田中 俊一 院長の独自取材記事
銀座クリニック
(中央区/銀座駅)
最終更新日:2024/09/11

多くの人が行き交う銀座四丁目交差点からすぐ、中央通り沿いのビル8階にある「銀座クリニック」は、都会の喧騒を忘れさせる静かな空間だ。ここでは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能異常症に対する専門診療を予約制で提供。神奈川県と東京都に複数の医療拠点を運営する田中俊一院長が、食事、運動、睡眠を軸に、他拠点とも連携しながら個別化、具体化した診療を実践している。「徹底したデータ主義により、個別化・効率化を図っています」と話す田中院長に、同院の特徴やめざす医療について詳しく聞いた。
(取材日2024年8月8日)
ライフスタイルを可視化し、個々に合わせた助言を提供
クリニックの特徴を伺えますか。

当院では主に、糖尿病、高血圧症、脂質異常症と睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能異常症の5つの疾患を抱えた患者さんを中心に、食事、運動、睡眠の三本柱で生活改善をめざす診療を提供しています。従来、カロリーに基づく食事療法が提唱されてきましたが、それだけでは十分ではありません。「何を」食べるかだけでなく、「どう食べるか」まで追求した、本格的な介入が必要だと感じているのです。そこで、食材はもちろん、その調理法や食事のタイミング、料理の温冷や好き嫌いといった細かい要素までも考慮した、個別化した食事へのアドバイスを行っています。また、睡眠や運動についても同様で、グループ内の他の拠点とも連携して取り組んでいます。
具体的にはどのような診療が受けられるのですか。
個別化するためには、それぞれの日常生活をデータ化し、可視化することが欠かせません。患者さんの生活スタイルを目に見える形として医師に共有できないのでは、さらなる改善をめざすことは難しいと考えます。そこで、睡眠や栄養、運動のレベルをデータ化するための睡眠計や体組成計といったツールの活用をお勧めしています。市販のデバイスを各自ご用意いただく必要はありますが、日常的に生活をデータ化し、それをクラウド上に置くことで診療に生かすことができます。「未病の見える化」には長年挑戦してきましたが、デバイスの質が上がったことでより手軽に可視化がかなうようになりました。個人の生活状況がわかれば、指導内容もおのずと変わってきます。経過を追いながらデータを活用すれば、画一的ではない、個別化したアプローチの継続が可能となるのです。
どのような患者さんが多く来院されていますか。

ビジネス拠点が近い方や用事のついでに来院される方など、都内各所からいらっしゃいます。特に多いのが経営者層で、皆さん本気で体に投資したいと希望する方々です。「体が資本」の意識を持って、健康のためにお金や時間を使うことを惜しまない方は、若い層にも増えていると感じています。先に挙げたような疾患で保険診療を受けられる方が中心ですが、一部未病の段階から予防的に利用される方もいらっしゃいます。ご自身の生活をデータ化し、定期的な採血などにより体の状態をチェックしたいというニーズは、世代を問わず高いのです。そうしたご希望にも、自由診療でお応えしています。
薬に頼りすぎず、生活改善でより良い状態をめざす医療
薬に頼らない方針ということでしょうか。

生活習慣病は個々に合わせて具体化した生活指導を行えば、重症化する方はほとんどいらっしゃらないのでなはいかと考えています。昔と違って糖尿病でインスリン治療を受けられる方も減っていますし、透析が必要となるようなケースもまれになっています。薬はあくまで補助的に使いながら、ライフスタイルを細かく評価して、個別に対応しています。2019年に当院を立ち上げて丸5年が経過しましたが、薬に頼らない治療を掲げ続けてきました。その中で日常生活を細かく見ていくことは必要です。細かく見ていけばほとんどの方が悪化を防ぐことができるのではないでしょうか。
グループ内他拠点との連携もあるそうですね。
2008年より診療を行っている「みなとみらいクリニック」や、2024年7月に開院した「PWC丸の内金沢内科クリニック」などをはじめとするグループ内の拠点と連携して、食事、運動、睡眠の三本柱を軸にした生活習慣病患者さんへのアプローチを進めています。連携することで、効率的な運動や睡眠の質の向上をめざしているのです。
効率は忙しい現代人にとって魅力的ですね。

はい。効率も大切ですが、数値的に明確化できることもポイントです。時系列で数値を追うことで改善がわかるからこそ、さらなる取り組みを続けられます。データにしないと治療の過程も明確にわかりませんし、明確にわからないのでは意識づけも難しくモチベーションにもつながりません。だからこそ、ここでは徹底したデータ主義を取っています。
糖尿病に目覚め、数学的思考から睡眠という鍵を発見
医師をめざされ、糖尿病をご専門に選ばれたきっかけは?

実は数学科を卒業し、もう少し現実的な科学を勉強しようかなと医学部に入り直しました。10年間大学に通い、医師になったのは30歳を過ぎてからです。当初は糖尿病を専門にしようなんて考えてもいませんでしたし、自己免疫疾患や全身性エリテマトーデスといった難病に取り組もうと思いました。しかし、治療がうまく進まないことがストレスとなり、このままでは私自身がつぶれてしまいかねないなどと考えるようになってしまいました。そんな中で出会ったのが糖尿病です。糖尿病は患者さんの頑張りが数値に反映されやすい疾患です。そんな点にも惹かれて糖尿病の診療を深めるうちに、この病気は食事と運動の病気といわれるものの、睡眠も関係すると感じるようになりました。しかし、国内には睡眠の視点から糖尿病にアプローチする拠点はない。ないなら自分で作ろうと、大学を辞してクリニックを立ち上げたのです。
糖尿病と睡眠との関係性に思い至られたのは、何かきっかけがありましたか。
胃炎やアルコール性肝機能障害などの疾患は、寝ている間の回復機能が悪いことから起こると考えられています。臓器を最も再生させるといわれているのは睡眠中なのですね。このことを視野に入れた医療を行うことが、より良い医療提供につながるのではないかと考えました。その上、私自身が薬事療法以外での治療法を大切にしてきたことからも、睡眠に軸足を置いた糖尿病のアプローチを追究することへの後押しとなりました。食事、運動とともに睡眠の改善が重要であるとの考えのもと治療を提供しています。
休日の気分転換に楽しんでいらっしゃることは?

犬の散歩と読書です。トイ・プードルとアメリカン・コッカー・スパニエルのミックスであるコッカプーを飼っていて、それはもうかわいらしい。暑い日は日中の散歩が難しいことも多いですが、日々のふれあいに癒やされています。読書では科学全般に始まり、政治や経済まで何でも読みます。とにかく、知らないことが嫌いなのです。幅広く読書をしていると思わぬところにヒントを見つけることがあり、「これだ!」ということを試してうまくいくのは本当に楽しいものですね。人間は多様な要素で成り立っている複雑系であり、環境もまた複雑系。複雑だからこそ面白いと思っています。
読者に向けて一言メッセージをお願いします。
勝手な思い込みは避けてください。眠れているかを問うと「はい」と答える方が多いですが、無意識下にある睡眠が十分かどうか、ご自身で明確にわかるわけはないのです。自分はたいてい間違っていると思っているくらいのほうが良いこともあります。また、体と命を守るためには、多くの情報にふれることも大切です。医療は自分が治療するのであって、薬に治療してもらうものではありません。人によってさまざまな主張があり、どの船に乗るかを選ぶのは自分自身。適切な選択のためには、自分のレベルを上げるしかないのです。
自由診療費用の目安
自由診療とは未病の段階からの自由診療/毎週2回のトレーニング+毎月1回の採血チェック+季節ごとの特別検査:月3万3000円(年払い) ※詳しくはクリニックへお問い合わせください