神内 謙至 院長の独自取材記事
かみうち内科クリニック
(京都市中京区/二条駅)
最終更新日:2025/04/28

京都市営地下鉄東西線の二条駅から徒歩3分の場所にある「かみうち内科クリニック」。日本糖尿病学会糖尿病専門医である院長の神内謙至先生が、地元である京都で糖尿病の専門治療を提供したいと、2019年7月に開業した。糖尿病全般の診療をメインに内科や甲状腺の診療、禁煙治療に対応しているが、中でも神内院長が注力しているのは1型糖尿病の治療だ。神内院長自身も1型糖尿病を少年期に発症しており、自身の患者としての経験を踏まえ、患者に寄り添い、一人ひとりに適した治療の提供に努める。1型糖尿病と2型糖尿病の違いや日々の診療に際しての思いなど、神内院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2019年10月23日/情報更新日2025年4月16日)
専門の糖尿病を中心に、内科・甲状腺診療と幅広く診療
医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

私は15歳の時に1型糖尿病を発症し、今でもインスリン治療を続けています。私がこうしていられるのは、お世話になった医療関係者の方々のおかげなんです。そんな自分の経験から、同じ糖尿病患者を救いたいという思いが生まれ、医師になる道を選びました。
開業までの経緯をご紹介ください。
大学卒業後、糖尿病を診ることができる内科に進みましたが、当時、糖尿病は不摂生などが原因で発症するものであり、本人が努力を怠った結果であるという偏見を持つ医療関係者が多く、同じ糖尿病患者である私は落ち込んだ経験もありました。そんな中、大阪で糖尿病が専門の先生と知り合い、糖尿病治療についての根本的な考え方を教えていただいて、深く感銘を受けました。そして、私もその考え方を受け継いで糖尿病治療を広めたいという思いが募るようになりました。その後、愛生会山科病院で糖尿病内科の立ち上げに携わり、6年ほど診療を行ったところで、「地元の京都で、糖尿病の患者さんに治療を提供したい」と決意。2019年7月に当院をオープンしました。当院のスタッフの多くは、山科病院から私についてきてくれたメンバーです。糖尿病の新しい治療法もよく理解するスタッフなので、チーム医療で患者さんに対応しています。
こちらのクリニックの大きな特徴とは?

私の専門である糖尿病の診療を中心に、一般内科や甲状腺の診療、禁煙治療、健康診断、予防接種などに対応しています。その中で私が最も力を入れているのは、1型糖尿病専門の外来です。2型糖尿病のみならず、1型糖尿病の専門治療を提供できる点が、当院の大きな特徴と言えます。今は糖尿病の新しい治療法がどんどん出てきていますので、そのメリット・デメリットを説明しながら、患者さんにとってより良い治療法を見極め、自信を持って専門的な治療を提供しています。開業してから多くの患者さんに来ていただいていますが、外来を受診される患者さんの8割が糖尿病の方です。
京都で1型糖尿病の専門的な治療を提供したい
1型糖尿病とはどういったもので、どのような治療をしていくのですか?

1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵島ベータ細胞が何らかの原因で破壊されてしまい、自分でインスリンを分泌できなくなることで発病します。生存のためにはインスリン治療が必須で、インスリン治療を継続すれば、基本的に食事や運動などの厳しい制限は必要はありません。当院ではまず、食事を取らなくても血糖が一定に保てるように基礎インスリン量を決定してから、食事内容に合わせて追加のインスリン量を調整するカーボカウントという考えのもと、インスリン治療を行っています。ペン型インスリン注射による治療法以外にも、当院ではインスリンポンプ療法も取り入れ、また新しい血糖値測定法として、持続グルコース測定機器も導入しています。運動によっても血糖は変動し、個人差も大きいので、一人ひとりの患者さんに合わせたインスリン調整方法が重要だと考えています。
インスリンポンプ療法、持続グルコース測定について、詳しく教えてください。
「インスリンポンプ療法」は私自身も行っています。24時間を通してインスリンを皮下に注入する治療法で、患者さんのライフスタイルに合わせて、必要なときに必要なだけインスリンを注入できます。最初は小型機器をずっと体につけていることに抵抗感があっても、やってみると「1日何回も注射をする必要がなくなり楽になった」と喜ばれるでしょう。「持続グルコース測定」は、腹部などに専用のセンサーをつけ、連続的にグルコース濃度を記録する検査方法です。グルコース濃度の変動をより的確に測定でき、測定が難しい眠っている間の血糖変動も把握できるようになるので、血糖コントロールがしやすくなります。例えば血糖値が180になった場合、血糖値が上がって180なのか血糖値が下がって180なのかでは対応法が変わります。この測定器ではそうした血糖値の変動を把握できるので、的確な対応法を選んでいくためのメリットが大きいです。
糖尿病治療において、大切にしていることを教えてください。

糖尿病は食事の乱れや運動不足が原因だとする医療者は多いですが、私は血糖が高くなりやすい体質が主な原因であると考えています。血糖値が上がりやすい体質だから、食事療法が必要だという考え方です。日頃感じるのですが、糖尿病患者さんは一様に「食事療法や運動療法を頑張る」という気持ちが強いです。しかし、あまりにも頑張りすぎると治療がつらくなってしまい、続かない場合も多くあります。私自身は頑張ること自体が美徳とはまったく思っていないので、無理をせず、ただ合併症予防のための治療をしていこう、と説明をしています。糖尿病の治療としては、食事療法や運動療法、そして薬物療法がありますが、私はこれらを3本柱と考えて治療を提案しています。食事や運動ができない患者さんや、それらを行っても血糖のコントロールが芳しくない患者さんには薬物療法を提案し、治療を進めていきます。
糖尿病や慢性疾患についての情報発信も意欲的に
糖尿病患者さんにフットケアも提供しているそうですね。

糖尿病患者さんのフットケアは重要と考えています。糖尿病の合併症として、足の小さな病変から潰瘍や壊疽が生じる糖尿病性足病変があります。悪化すると足を切断するケースもある合併症です。こうした足病変を予防するために、当院では最低年に1度は患者さんの足を診察させてもらっています。そして必要な場合は看護師によるフットケアを行い、足病変の予防法や重症化させないためのセルフケア法などを、患者さんにお伝えしています。糖尿病と足の関係を患者さんが理解し、自分でフットケアができるようになることが大事です。
先生は糖尿病についての啓発活動にも積極的だと伺いました。
当院では糖尿病についての公開講座や、慢性疾患を抱える方のためのワークショップを開催していく予定です。例えば、「慢性疾患セルフマネジメントプログラム」のワークショップでは、日常生活の中で病気から生じる不快感や障害を最小限にしていく対処法が学べるようにしていきます。また、ドクター講演・患者体験談・グループディスカッションなどを行う市民講座の中で、実際に自分が参加して良かったと感じたものを患者さんにご紹介することもあります。患者さんにとって有益な情報を、たくさん発信していきたいですね。
趣味や休日の過ごし方を教えてください。

趣味はジョギングです。今も週に2日、20キロほど走っていて、年に1~2回ほどマラソンに挑戦しています。ジョギングにはまったのは、2008年に初めてホノルルマラソンに挑戦し完走したことがきっかけです。1型糖尿病である私は、長距離を走ると血糖コントロールが難しくなり、1度ケトン体の上昇による急性合併症を経験しました。その後もマラソンを経験する中で、私自身、インスリンポンプを使った血糖コントロールやケトン体の上昇を予防する技術が確立されてきました。そんな自分の経験を、患者さんにもお伝えしています。普段はよく鴨川沿いを走っていますが、走り終えると達成感や喜びが感じられて楽しいです。
読者へメッセージをお願いします。
一人でも多くの糖尿病患者さんが合併症を予防し、健康な人と変わりなく日常生活を送れるように専門的治療の提供と手助けをしていきたいと思っています。私自身が1型糖尿病ということもあり、自分の患者としての体験を生かし、そして糖尿病の専門医師としてのスキルをプラスしながら、患者さんに寄り添っていきたいです。また、糖尿病や慢性疾患の患者さんに向けた情報発信も行っていきますので、ぜひいらしてください。