子宮頸部異形成の治療
専門性と経験に基づいた適応判断が鍵
自由が丘ちあきレディースクリニック
(目黒区/自由が丘駅)
最終更新日:2025/06/24


- 保険診療
子宮頸がん検診を2年に1回受けていれば安心、そう思っている女性は多いだろう。しかし、「自由が丘ちあきレディースクリニック」院長で日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医の飯塚千祥先生は「検診の診断精度は56%程度しかないことをまず知ってほしい」と警鐘を鳴らす。子宮の入り口にあたる子宮頸部で発生するこのがんの原因は、性交渉によって感染するHPVウイルス。子宮頸がん早期発見のためには年1回の検診と、必要に応じて診断精度の高いHPV検査の併用を推奨しているという。「がんに進行する前の子宮頸部異形成を見逃さず、適切に治療介入し、がん予防に努めています。異形成は怖い病気ではありませんが、だからといって安心せず、正しい知識を持って適切に恐れてほしい」との思いで、取材に応えてくれた。
(取材日2025年6月4日)
目次
子宮頸部異形成の9割は自然治癒、残る1割が子宮頸がんに進行する前に対応することが大事
- Q子宮頸部異形成とは何でしょうか?
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A
▲子宮頸部異形成について知ってほしいと語る飯塚院長
前がん病変、つまり子宮頸がんの前段階ことで、軽度異形成から中等度異形成、高度異形成、上皮内がんへと段階的に進行し、その先は転移も再発もする浸潤がんと診断されます。女性の80%以上は原因となるHPVウイルスに感染したことがあり、誰に異形成が見つかってもおかしくないわけですが、異形成の90%以上は2年以内に自然治癒します。しかしハイリスク型のHPV感染の場合など、一部はがんに進行していきます。その間、平均10年、短くて4~5年。異形成の段階で発見し適切に治療できれば、妊娠への影響を最小限に抑えた上でがんを予防することも期待できます。治療法としてはレーザー蒸散術と円錐切除術の2つがあります。
- Qまず、レーザー蒸散術とはどのようなものですか?
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A
▲レーザーの処置は日帰りで可能
中等度~高度異形成に対して、病変を除去するため、異形成部位の表面をレーザーで焼く方法です。麻酔なしでもできるくらいの痛みであることが多いですが、出血量コントロールのためにも局所麻酔下で行い、処置時間は10分程度。経腟で行います。1回で不十分な場合は2回目のレーザー治療も可能です。最大のメリットは妊娠への影響がほぼないことで、今後妊娠を希望する女性にとって非常に有用な選択肢となります。ただ、年齢が高くなって閉経が近づくと、異形成の発生部位が頸管の奥のほうに入り込んでいってレーザーが届かなくなり、病変の評価も難しいため、適用外になることが多いです。
- Q円錐切除術についても教えてください。
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A
▲静脈麻酔下での円錐切除術を実施する
子宮頸部の入り口を円錐状にくるっとくり抜く方法で、レーザー蒸散術よりも深い病変の除去が望めます。切除した病変で病理診断までできるため、がんの見落としリスクを抑えることができるのも大きな利点。円錐切除術後は子宮頸部が短くなるため、妊娠時の切迫早産リスクが約2倍に増加しますが、このリスクは決して高いものではなく妊娠出産は十分可能です。当院では滞在2~3時間の日帰り手術に対応しています。手術室で静脈麻酔下で行い、2~3分で切除完了。こちらも同様に経腟で行います。治療後はリカバリー室で2時間ほど休んでから帰宅していただいています。
- Q治療後の注意点と、治療選択の判断基準について伺います。
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A
▲定期的にがん検診を受けることが大切
レーザー蒸散術、円錐切除術ともに術後1~2週間が出血しやすい時期です。手術時にできたかさぶたが弱くなり、さらに生理と重なるとかさぶたが余計溶けやすくなって早めに出血を起こすことがありますが、こちらで止血の対応が可能です。この期間は旅行などは避け、すぐに受診できる範囲で行動してください。そして治療選択についてですが、私たち婦人科腫瘍専門医は患者さんの年齢や妊娠希望の有無、病変の程度や部位などを総合的に判断して治療法を決定します。最終目標はがんの予防はもちろん、この先妊娠したい方の子宮を残し、妊娠への影響をできるだけ小さくすること。高い専門性を持って、必要最小限の治療を行うことが重要です。
- Q治療を受けるクリニックを選ぶポイントを教えてください。
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A
▲不安なことは相談してほしいと話す
特にレーザー蒸散術は、術前の適応判断がすべてです。レーザー後は照射部位がやけどした状態になるので、3ヵ月ほどたたないと、実はそこにがん細胞があったとしても異形成が残ったとしてもわからず、治療の遅れにつながります。術前には組織診とHPV検査を行いますが、子宮頸部のどこの組織を取ってくるのか、頸管奥の見えないところをどう評価するか、それにはやはり高度な専門性と豊富な臨床経験が必要です。円錐切除術のように切り取らない、病理診断を兼ねないレーザー蒸散術を希望する方は特に、高い技量を持った婦人科腫瘍専門医を頼ってほしいと思います。