけます。これは見える恐怖を与えないためです。逆に、見えない恐怖を拭い去るために、患者さん自身が口の中を見られるようにしています。鏡を使うほか、エックス線や口腔内カメラの画像をすべて診察台ごとに設置したモニターに映し、患者さんと一緒に見ます。また治療前に丁寧に説明をして納得の上で治療を始めるのも、何をされるかわからないという見えない恐怖を取り去る対策です。自分の状態がわかると、治療への意識が高まり、何より安心感が得られます。患者さんと一緒に画像を見て理解を共有することは、治る喜びを共感することでもあるのです。この共感を大切にしています。
院内の設備についても教えてください。
当院では歯科用CTを導入し、口の中の状態を3次元の立体的な画像で確認できるようにしています。従来のエックス線では見えなかった部分も明らかになり、より精密な診査、診断のもと治療ができます。また衛生管理も徹底しています。細かいパーツで構成された器具は細部の汚れまで除去できる装置で自動洗浄し、治療器具は一つ一つ滅菌、消毒し個別包装。お口に入る直前まで清潔な状態を保ちます。患者さんに安心して治療を受けていただくためにできることを常に考えています。
子ども時代から定期検診を習慣づけ一生健康な口元で
どんな患者さんが多いですか？
最初は近所の方が多かったですね。当院の患者さん第一号が、近くに住む80代の女性で「待ってたよ」と開院を楽しみにされていたようです。今も元気に通われていますよ。また周辺には高校が3校、小学校や幼稚園、企業ビルもあり、0歳から90歳代まで幅広い患者層です。当院の治療方針に賛同されて遠くから来てくださる方も少なくありません。最近増えているのは治療をしたお子さんの親御さんです。「子どもと同じような治療を」と希望された怖がりのお母さんには、子どもと同じようにゆっくり治療をさせていただきました。
歯を健康に保つために大切なことは何でしょうか。
現在の歯科診療の中心は「治療」から「予防」へと変化しています。皆さまが「いつまでも健やかな口元」であるために、重要なのは予防です。ぜひ子どものうちから定期的な検診を習慣にしてください。例えば歯周病は低年齢化が進み、40代での罹患率はかなり高くなっています。世界で一番患者が多いのは歯周病だといわれますが、これは10代から定着した歯周病菌が徐々に進行した結果でもあるのです。早期発見、早期治療で進行を抑えることが望めます。将来のためにも、適切なメンテナンスで健康なお口を育ててください。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
子どもの時に歯科治療に「怖い」「痛い」というイメージを抱くと、大人になっても苦手なままです。そうならないよう、怖さも痛みもない無理のない治療を心がけています。一生に関わることなので、それは小児歯科として心してかかっています。大人にも「自分ならどうしてほしいか」を念頭に、それぞれの方に合った医療を提供しています。すべての方の「こころ」に寄り添う優しい治療に努めお口の健康を守ります。青空のように晴れやかで爽快な笑顔になってほしい。それが当院の名前に込めた思いです。当院の取り組みに関してはぜひホームページもご覧ください。「治ってうれしい」という気持ちを皆さまと分かち合い、「健口」のお手伝いをさせていただきたいです。
