荒木 耕生 院長、荒木 真由美 副院長の独自取材記事
あらきこどもクリニック
(札幌市手稲区/稲積公園駅)
最終更新日:2021/10/12
手稲稲積公園近くにある「あらきこどもクリニック」。建物正面に描かれた3本の親子の木のキャラクターが目を引く、かわいらしい印象の小児科クリニックだ。荒木耕生院長は慶應義塾大学病院はじめ複数の大規模病院で、一般小児科と専門の小児循環器の研鑽を積んできた。旅行で訪れていた北海道に憧れ、念願かなって2019年に同院を開業した。妻の荒木真由美副院長とともに子育てに励みながら、患者親子の心に寄り添う医療を提供する荒木院長。小児科や循環器を専門にした理由や患者親子へ向き合う姿勢から、2人の温かい人柄が垣間見えた取材となった。
(取材日2021年2月27日)
旅行で訪れた北海道に憧れてこの地に開業
開業にあたってここを選んだのは?
【院長】私はもともと東京の人間なのですが、北海道が好きでよく旅行に来ていて、ずっと住みたいと思っていました。この地域は以前小児科をしていた先生がお辞めになってから小児科が少なく、苦労されているとお話を伺い、地域の方のお役に立てればと考え選びました。開業して2年になりますが、ここはすごく広々として過ごしやすいし気候も良いし、とても気に入っています。
こちらの患者層と主訴は?
【院長】来られるのはやはり近隣の方が多いです。ただ、私が循環器専門なので、心臓関連の小児科クリニックは非常に少ないこともあり、そういう親御さんはインターネットで検索して遠くからでも来てくださっています。健診で心電図で引っかかったとか、幼稚園の健診で心臓に雑音が聞こえたから受診してと言われたとか、最近胸が痛いとか、そういう患者さんが多いです。他には副院長の妻がアレルギー専門ですので、食物アレルギーや花粉症、犬・猫のアレルギーの患者さんが比較的多くいらっしゃいます。あとは湿疹やアトピー性皮膚炎など。また小児科は季節ごとに流行する病気が違うのですが、今は冬なので胃腸炎が多いですね。
小児循環器はあまり聞かない分野なのですが、どのようなお子さんが来られるのでしょうか?
【院長】生まれつきの心臓の病気や、生まれてから発症する心臓の病気というと代表的なものは川崎病。そういった疾患が診療のメインになります。生まれつきの心臓疾患は大規模病院で診ることが多いと思います。こういうクリニックで扱う病気となると、川崎病で退院した後や簡単な不整脈、「胸が痛い」と言って来られる方。心電図検査で引っかかった方や息が切れるとか息苦しいとか、そういうお子さんたちを中心に拝見しています。生まれつきの心臓の病気の場合は手術が必要なものもあるので、その病気自体は当院では扱いきれないのですが、大きな病院と連携してそういう病気をお持ちのお子さんのワクチン接種や、風邪をひいた際の対応とか、そういった役割もありますね。
患者親子の心に寄り添う優しい医療の提供をめざす
小児科、中でも循環器を専門にした理由は?
【院長】最初はある漫画に憧れて外科医になるつもりでしたが、研修でいろいろな診療科を回るうちに、子どもがかわいいなと思ったのが一番ですね。そんな中循環器を選んだのは、風邪などは自然に治るのを待つしかないことも多いですよね。でも、心臓の病気はそうではない場合も多い。本当に私たちの力が必要とされている分野と感じたこと。それと、特に手術を行うかどうか、また行う際は心臓外科の先生や麻酔科の先生など他科の先生と連携をしながら行うのですが、そういう皆で力を合わせて頑張るという雰囲気が好きといったことも理由です。また、お子さんは通常親御さんより早く亡くなるものではないですが、心臓のご病気のあるお子さんは、そういうことが普通に起こり得るんです。そういうときの親御さんの悲しむ様子を見ているので、そうならないようにどうにかして救いたいというのがあります。
大学病院で研鑽を積まれてこられた中で、印象深いエピソードはありますか?
【院長】私が医師になりたての頃に、心臓のご病気を持ってお生まれになったお子さんが頑張って病気に立ち向かって退院し、その後外来にずっと通院して、どんどん大きく成長していく姿を見られたのが一番印象深かったですね。大きくなった時に、親御さんと「あの時はこんなに大変だったのにね」というお話を一緒にできるのは、すごく幸せなことでしたね。
今、日々の診療で心がけていることは何ですか?
【院長】親御さんってお子さんのことは自身のこと以上に心配されるものです。でも私たちから見ると単なる風邪だから様子見で大丈夫ですよということも結構あるんです。そういった親御さんの思いとこちらの認識をなるべく近づけておく、すり合わせておく、ということは意識していますね。ただ「大丈夫」と言うだけでなく、こうだから大丈夫ですよとか、こうだから今は大丈夫だけどもしこうなったらもう一度来てくださいねとか、これくらい続くようならもう一度来てくださいとか。親御さんにご安心いただくため、また様子を見ていないで受診したほうが良い場合を認識してもらうためにも、次に受診する基準みたいなものをお伝えしています。
2つの待合室と陰圧室を用意するなど感染症対策を徹底
小児科全般を診ておられますが、その中でも特徴的な診療はありますか?
【副院長】私はアレルギー専門なので、アレルギーの検査や治療については比較的力を入れています。検査では、例えば卵の成分を肌につけてアレルギー反応が出るか調べるプリックテストや、アレルギーが疑われる食材を実際に食べてみて、どのくらい食べられるのか、本当にそれでアレルギーが出るのかを調べる、食べ物の経口負荷試験にも対応しています。検査結果を踏まえ、ではこうやって治療していきましょうとか、食べ物を除去するのかしないのかを決めていきましょうとか、そういう流れですね。
【院長】私の専門である循環器のほうは、健診に引っかかったとか胸が痛いとかいうお子さんについて心電図やエックス線、心エコーの3つで診ていきます。病気が隠れているのか隠れていないのか、もし隠れているなら当院で扱える病気なのか、大きな病院へ紹介したほうがいいのかなどを適切に判断して方針を決めています。
設備面でのこだわりはありますか?
【副院長】お子さんが乗り降りしやすいよう駐車場は広く取りました。また、小児科は新型コロナウイルス感染症でなくてももともと感染症がすごく多い診療科なので、風邪のお子さん用の待合室とワクチンや健診のお子さん用の待合室を別に用意しています。それぞれにトイレと授乳室も備えて、感染症のお子さんとそうでないお子さんが接触することはほぼない形にしています。なので、よくワクチンはこの曜日のこの時間と決まっていることがあると思いますが、当院は時間帯を分けることはしていません。いつでも診察にもワクチンにも来ていただけます。また、水ぼうそうのような空気感染する感染症のお子さんには裏口から入ってもらい、ウイルスを部屋から外に出さないための換気方法を取り入れている陰圧室へ直接入ってもらっています。
今後の展望を教えてください。
【院長】コロナ禍においてとにかく頑張ろうという感じで、しばらくは展望を考える余裕もありませんでした。開業して2年がたち、何となく同じ方に来ていただけるようにはなったかなとは思いますが、もっと「かかりつけはあらきこどもクリニックです」と頼りにしてくださる方が増え、当院がこの地域になくてはならない存在になれればいいなと思っています。あとはアレルギーやアトピー性皮膚炎の治療など、専門性を生かした診療にさらに力を入れていきたいです。また、循環器で開業している小児科の先生は少ないと思うので、そういうところが認知されて、「胸のことだったらここだよね」となってくれると非常にありがたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【院長】お子さんのことってわかっているつもりで意外とわからないことってあると思うんです。特に体調のことは、たくさんお子さんがいる方でも全員が同じようになるとは限らないですし、また誰しもお子さんが体調を崩したらとても心配だと思います。いろいろ考え込む前にとりあえず来ていただければ、大丈夫なのか大丈夫じゃないのかを含めて相談に乗ります。また、子育てのことでも普段の生活のことでも、気兼ねなく相談に来てもらえればうれしいです。
【副院長】私たちも小さい子どもを育てながら診療しているところです。そういう共通の話題もあるので、医師と患者といった堅苦しいイメージではなく、ぜひ気軽にお話しに来てもらえるといいなと思います。