落合 尚美 院長の独自取材記事
iこころクリニック 日本橋
(中央区/小伝馬町駅)
最終更新日:2026/02/06
小伝馬町駅から徒歩4分のビルにある「iこころクリニック日本橋」は、2026年2月より「メンタルクリニック虎ノ門駅前」と統合することになった。医師やカウンセラー、ソーシャルワーカー等の多職種連携により、診療体制も一層充実。院長の落合尚美先生は、聖路加国際病院で17年、iこころクリニック日本橋で3年勤務し、身体疾患で入院している患者のメンタルケアの分野でも研鑽を積んできた経験豊富な医師だ。「まず話を聞くこと。否定しないで、患者さまがどう思っているかを聞かせていただきます」と語る。そんな落合院長に、患者との向き合い方や、働き盛り世代へのサポートについてなど話を聞いた。
(取材日2026年1月22日)
総合病院での経験を生かし、多職種連携で患者を支える
こちらの院長になられた経緯をお聞かせください。

2026年2月より、当院と「メンタルクリニック虎ノ門駅前」が統合が決まり、虎ノ門院の院長だった私がこちらの院長を務めさせていただくことになりました。私は大学卒業後、東京大学医学部附属病院にて研鑽を積み、同院精神神経科に入局。その後埼玉県済生会鴻巣病院や聖路加国際病院で勤務し、身体疾患を持つ患者さまのメンタルケアを担うリエゾン精神医学にも携わってきました。今回の統合にあたり、虎ノ門院に通っていた患者さまにも以前と変わらない診療を受けていただくことができます。実際に聖路加国際病院や虎ノ門院で診ていた患者さまが引き続き当院に通ってくださっていますし、中には20年以上のお付き合いになる方も。疾患の性質上、長いお付き合いになる方も多いですが、患者さまの安心につながるよう信頼関係を大切にしています。
どのような方が来院されていますか?
さまざまなご相談がありますが、中核となるのは20代から50代の働き盛りの方々です。仕事のストレスや休職についてのご相談が特に多く、人間関係の悩みを抱える方も少なくありません。また、主婦の方、子育て中の方、大学生から高齢の方まで、虎ノ門にいた頃より幅広い患者層になった印象があります。私が女性医師ということもあり、産後うつや更年期の症状で女性の先生を希望される方も多いですね。リエゾン精神医療の経験を生かし、がんや血液疾患など身体の病気をきっかけにうつになられた方のご紹介もお受けしています。原因のわからない体の不調を感じている方にも気軽に相談していただける、ハードルの低いクリニックでありたいと思っています。
診療体制の特徴を教えてください。

スタッフ体制が充実していることは、当院の強みの一つですね。カウンセラーの先生方は認知行動療法を取り入れながら、行動パターンを見直していくトレーニングを提供してくれたり、日々の心のケアをきめ細かく行ってくれたりと、とても助けられています。最近増えている大人の発達障害についても、心理テストを実施できる体制が整っています。また、経済面や社会制度などさまざまな角度の相談にも対応できるソーシャルワーカーや、採血などを担当する看護師も在籍しており、医師も多く常に複数人体制で診療にあたっています。多職種による、より手厚いサポートができるようになったと感じています。
頑張り屋の患者が、安心して休めるように
患者さんとの向き合い方で心がけていることはありますか?

診療で一番大切にしているのは、まず聞くということ。決めつけず、否定せず、患者さまがどう思っているかをまず聞かせていただきます。限られた時間の中で、少しでもお気持ちを話していただけるよう心がけています。こうした姿勢は、病院で内科や外科と連携しながら多くの患者さまと向き合ってきた経験と、勉強会や研究会で精神療法を中心に学びを重ねてきた中で、身についたものかもしれません。良き師にも恵まれました。また、うつは再発することもある病気ですから、一度良くなったとしても数年後にまた通院が必要になる場合もあります。本当は治って来なくなることが一番ではありますが、何かあった時に相談できる相手でありたいですね。患者さまの長い人生の中で少しでもお役に立てればと思っています。
働く世代の方に対しては、いかがでしょうか。
来院される方は皆さん頑張り屋さんで、ご自身がおっしゃるより実際にはかなり疲れていることが多いです。だからまず「よく頑張りましたね」とお伝えするところから始めています。うつの治療において休養は何より大切ですが、休むことに強い罪悪感を持っている方もいらっしゃいます。「あなたが悪いわけじゃないのですよ」と、心と体を休める選択肢があることをお伝えします。とはいえ、すぐに休職となると抵抗を感じる方も少なくありません。そういう場合は業務軽減のための診断書を書いたり、ご家族や上司との話し合い方についてアドバイスしたりと、段階的にサポートします。何度も相談を重ね、その方に合った休み方を一緒に考えていきます。
復職後のサポートについても教えてください。

最近は休職だけでなく、復職後の問題も注視されています。職場に戻っても以前のようにパフォーマンスが上がらないというケースは珍しくありません。お薬についてもご相談しながら、無理のないかたちで仕事に戻る方法を一緒に考えます。また、産業医との連携も大切です。産業医は会社側の立場もありますが、私たち主治医は患者さま側の立場です。その役割分担をはっきりさせながら連携することを意識しています。当院だけでは難しい場合は、復職に向けたトレーニングを行うリワーク施設をご紹介することもありますし、治療が長引く際には自立支援制度など経済面のサポートについてもご案内しています。
我慢せず気軽に相談を。通いやすさで早期受診を後押し
通院が難しい患者さんへの対応について教えてください。

土日や夜間の診療、当日予約にも対応可能です。当日の予約については、悩みを抱えている方が相談しやすいよう受診の敷居を下げたいという意図もあります。一方で、精神科の患者さまの病態や治療歴には大きな幅があり、特に長く治療を受けてこられた方は、主治医との関係やこれまでの経過の把握が非常に重要となります。そのため、当日ご来院いただいた場合でもまずは丁寧にお話を伺ったうえで、紹介状の内容などを十分に確認し、当院での治療が適切か、あるいは現在の医療機関での治療継続が望ましいかを検討し、結果として元の医療機関へお戻りいただくこともあります。いずれにしても、患者さまにとって最善の治療を考え対応させていただきます。
オンライン診療も対応されていますね。
休職中の方にとって、通院そのものが大きな負担になることがあります。都心で働いていてもお住まいは郊外という方も多いので、電車に乗ることがつらい方にはオンライン診療をお勧めします。私自身、オンライン診療に賛否あると思っていましたが、実際に受けた方の反応も踏まえると、患者さまにとっても有用な選択肢と言えると思います。鹿児島県の離島や北海道など近くにクリニックがない地域から、産後うつのご相談をいただくことも。高齢の方がご家族にサポートしてもらいながらオンライン受診されるケースも増えていますね。もちろん対面のほうが良い方もいらっしゃいますから、患者さまの状態や生活状況に合わせて選んでいただければと思います。
今後力を入れていきたいことはありますか?

働き世代の方のうつを、より手厚く診ていきたいです。例えば、同じ境遇の方が集まって話し合うグループセラピーにも取り組んでいきたいですね。また、カウンセラーによるカウンセリングとは別に、医師が行う精神療法を、限られた診療時間の中でもしっかり行っていくのが私の目標です。今は日常の診療で手一杯なところもありますが、時間を見つけては勉強会に参加するなど研鑽を続けています。今まで積み重ねてきた経験を生かして、さらに多角的なメンタルケアにじっくりと取り組んでいきたい。そんな思いで日々の診療に向き合っています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
当院は受診のハードルの低いクリニックですので、気になることがあれば気軽にご相談ください。一番お伝えしたいのは、あまり我慢しないでほしいということです。お仕事がきつすぎて、ご自分を犠牲にしてしまっている方をたくさん見てきました。眠れない、疲れが取れない、パフォーマンスが落ちた、そんな兆候があれば、悪化する前に一度ご相談ください。誰かに話を聞いてもらいたいと思った時が相談のタイミングだと思います。つらいときは対話すること自体がとても大事。皆さんの心と体の健康を一緒に守っていければ幸いです。

