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山崎 孝浩 院長の独自取材記事

おいまつクリニック

(豊橋市/東田坂上駅)

最終更新日:2020/04/27

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豊橋鉄道東田本線東田坂上駅から県道502号線を徒歩6分、左手に「おいまつクリニック」が見えてくる。認知症と老年心療内科を専門に、2020年4月に開院する新しいクリニックだ。院長の山崎孝浩(たかひろ)先生は、日本精神神経学会精神科専門医であり、豊川市民病院や名古屋市内の高齢者専門病院で認知症疾患医療センター長として勤め、精神科疾患や認知症治療とともに、家族のサポートにも注力してきた。「現代医学では治癒が難しい認知症だからこそ、予防に加えて適切なタイミングでの治療開始が大切です」と山崎院長。患者と家族それぞれの気持ちを丁寧にくみ取り、問題の解決に粘り強く取り組む姿勢が頼もしいクリニックだ。
(取材日2020年3月25日)

認知症と周辺症状に特化した診療

老年心療内科という診療科は珍しいと思いますが、どのような訴えに対応されるのでしょうか。

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社会の高齢化が進み、認知症の患者さんが増えていることは皆さんよくご存じと思います。認知症では記憶力が悪くなる中核症状がよく知られていますが、それ以外にも幻覚や妄想、興奮、徘徊、暴言や抑うつなどの周辺症状を伴うことが少なくありません。BPSD(認知症に伴う心理・行動症状)とも呼ばれるこれらの症状にご家族も苦しみ、健康な家族の形が維持できなくなることがあります。そうすると望まぬタイミングで施設入所を余儀なくされたり、精神科病院で入院治療が必要になることもあります。症状が進んで選択肢が限られる前に、専門医療にもっとできることがあるのではないか、地域に根を下ろし、患者さんやご家族に近い距離で適切な助言ができればと考えて、当院を開設することにしました。

クリニックの建物も院内にも工夫をされているのですね。

そうですね。認知症の患者さんの場合、自家用車でご家族が付き添って来院されることが多いので、車でのアクセスが良い立地を選び、駐車場を用意し、院内をバリアフリーにしました。デザインは専門の設計士さんにお任せしましたが、できるだけシンプルな内装にしました。診察室と別に相談室を設け、患者さんご本人とご家族から、別々にお話を聞けるようにしました。ご家族にとって、患者さん本人が目の前にいると言いづらいこともあるものですから。各室の防音にも配慮し、患者さんが不愉快にならず、ご家族も安心して相談していただけるように工夫しています。

診察はどのように進めるのでしょうか。

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患者さんご自身に物忘れの状況をお尋ねするのは一番最後です。まずは「お体の具合はいかがですか?」と体調を確認しながら緊張をほぐし、脈を取ったりパーキンソン病のような症状がないか、脳梗塞等の症状がないかを確認します。自然な会話の中で認知機能の衰えがどの程度あるかを見極め、病状に応じた問診検査を別室で受けてもらいます。その間、ご家族からこれまでのご様子、ご家庭での困り事・心配事等を確認し、追加で必要な検査を検討したり治療の戦略を練っていくという流れですね。追加検査としては硬膜下血腫など治療可能な病気が隠れていないかを確認するため、画像検査が重要です。院内には画像検査機器はありませんがCTやMRI、脳血流検査などは、近隣の提携医療機関で実施してもらいます。

認知症治療には、患者だけでなく家族のケアも必要

初期の認知症は、診断が難しいのではないですか。

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確かに、認知症の初期の段階では検査で異常を検知できないことも多いため医師の知識や経験も必要になってくると思います。これまでの経過を丁寧に確認し、必要な検査を組み合わせて総合的に病状を判断するわけですが、専門医療機関として認知症の予備群(軽度認知障害)の時期から認知症を予防するための取り組みを提案することができるのも強みです。例えば、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれる歯科での専門的な口腔ケアが認知症の予防につながるという報告もあるため、患者さんの口腔内を確認して提携している歯科医院を紹介することもあります。認知症を予防する方法はまだ確立されていませんが、患者さんの生活や全身状態に応じて万全な備えを提供したいと考えています。

診療方針を教えてください。

認知症は、脳の機能が衰えることでこれまでどおりの生活ができなくなる病気です。例えば、患者さんは家族に何度も同じ話をし、何度も同じことを聞くから、お互いにイライラしてケンカになりがちです。ですから「これまでどおりの関わり方からご本人の状態にふさわしい関わり方に変えていきましょう」とお伝えし、それぞれのご家族に合わせたポイントをアドバイスします。同居のご家族と、ご本人と別に暮らすご家族の間に温度差があるのもまた当然で、それぞれの思いをすり合わせてみんなが認知症を受け入れご本人らしく生活していけるように支援するのも、当院の大切な役割だと思っています。

介護をするご家族の支援はどんなことをされているのですか?

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患者さんのケアに疲弊した家族がメンタルに不調をきたすようなら、精神科専門医として保険診療で対応します。ご家族の精神的な不安も含めてケアすることで、良い治療ができると考えているので、認知症から介護に伴う“ご家族のうつ状態”まで、ワンストップで引き受けようという方針です。特にご家族を悩ますのはBPSDなのではないかと思います。当院では、応用行動分析という技法を用い、患者さんのBPSDの非薬物療法を行っています。BPSDと呼ばれる問題行動は、その直前か直後に原因があることがほとんどです。気づきにくいものが多いだけで、診察を受けていただければ問題解決の糸口が見つかるはず。原因や糸口がわかることで、ご家族にも少し気持ちが楽になっていただけると考えています。

団塊世代の高齢化に備え、認知症ケアの質を上げたい

医師の仕事を志したきっかけや、精神科を選んだいきさつを教えてください。

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仕事を通じて、いろいろな事情で困っている人を助けるためのお手伝いをしたいという動機でした。ぐちゃぐちゃになっている問題を一つ一つ整理して、道しるべになりたかったのです。高校時代に進学先を決める頃には、そんな思いが強くなりました。当時から「問題を整理して解決する」のが好きで得意でしたし、精神科を選んだのも同じ理由です。多くの医療分野では、診断が決まればガイドラインで標準治療が決まりますが、精神科はあいまいな部分が多いため、検査ですっきりと診断がつくことが少ないんです。認知症も他の精神疾患も、オーダーメイドで相談に乗りながら困りごとを解決しようとする点は一緒でしょうね。

これからの展望や目標があればお聞かせください。

当院は2020年4月開業の新しいクリニックですが、私自身はこれまでも専門医として診療だけでなく、行政や地域包括支援センターとの連携や講演、勉強会などでの情報発信も続けてきました。認知症はまだ治せない病気ですから、マネジメントが大切になります。患者さんとご家族を適切な医療や福祉サービスにつなぐために、時間がかかっても努力をしていきたいです。また、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。それまでにクリニックをフル稼働できるよう体制を整え、地域で高齢者を支える専門職向けにも研修やワークショップを提供するなど、地域の認知症ケアの質を少しでも向上させられるよう協力していきたいと思っています。

読者へメッセージをお願いします。

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「認知症は治らないから病院にかかっても無駄だ」と受診をためらっている方も少なくないと思います。早期に治療を始めれば、お薬で症状の進行を遅らせていくこともめざせますし、早い時期からご本人の状態にふさわしい関わり方に変えていくことでBPSDと呼ばれる問題行動を起こさず、穏やかな生活を送っていただくことができます。ご家族のことで少しでも心配があるならぜひ相談にいらしてほしいですね。早すぎる、ということはありません。診察や検査の結果、認知症でなかったとしても、予防のための生活習慣の提案や個人のリスクに応じた今後の見通しを提案することで、不安の解消につなげていければと願っています。

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