熊田 知浩 院長の独自取材記事
くまだキッズ・ファミリークリニック
(守山市/守山駅)
最終更新日:2025/07/11

守山市にある「くまだキッズ・ファミリークリニック」。先生の姿をしたクマが描かれた看板と、森の仲間たちの壁画が出迎える院内は、まるで絵本の世界のよう。熊田知浩院長は幼少期に5回も入院を経験し、その時に出会った小児科医への憧れから医師を志した。「障害のあるなしに関わらず、すべての子どもとご家族が幸せに暮らせるように」そう語る熊田院長は、日本小児神経学会小児神経専門医として、さらに自身のアトピー性皮膚炎の経験をもとに診療にあたる。訪問診療で見る子どもたちの普段の表情や、開業から6年で小学生になった患者の成長を「この上ない喜び」とほほ笑む姿が印象的だ。医師3人体制という充実させた医療環境や、スタッフと協力して漢方薬の飲ませ方を研究するなど、細かな配慮についても話を聞いた。
(取材日2025年6月25日)
医師への憧れから始まった小児科医への道
開業に至る経緯と、この場所を選ばれた理由を教えてください。

私は滋賀県立小児保健医療センター(現・滋賀県立総合病院こども棟) で長く勤務していました。そこでは重症心身障害のお子さんや医療的ケアが必要なお子さんたちを診ていましたが、病院への通院が本当に大変で、もっと生活に密着したところで医療を提供できたらという思いが強くなったんです。それで訪問診療と通常の外来の両方ができるクリニックを開きたいと考えました。小児保健医療センターからも近く、私自身も長く住んで気に入った守山市で開業することに。院内は障害があるお子さんもないお子さんも分け隔てなく診療できるよう、バリアフリー設計にこだわり、診察室も広めに取って発達の様子を観察できるようにしています。
医師を志したきっかけと小児神経を専門にした理由をお聞かせください。
実は私、小学校に入るまでに5回ほど入院していて、当時は「気管支が弱い子」と言われ、よく風邪をひいていました。しかしある日、かかりつけの先生に「これはマイコプラズマだから入院したほうがいい」と言われて紹介先の病院へ入院することに。その病院でエックス線を撮った際に「診察だけで病気まで正確に診断できるなんて、すごい先生だね」とかかりつけの先生を褒められたんです。それが自分のことのようにうれしくて、そういう先生になりたいと思ったのが最初でした。小児科医になってから病院で脳性麻痺のお子さんのリハビリテーションやてんかんの治療、脳波検査などにふれる機会があり、小児神経領域に興味を持ちました。滋賀県立小児保健医療センターでは、NICUから退院されたばかりの医療的ケアのあるお子さんたちを初めから長く診させていただき、貴重な経験を積むことができました。
クリニックの診療体制について詳しく教えてください。

私は日本小児科学会小児科専門医かつ日本小児神経学会小児神経専門医の資格を持っており、通常の外来に加えて専門の外来として、脳性麻痺、てんかんや慢性頭痛などの患者さんに対する診療も行っています。また、重症心身障害のお子さんや医療的ケアのあるお子さんの訪問診療にも対応しており、月1~2回定期的にご自宅に伺います。病院だと緊張して笑ってくれないお子さんも、お家だとリラックスして処置が受けられるということもあるので、安心してもらえるとうれしいですね。私と同じ資格を持つ女性医師が他にも2人おりますので、外来、予防接種、訪問診療を協力して行っています。また「ファミリークリニック」としてお子さんが小児科の年齢を超えて成人になっても継続して診療させていただいています。もちろんお父さんお母さんも具合が悪い時はお子さんと一緒に診療させていただいてます。
専門性を生かした幅広い診療と生活に寄り添う医療
アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療にも力を入れているそうですね。

はい、実は私自身が子どもの頃からアトピー性皮膚炎がひどくて、今も治療を続けています。皮膚のかゆみがひどいお子さんのつらさは自分の経験からよくわかるので、なるべくかゆみを抑えられるような治療をしたいと思っています。最近は炎症を抑えるための注射薬など新しい治療法も出てきているので、積極的に取り入れています。「風邪で来たけど皮膚も診てほしい」という相談があれば対応できますので、皮膚科に行く時間がないご家族のためにも、こちらで責任を持って診させていただいています。
新しい検査や治療法への取り組みについてお聞かせください。
医療は日々進歩していますから、新しくても良いと思うものは積極的に取り入れています。例えば今年4月から始めた「赤ちゃんの頭の形の外来」では、赤ちゃんの向き癖で後頭部が扁平になったりゆがんだりしているケースに、3Dカメラで撮影してヘルメット治療を提案しています。感染症の検査では、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザやRSウイルス、マイコプラズマ、百日咳など複数を同時に調べられるPCR機器も導入しました。発熱や咳が長引く患者さんには可能な限り病原体の診断を行い、血液検査なども組み合わせてウイルス性感染症の場合はむやみに抗菌薬を出さず、発熱期間や症状の変化など先の見通しが立てられるよう情報提供することを大切にしています。超音波(エコー)検査も積極的に活用しています。
漢方治療での工夫について教えてください。

漢方は苦くて飲みにくいイメージがありますよね。お子さんだと特に苦手な子も多いと思います。しかし通常の薬より漢方薬のほうがより有用な場面もあります。そこでスタッフみんなで過去の文献を参考に「この漢方は何に混ぜたら一番飲みやすいか」を実際に自らで実験しました。例えばリンゴジャムが良かったり、意外にも納豆やソースが合う薬もあったり。そういった飲みやすい方法もアドバイスしながら、通常の薬でうまくいかない場合の選択肢として積極的にお勧めしています。スタッフ全員で協力して患者さんに一番良い治療を考える、そんなチーム医療を実践しています。
患者と家族を支える医療と地域への貢献
先生はクリニックとは別にNPO法人での活動もされていますね。

はい。病院やクリニックで診ているだけでは、医療的ケアのあるお子さんとご家族の日常を支えきれないと感じていました。そこで同志と一緒に始めたのがこのNPO法人です。ご家族だけでは気管切開したり呼吸器をつけたりしているお子さんと一緒にお出かけしたり遊びに行くのは本当に大変なので、私たちがお手伝いをして日常とは違う遊びの場を提供しています。また、クリニックの一部を医療型特定短期入所施設「くまちゃんち」として、1日定員5人までお預かりしています。お子さんたちには楽しく過ごしてもらい、希望される方にはお風呂も入ってもらって、ご家族には仕事をしたり休憩したりする時間を持っていただく。障害のあるなしに関わらず、すべての子どもたちとご家族が幸せに暮らせるように、というのが私たちのモットーです。
先生のやりがいとモチベーションについてお聞かせください。
訪問診療の患者さんたちが基礎疾患は治らなくても、日々学校に楽しく通ったり、命を輝かせて生活している場面を目撃できることが本当に大きなモチベーションになっています。外来診療では、開業した当時に生まれたばかりだったお子さんがもう小学校に入る年齢になりました。風邪をひいたり予防接種で来られるたりする中で、お子さん一人ひとりの成長を間近で見守ることができるのはとてもうれしいですね。お子さんが元気になって笑顔であいさつしてくれる、そういった瞬間が私たちに活力を与えてくれます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院はお子さんの風邪から皮膚の病気、便秘、夜尿症など子ども特有の症状に幅広く対応しています。付き添いで来られるご家族も一緒に受診が可能ですし、どこの科に受診して良いかわからない時も、取りあえずかかりつけ医として気軽に何でも相談できる場として活用していただけたらと思います。もちろん当院で診断や治療が難しい場合は、責任を持って専門の病院に紹介させていただきます。新規の患者さんでもウェブで予約することができます。当院に来て相談して良かったと思っていただけるよう、真摯に診療に取り組んでいきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはヘルメット治療/30万円~