飯塚 千祥 院長の独自取材記事
自由が丘ちあきレディースクリニック
(目黒区/自由が丘駅)
最終更新日:2025/06/06

自由が丘駅から徒歩2分。服飾店や雑貨店が並ぶ通り沿いのビル2階にある「自由が丘ちあきレディースクリニック」。にぎわいを見せる駅周辺に立地しているにもかかわらず、院内には落ち着いた雰囲気が漂っている。同院は、婦人科腫瘍を専門に数多くの診療・手術を手がけてきた飯塚千祥院長が2019年に開業し、2024年に現在の場所へ移転・リニューアルした。コルポスコープを備え、子宮頸がんの精密検査にも注力。「充実した設備と専門技術を駆使し、婦人科がんの予防や診断に備えます」と、早期発見・早期治療につなげるため、小さな病変を見逃さないように日々診療にあたる。内分泌や東洋医学など多様な専門性のある医師も在籍し、女性たちのライフサイクルに寄り添う。同院がめざす医療や診療のモットーについて、飯塚院長に詳しく聞いた。
(取材日2025年5月7日)
婦人科腫瘍の専門家が、子宮頸がんの日帰り手術を実施
2019年に開業、2024年にはこちらに移転されたそうですね。

開業以来、患者さんがかなり増えて医師を増員する予定もあり、広い物件に移転いたしました。設備の整った手術室を用意しているので、検査の一つである子宮頸部円錐切除術といった日帰り手術ができます。地域のクリニックでありながら専門的な検査・診断を行えることが当院の強みです。幼児から90代まで幅広い年齢層の患者さんが来院されるので、全面バリアフリーに設計。院内カラーはホワイトを基調に、待合シートはピンクやイエローなどのパステルカラーを取り入れてホッと和む雰囲気を大切にしました。患者さんの症状で多いのは、幼児はおりものの異常、小学生は初潮が来ない・早いといった悩みや陰部のできもの・かゆみ、中高生は月経不順・月経痛、20歳以降は子宮がん検診・精密検査、中高年は更年期障害、高齢者は排尿トラブルなどです。
的田眞紀副院長とともに、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医の資格をお持ちです。
婦人科がんの専門家が2人いることで、当院は婦人科がんの予防から診断、早期発見、手術後のフォローまで管理できることが強みです。コルポスコープを使った子宮頸がんの精密検査も行っています。また、子宮頸がんの前段階となる子宮頸部異形成の治療には、レーザー蒸散術や円錐切除術を実施。通常は大学病院で行うくらいの治療ですが、当院では設備と医師の経験が整っており、できるだけ将来的な妊娠に影響しないような切除に努めています。一方、婦人科がんの中で見逃されがちなのが子宮体がんです。子宮体がんの原因の一つが、更年期の月経不順といわれています。月経が1年来なかったら閉経したと思う人が多いですが、正常な閉経に向かうのか、子宮体がんへ向かうのか、どちらの月経不順なのかを見極めることが必要に。子宮体がんに向かうものである場合、改善をめざすためホルモン治療などを行い、子宮体がんの予防につなげていきます。
婦人科がん以外で注意してほしい症状はありますか?

月経痛ですね。月経痛は子宮内膜症の症状の一つで、子宮内膜症の半数は不妊症につながる可能性があります。子宮内膜症は、子宮内膜細胞が卵巣や腹膜など正常ではない部位で発生し発育する病気で、閉経まで続くので早めの治療が肝心です。「月経1日目くらいは痛みがあるもの。市販薬を飲んでおけば良い」くらいに思っている人がいるのですが、そもそも月経痛はないことが基本なので、1日でも痛みがあれば受診をお勧めします。子宮筋腫や子宮内膜症なども「腫瘍学」の領域なので、私や的田副院長の得意分野です。中高生も月経痛に悩む人が多いので、親身に対応いたします。
ホルモンや漢方など、各領域に強みを持つ医師が集結
ご経歴を教えてください。また、なぜ開業を決意されたのですか?

2002年に昭和大学医学部を卒業後、有明病院の婦人科で婦人科がんを中心に経験を積みました。その後、昭和大学病院産婦人科に勤務し、日頃の診療に加え後進の育成にも尽力してきました。患者さんが病気に悩み苦しむ姿を見て、病気の予防や早期発見・治療に力を注ぎたいと考え、2019年に開業を決意。開業したきっかけの一つが、昭和大学で出会った妊婦さんでした。妊娠中に子宮頸がんが発見され、1ヵ月で直径6cmになるくらい急速に進行したのです。赤ちゃんは人工的に早産で対応。一方、お母さんは出産後に手術や抗がん剤治療などで手を尽くしたのですが、亡くなってしまいました。調べてみると、その方の子宮頸がんは予防接種で予防がめざせるタイプだったのです。「予防できれば助けられたかもしれない」という事実が、心に深く残りました。「がんで亡くなる人を1人でも減らしたい」、その思いが開業へと導いたのです。
こちらのクリニックは医師が複数名在籍され、専門分野もそれぞれ違うのが特徴的です。
的田副院長は、婦人科腫瘍専門医として長年にわたり、婦人科腫瘍の治療・研究に従事。有明病院の婦人科医長を務めたこともあります。リニューアル後に加わった宮上景子先生はホルモンの病気がご専門で、月経に関連する症状の診断・治療に長けています。田中可子先生は漢方に精通し、西洋医学に東洋医学を融合させた診療を提供できます。その他にも、子宮脱や尿漏れといった泌尿器や生殖器に詳しいなど、さまざまな専門性を持つ医師を集めました。医師同士は日頃から連携し、例えば私が婦人科がんの経過を診ている患者さんの更年期症状が気になったら、宮上先生にお願いするといった対応もできます。
他にも多種職のスタッフがいらっしゃるとか。

助産師、看護師、保健師、薬剤師など、さまざまな専門家が在籍しています。当院では妊婦健診は取り扱っていないものの、授乳などの妊娠・出産にまつわる悩みも助産師などが伺うことができます。子育てが一段落しているスタッフが多いので、経験に基づいた育児アドバイスもできるでしょう。月に1回はミーティングをしているので、患者情報は共有し連携体制を整えています。
技術を駆使し、痛みを抑えた丁寧な処置をめざす
診療のモットーを教えてください。

婦人科疾患の予防に力を注ぐことです。子宮頸がんや子宮体がんの大部分は、前がん病変というがんになる前段階を経てがんへ移行するといわれています。がんを未然に防ぐためには、約10年とされるこの期間に定期的に検査を行い、早期発見・治療につなげることが重要なのです。私は数多くの経験と培った技術を生かし、「このままではがんに発展する可能性がある」という段階を速やかに発見し、「子宮がんになる可能性があるので、適切な治療をしませんか」といった提案ができます。がんになる前の段階で発見することは、クリニックの役割だと思っています。
患者さんと接する上で、どのようなことに配慮されていますか?
デリケートな部分を診察することが多いので、「痛みが強い」と思っている人が少なくありません。そのため、なるべく痛みの少ない処置を心がけています。検査の前には不安を取り除けるように十分な説明を行い、ご質問にも詳細にお答えします。例えば子宮体がんの検査で膣に挿入する器具は、一般的なタイプより細いものを採用。それに加えて技術を生かし、痛みに配慮した丁寧な検査により「痛くなかった」と言われることをめざします。また、診察室では患者さんの訴えに丁寧に耳を傾け、症状の背景に隠れている病気の見落としがないように細心の注意を払っています。例えば更年期症状に見えても、リウマチや膠原病といった病気が隠れていることもあるのです。
先生は、「婦人科のかかりつけ医になりたい」とおっしゃっていますね。

婦人科は、妊娠・出産をする年齢からお世話になる所と思っている方もいるかもしれませんが、幼児期から老年期まですべての女性にとって必要な領域です。未成年には、気になる症状があれば小児科の他に婦人科という選択肢があることを伝えたいです。生殖器や子宮の診察は、小児科で対応できないことも多いですから。20歳以上の方には、子宮頸がんなどの健康診断を毎年受けることをお勧めします。当院では、がんになる人を一人でも減らすことをめざしています。それだけでなく、婦人科疾患も予防できるように力を尽くします。病気になってからではなく、予防のためと思って受診する習慣づけをしてください。子宮頸がんワクチンをはじめとした各種予防接種にも対応し、一生を通して女性の健康を支えていきたいと考えています。