木内 良明 先生の独自取材記事
広島アイクリニック
(広島市中区/胡町駅)
最終更新日:2024/08/07

胡町駅または銀山町駅から徒歩1分の場所にある「広島アイクリニック」。眼科の各分野の専門性を持つ医師たちが、専門的な診療にあたるクリニックだ。院内はシンプルで清潔な印象。常勤医の木内良明先生は、落ち着きがあり頼りがいのある先生だ。広島大学病院では病院長を務めたほか、緑内障の研究や、後進の育成にも携わるなど活躍の幅は広い。2024年4月からは広島アイクリニックの常勤医として診療にあたっている木内先生。緑内障をはじめとする眼科全般の豊富な経験を生かして、患者の悩みに応えている。「大学教授もしていましたが、今でも患者さんを診るのが好きです」と診療への熱意を見せる木内先生に、注力する緑内障の治療や診療ポリシーをじっくり聞いた。
(取材日2024年6月27日)
大学病院の病院長を経て地域のクリニックへ
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

緑内障や角膜、網膜の専門的な治療を、地域のクリニックで受けられることが特徴です。私自身も広島大学病院出身ですし、他にも広島大学病院のドクターが複数人、非常勤で診療にあたっています。私は広島大学病院の病院長を退任したことをきっかけに、2024年4月からこちらの常勤になりました。常勤の医師は、三浦幸子院長と私の2人です。院長と一緒にこちらのクリニックで診療するまでに紆余曲折あり、実を言うと、とても苦労が多かったんですよ。ですが、こうして今は協力して患者さんを診ることができています。これからもクリニックを盛り上げるために頑張っていきたいですね。
素晴らしいご経歴ですね。
広島大学病院の病院長になったのも、私が特別優秀だからというわけではありません。順番が回ってきて就任したわけですが、病院を代表する立場ですから責任もあります。あの頃は本当に多忙で自分の時間はなかったと思います。一方で、病院の経営に携われたことは貴重な経験でした。大学病院は、実は経営的にはとても苦しいのです。ですが広島大学病院は収益率がとても高かった。理由は専門的なドクターがそろっていることと、経営改革を実行したことです。私は病院とクリニックの診療を両立していた時期がありますが、それは患者さんにとっても病院にとってもメリットがあると考えたから。病院での治療が終了した患者さんをクリニックで見続けられると、患者さんにとっても安心だと思います。
後輩の養成にも携わっていらっしゃいますね。

大学病院では眼科医を養成する講座を10年以上続けていました。人は、誰かに教えることが一番勉強になると思います。ですから、できる限り若手の医局員に発表する場を与えています。教える立場としては、丁寧な指導と自分自身の勉強が欠かせません。もしも発表がうまくいかなかったら、それは指導した私の責任ですから。ほかにも他学部での講義や、講演会の依頼など、医師人生の中で教えることが多かったですね。中でも学びになったのが「関西緑内障道場」と「中四国緑内障アカデミー」でした。ケーススタディーで他大学の先生たちとディスカッションする勉強会で、ある患者さんの状況や症状に対して、「どう治療すればいいか?」を皆で考えるのです。発言するには自分の知識を相手に伝わる形にすることが必要ですから、回を重ねるごとに着実に自分の力になりましたね。
緑内障の豊富な診療経験を生かす
力を入れている治療はありますか?

当クリニックでは眼科全般に対応していますが、私自身は緑内障が専門です。緑内障は年齢とともに患者さんが増える病気です。ですが、実は緑内障の中でもいくつかタイプがあって、診断名によって治療法も変わります。国によって保険制度や治療のガイドラインも違いますが、国内では一般的に、服薬、治療、手術の順番です。ただ例外もあって、緑内障の中でも少なくない閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障は、まず手術になります。理由は、急性で放置すれば失明の危険もあるためです。緑内障でも種類によって危険性や治療法が異なるので、専門的な治療が受けられる医療機関で相談することをお勧めします。また、大人の緑内障と子どもの緑内障でも、原因が違うため治療のアプローチは異なります。
子どもの緑内障について詳しく教えてください。
子どもの緑内障の原因は、目の発達が遅れていることです。眼球にある水の出口が十分に発達せず生まれることで、緑内障を引き起こします。小児の緑内障では、まず手術するのが世界共通です。ほとんどのお子さんは目だけの手術で改善が期待できます。当クリニックでも緑内障の手術が可能ですし、入院が必要な場合は提携している広島赤十字・原爆病院に紹介しています。私はこれまでの経歴から、いろいろな病院とつながりができました。患者さんの入院生活が少しでも快適になるようにと、数ある病院から患者さんに合わせて紹介先を選定しています。
診療で気をつけていることは何でしょうか。

たとえ専門外やわからないことがあっても、できるだけ自分で対処するようにしてきました。大学病院というのはいろいろなところから患者さんを受け入れますが、紹介先というのは基本的にない環境です。ですから、患者さんがどんな症状であっても自分で解決するしかありません。大学病院に長くいたことで、ベーシックな検査やある程度の範囲は自分で対処する力がつきました。困ったときに連絡する先生を分野ごとに決めておき、メールなどでやりとりしていました。「この分野ならこの先生」という引き出しを持っておけば安心して対応できます。そして、やりとりしているうちに知識もついてきて、ある程度は自分で判断できるようになるんです。そうしてよくわからない病気にも一生懸命に治療していると、患者さんは自然と信頼してくださるのだと思います。まだまだ専門外の分野はありますので、今後も勉強を続けます。
診療が好きだから、これからも続けていきたい
医師をめざしたきっかけをお伺いします。

出身は徳島でしたが、小学校に上がるタイミングで大阪に引っ越しました。祖父母がもともと大阪にいたこと、眼科医だった父が大阪で開業することがきっかけでした。当時、宝くじが当たって、当選金で大阪の一軒家を購入し、それを改装してクリニックにしたんです。なんだか時代を感じるエピソードですよね(笑)。医学部では産婦人科の成績が良かったのですが、私は男女問わずあらゆる方の診療をしたいと考えて、父に勧められた眼科を選びました。
医師としてやりがいを感じるのはどんな時でしょう。
患者さんに喜んでもらえるのがうれしいですね。やはり、見えるのと見えないのではまったく世界が違います。自分で病気をすると人の痛みもよくわかるものです。私は耳の病気になったことがありますが、そのときは「両方聞こえなくなったらどうしよう」とか、「これが目の病気だったらもっと困る」と不安でした。もちろん治療ではうまくいかないこともありますし、どちらかというとそういうケースのほうが記憶にも残ります。だからこそ、治療の成果が出て患者さんに喜んでもらえたらとてもうれしいです。そのために力を尽くすことが、医師としてのやりがいにつながっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

当面はクリニックの経営を軌道に乗せることが目標です。患者さんに親しんでもらえるクリニックにしたいです。当クリニックをサポートしてくださる先生もいるので、ありがたいですね。私個人としては、今後も、できるだけ長く患者さんを診ていきたいと思います。研究や教育も好きですが、何より患者さんを診ることが楽しいのです。これまで培った技術と経験を生かして、専門性の高い医療を提供していきたいと思います。目のことで困ったことがあれば、一度当クリニックに相談にお越しください。