楡井 工 院長の独自取材記事
アトラスファミリー歯科 久喜菖蒲
(久喜市/久喜駅)
最終更新日:2025/09/30

エックス線撮影室やキッズスペースなど、世界各国をイメージして設計した院内は、歯科医院のイメージを覆すユニークなこだわりが随所に施されている。久喜市の「アトラスファミリー歯科 久喜菖蒲」で院長を務める楡井工(にれい・たくみ)先生は、バックパッカーとして世界各地を旅した経験を持つ。虫歯から入れ歯の相談、インプラント治療までさまざまな世代の幅広いニーズに対応し、一人ひとりの患者に合わせた治療を行っている。また、近年は噛み合わせの改善による「第三の予防」にも注力しているという。診療のこだわりや今後の展望について聞いた。
(取材日2025年8月26日)
世界を旅しながら歯科医療の多様性にふれる
先生が歯科医師を志した理由を教えてください。

実家が歯科医院を経営しており、私にとって歯科医師は幼い頃から最も身近な職業でした。ただ、この道に進むことを決心したのは、歯学部在学中のとある体験からです。事情があり私は入院することになったのですが、そこで80~90代くらいのおばあさんが元気に分厚いカツ丼を召し上がっている姿を目の当たりにしました。その姿に非常に大きな感銘を受けたのです。人間にとって食べることは人生最大の楽しみの一つなのだと。おばあさんの姿を見て、患者さんの生きる楽しみを守るために何かしたいと素直に思うようになりました。
開業前にバックパッカーとして世界を旅されたと伺っています。旅を通じてどのような気づきを得ましたか?
当時、私の年齢は30歳手前。開業したり結婚したりすれば、世界を旅することは難しくなると考えて、特に期間も決めずに思い切って旅に出ることにしたのです。最終的に約1年3ヵ月かけて、アジアやヨーロッパ、南北アメリカの各国を周る旅となりました。国や地域によって、歯科医療に対する習慣や文化、価値観が実に多様だと知りました。例えば、前歯に金歯を入れることをステータスとする人たちがいますし、ワイヤーの矯正装置を着けている姿を美しく誇らしげに感じている人たちもいました。一方、日本の保険治療でメインとなっている金属の詰め物やかぶせ物は、世界的に審美性の観点から敬遠されつつあります。そのように世界は広く、自分の常識は必ずしも当てはまらないということを身をもって知る機会になりました。また、世界中の歯科医師と交流を深めることができたのも旅の大きな財産です。
人生観に大きな影響を与えた旅になったのですね。

はい。旅を終えた後には、それまでの分を取り戻すべく、複数の歯科医院をかけ持ちしながらほぼ休みなく働きました。働く場所としては、先端の設備や治療を取り入れた歯科医院や、訪問歯科に特化した歯科医院など、専門性の高い歯科医院を選ぶことを心がけました。というのも、もし自分が開業するとしたら、患者さんたちから「あの歯科医院に行けばなんとかしてくれる」と信頼を得ることが大事になりますし、そのためには幅広い知識や技術を取り入れる必要があると思ったからです。なお、当院には外国人の患者さんも多く来院されます。半数程度は日本語を深く理解できない患者さんたちですが、世界旅行に行った経験から、遠慮なくフランクにコミュニケーションが取れるようになったと感じています。
歯科医院の常識を覆していくことが目標
診療にあたり心がけていることを教えてください。

私は歯科のイメージや常識を覆していきたいと考えています。例えば、世間一般的に歯科は「怖い」というイメージがあります。より気軽に訪れることができる場所だと感じていただくために、院内はなるべく「歯科医院らしくしないつくり」を心がけました。キッズスペースも設けているのですが、あるお子さんが「次はいつ行くの?」と楽しみにしてくれているという話を聞いた時はとてもうれしかったですね。また、治療に対する「痛い」というイメージを変えていくため、当院では痛みを和らげるために電動麻酔器を使用し、表面麻酔も必ず行っています。
患者さんのモチベーションの維持・向上にも注力しているそうですね。
患者さんの中には、「自分がどのような治療をされているのかわからない」あるいは「本当に良くなっているのか確信が持てない」という方々もいらっしゃいます。そのため当院では、口腔内カメラで口の中を撮影したり、検査結果を印刷してお持ち帰りいただいたりなどしています。治療前・治療中・治療後と時系列に沿って自分の歯の様子を知ることができれば、治療を続けたいというモチベーションにつながります。またそれらの資料は、当院スタッフと患者さんのコミュニケーションをより円滑にするツールにもなります。何より私は患者さんに対して「患者さんの歯のことはご自身が一番知っていてほしい」という気持ちが強く、それを実践するために状況を共有する方法を常に模索しています。
状況を共有しながら一人ひとりに合わせた治療をしてもらえると患者さんも安心ですね。

人の価値観は実にさまざまです。私は医学的に正しいとされているからといって、画一的な治療を強制することは良くないことだと考えています。例えば当院では、抜歯をしないといけない場面でも、ご本人がどうしても抜きたくないのであれば可能な限り残せるよう治療法を提案します。また、虫歯を見つけた時も進行が緩やかな場合は治療するほうが歯にとってダメージが大きいことがあります。そのような場合はきちんと説明して、なるべく削らないようにしています。
噛み合わせの改善も含め、より総合的な予防に取り組む
今後どのような分野に注力していきたいですか?

一般的に、これまで歯科医院では虫歯と歯周病の予防を重視してきました。当院も開業当時は同じスタンスでしたが、最近ではその2つの予防を徹底しても結果的に歯を失う患者さんがいるということが気がかりになっています。そこでフォーカスしようとしているのが「噛み合わせ」です。日本人が歯を失う3大理由は虫歯、歯周病、そして歯の破折です。噛み合わせが悪いと、虫歯や歯周病はもちろん、力が過度にかかるため歯の破折も起きやすい状態になります。最近では、見た目だけなく歯の磨きやすさや噛む力のバランス改善のために矯正治療を選択する人も増えています。80~90歳になっても患者さんが歯を残せるように、「第三の予防」ともいうべき噛み合わせの問題改善に積極的に取り組んでいきたいです。当院だからこそ、口腔内をトータルに診ることに重点を置き、さまざまな観点から口腔内の健康を支えていきます。
スタッフの皆さんについても教えてください。
スタッフの多くは開業当初からのメンバーです。これほど長期間にわたり同じクリニックでスタッフが働いてくれていることはとてもうれしいですね。当院では技術的なベースはそろえつつも、患者さんへのアプローチやコミュニケーションに関してはマニュアルを設けていません。スタッフそれぞれの個性や多様性、そして患者さん個々人との相性を大事にしているからです。結果としてスタッフにファンがつき、定期的に通っていただける患者さんが増えていると思います。
今後の展望を教えてください。

現在、おかげさまで患者さんの数は着実に増えています。皆さんの利便性をさらに高めるためにも、今後はITを積極的に取り入れていきたいです。例えば、予約や記録のデジタル化ですね。予約など、バックヤードの実務が効率化できれば、スタッフが患者さんとコミュニケーションを取れる時間が増えますし、業務負担も削減できます。また、診療記録をデジタル化できれば、患者さんのモチベーション喚起もよりスムーズに行えるはずです。患者さん、スタッフ、そして当院の経営にとって三方良しの施策を進めていきます。
読者にメッセージをお願いします。
開業して7年目。これまで携わってきた患者さんとの信頼が支えてくれており、皆さまとともに成長してきたクリニックといっても過言ではありません。人と人のつながりの大事さも痛感しました。私は丁寧かつ患者さんが安心できる診療がスタンダードになるべきだと感じていますし、一人でも多くの患者さんの悩みを解決したいと考えています。口の中の悩みはなかなか言い出せず我慢しがちですが、家族に相談するように、気軽に来院していただける医院をめざしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/38万5000円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。