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英 裕雄 理事長の独自取材記事

医療法人三育会 新宿ヒロクリニック

(新宿区/新大久保駅)

最終更新日:2019/08/28

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異国情緒漂う新大久保の活気に満ちた町並みの先、しっくりと馴染んで「新宿ヒロクリニック」が建つ。玄関扉の先に広がるのは、イメージカラーのオレンジが印象的な、温かみのある居心地のいい空間。「患者さんの生活がさまざまに変化しても一貫して対応できる、かかりつけ医療機関の新しい在り方を作りたかったんです」と、英裕雄院長は穏やかな笑みを浮べる。2001年から24時間365日体制で取り組んできた在宅診療を継続しつつ、外来診療にも力を入れようと2015年6月に現在の場所に移転。身近なかかりつけ医であるとともに、高齢者やがん患者の介護や生活支援まで幅広く行うべく、多職種のスタッフが一丸となってサポートにあたっている。「患者さんやご家族のニーズを敏感にキャッチし、柔軟に対応していきたい」と力強く語る英院長に、日々の診療で心がけていることやめざす診療の姿、さらに、ご自身の自由な時間の過ごし方などプライベートな話から今後の展望まで、じっくりと伺った。
(取材日2015年8月7日)

かかりつけ医療機関の新しい在り方をめざして

とても温かみのある雰囲気のクリニックですね。

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ありがとうございます。クリニックのイメージカラーでもあるオレンジが印象的な、とてもすっきりした雰囲気になったと思っています。当院はもともと2001年に都庁前で開業し、24時間365日体制の在宅診療を中心に行ってきましたが、今年6月にこちらに移転。現在は、これまでの在宅診療に加え、内科、整形外科、皮膚科など外来にも力を入れています。ずっと診て来た在宅の患者さんをそのまま引き継いでいるほか、外来には10代から100歳を超える方まで、本当に幅広い年齢層の方が来院。ちょっとした風邪の症状など、身近なかかりつけとして足を運んでくださっているというかんじです。場所柄、最初は外国人の患者さんばかりで大変なことも多いのではないかと思っていたのですが、みなさん日本語がお上手で、非常に日本に馴染んでいらっしゃる。今後、海外から来日される方はますます増えるでしょうし、近未来の新しい日本の姿を想像しながら、日々の診療にあたっています。

移転されるきっかけは、どういったことだったのでしょう?

かかりつけ医療機関の新しい在り方を作ってみたかったんです。例えば、健康なときは定期的に病院にかかる必要はないでしょうから健診などで対応し、ちょっと体調を崩せば外来で、虚弱化が進めばリハビリテーションが主流となり、もっと進めば在宅診療が必要になる、といったように。これまで行ってきた在宅診療は、あくまでもその流れの中のひとつ。そうした、患者さんの社会生活がさまざまに変化しても一貫して対応できる総合診療を実践していきたいと思い、移転を決めました。この、めざす総合診療を一人だけではなく多職種のグループで対応し、継続的かつ実効性のあるものにしていくことが大きな目標であり、これからの課題でもありますね。

具体的に力を入れていらっしゃるのはどのようなことですか?

まず一つは本当の意味でのかかりつけとして、年齢や疾患を問わず初期対応をすること。さらに、認知症や骨粗しょう症など、高齢者特有の疾患に対応すること。あと一つはがん。この、総合診療、高齢者診療、がん診療の3つを柱としています。特に、がんが日本人の死因第一位を占める現状を考えれば、今後、がんの患者さんはますます増えてくるはず。手術や放射線などの治療が大切なのはもちろんですが、例えば、自宅で療養中の食事や運動はどうするのか、もっと言えば、その間にひいた風邪はどうするのか。がんの種類によって栄養指導も千差万別ですし、患者さんそれぞれ個別の対応が必要になってきます。そうした対応をきちんとしていくことこそが病気と闘うことにもなりますから、継続的なかかりつけ医療機関の果たす役割は非常に大きいと思っています。実は当院では、「寄り添いコール」といって、普段外来にいらしている患者さんに対し、必要に応じて24時間365日体制で往診に伺うサービスもしているんですよ。「いつでも診に来てくれるクリニックをかかりつけにしている」ということが、患者さんやご家族の安心感につながっていけばうれしいですね。

スタッフさんも大勢いらっしゃるそうですね。

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はい。在宅、看護、医療のあらゆる職種のスタッフが約85人ほど在籍しています。全員が一丸となって取り組んでいかなければ、めざす医療の実現は難しいですから、当院には「クレド」という、守るべき信条のようなものもありますし、さまざまな勉強会も頻繁に行っているほか、ミーティングやカンファレンスも定期的に実施。スタッフ間のコミュニケーションも大切と考え、親睦を深めるためのレクリエーションなども行っています。こうしたプライベートな人とのつながり、業務に対する理解、法人に対する理念教育は、日々の中できちんと継続していくことが大事。そういう意味で、終わりはないと思っています。

在宅医療に長く関わる中、実感した「看取りは命のバトンの受け渡し」

先生はずっと医師を志されていたのですか?

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いえいえ。一度大学を卒業してから医学部に入り直したんですよ。最初に入学したのは商学部だったんですが、卒業後の方向性がまるで見えず、就職する気にもなれなくて。そんなとき、母ががんを患い、「このままじゃいけない、しっかりしなければ!」と一念発起。働くなら手に職をつけようと選んだのが医師でした。おそらく、母の病気を機に医療に触れたことがきっかけになったんだと思います。初めて在宅医療に携わったのは1996年。ちょうど介護保険法案が可決、施行された時代です。高齢化が進み、在宅医療のニーズは高いと実感。実際、地域の高齢者医療の形態がどんどん変わっていく中で、「すでに外来診療や健診に力を入れているクリニックはあるのだから、自分は在宅医療の分野を担っていきたい」と思い、このクリニックを立ち上げました。今でこそ在宅医療も一般的になりましたが、当時はまだ新しい分野で、何もかもがゼロからのスタートと言ってもいいくらい。自分一人で始めたということもあり、医療目標やシステムの構築にとにかく一生懸命でしたね。現在は、新宿の他に銀座、麻布にもクリニックがあり、いずれも24時間365日の診療体制を整え、各担当エリアをカバー。当時も今も、求められる医療に携わっているということに、大きなやりがいを感じています。

在宅医療に関わっていらっしゃると、お看取りも多いと思いますが。

そうですね。20年近く在宅医療に関わってきましたが、これまでご自宅で看取ることの意義についてあまり整理したことがありませんでした。それが最近、お看取りをされたご家族の方々と話す中で、「看取ったのが親でも配偶者でも、その方の療養の姿からとても多くのことを学んでいらっしゃる」ということに気付いたんです。介護はご家族にとって非常に負担の大きい、人生をも曲げてしまうものと捉えられていますが、実は死の在り方だけでなく、突き詰めていくと、人生や命の在り方を学ぶ機会になっている。命のバトンの受け渡しとでも言うのでしょうか。決して、在宅でのお看取りがすべてとは思いませんが、渡された命のバトンを受け取ることで、ご自身のその後の人生をどう生きて行ったらいいのか考える、大事なきっかけになっているのではないかと思いますね。

お忙しい先生。ご自身の自由な時間はどのように過ごされているのでしょう?

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比較的ゆっくりできるのは夜になってからのことが多いので、やはりお酒を飲むことでしょうか(笑)。あと、ダンスが好きなので踊りに行くこともありますよ。ソシアルダンスではなく、いわゆる昔のディスコ系のダンスなんですけどね。体を動かすのはとても気持ちいい。気分転換できたほうが、色々な意味で自分自身にとってバランスがいいと思いますし、貴重なリラックスタイムになっています。

これからの高齢化社会では「自助」と「互助」が大切

クリニックの体制づくりで重視したのはどんなことですか?

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重症度や困難度の高い患者さんを受け入れたいと思っていたので、それに合わせたスタッフ教育やシステム作りをしてきました。新しく入るスタッフや非常勤の医師が負担なく有効に診療と看護ができるようにするための、勉強会やカンファレンスも行っています。在宅医療はチームで行いますから何しろ情報共有が大事。情報の共有がスムーズに行えるように電子カルテのシステムも作りました。始めてから11年間、ようやく基盤が整い、順調に稼働している今だからこそ、これからがもっと重要になってきますね。

まだまだ在宅医療を必要とする高齢者が増えると思いますが。

そうですね。東京都では足立区や江戸川区、練馬区など、都心からちょっと離れたエリアに高齢による疾患を抱える人が増えると言われています。いわゆるドーナツ型に増加する傾向です。今後、こういったエリアの方々に在宅医療を提供できるかどうかを判断するためにも、まずは現在活動しているエリアをしっかりとケアし、今のシステムで他エリアにも対応できるかきちんと見極めたいですね。在宅医療を必要とする人のドーナツ化現象は、2025年にピークを迎え、そしてそのあとに急速に減少すると言われています。こういった流れの中で私たちができることは何かを真剣に考えていきたいと思っています。

最後に、これから在宅医療をどうとらえるべきか、メッセージをお願いします。

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先ほどもお話しましたが、東京都に限らず、首都圏はドーナツ型に高齢者が増えます。そして誰もが避けたいと思っていても、多くの人が介護を必要とすることになりますね。世の中には4つの助けがあるのをご存じですか。一つは自分で自分を助ける「自助」。そして友だち同士などお互いに助け合う「互助」。医療保険や介護保険制度などを意味する「共助」。生活保護のように国や自治体が助ける「公助」です。これからは「自助」と「互助」を高めていくべきですね。在宅医療が必要になったとき、自分はどういう風に過ごしたいかを明確にし、周囲に伝えておくことによって、自分の助けにもなりますし、周りの人もサポートしやすくなります。「考えておいて、明確にして、伝える」。この作業が今後の高齢化社会に必要だと思いますよ。

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