稲留 遵一 院長の独自取材記事
いなとめ乳腺クリニック
(西宮市/西宮北口駅)
最終更新日:2022/05/23

阪急神戸本線・西宮北口駅の南西口から徒歩2分ほどの場所にある「いなとめ乳腺クリニック」。院長はマンモグラフィ検査や乳房超音波検査といった乳がん検診はもちろん、乳がんの手術も行う稲留遵一先生。近畿大学医学部を卒業後、明石医療センター、NTT西日本大阪病院の外科、大阪大学医学部の乳腺・内分泌外科、関西ろうさい病院の乳腺外科での勤務を経て、2019年3月に同クリニックを開院。新しくきれいな院内について「あえてピンクなどの女性らしさを加えず、ブルーと白を基調にした。私が男なので」と明るい口調で話す稲留先生に、患者に対して心がけていること、乳がん検診の大切さなどについて話を聞いた。
(取材日2019年6月17日)
診察前の「一笑い」で患者の緊張をほぐす
こちらのクリニックには、どのような方が来院されるのでしょうか?

当クリニックは乳腺外科と内分泌外科を専門としていますが、乳腺外科の患者さんが大半ですね。年齢層としては30〜40代の女性の患者さんが多いです。検診で来られる方もいらっしゃいますが、どちらかというと、ふとした瞬間に胸のしこりに気づいたなど、何か症状があって受診される方が多いです。当クリニックではマンモグラフィ検査と乳房超音波検査の2種類の方法で検査が可能で、西宮市の市民検診で受診される場合はマンモグラフィ検査と触診で診断します。ご希望があれば、乳房超音波検査も受診いただけます。
マンモグラフィ検査と乳房超音波検査にはどのような違いがあるのでしょうか?
マンモグラフィ検査とは乳房のエックス線撮影のことです。乳房を圧迫し乳腺を均一に広げて撮影することで、しこりとして触れないタイプの乳がんのサインである石灰化を描出できることが特徴です。一方、乳房超音波検査は乳房に超音波を当てて、跳ね返ってきた反射波を画像に表す検査で、乳房の内部の構造をリアルタイムで確認できます。検査はどちらか片方ではなく、両方受診されることをお勧めしています。まずはマンモグラフィ検査で怪しいところを見つけ、その後乳房超音波検査で詳細を見ていくというやり方が乳がんを見逃す確率を下げてくれると考えています。
乳がん検診は「恥ずかしい」と感じる患者も多いと思いますが、心がけていらっしゃることはありますか?

当クリニックではマンモグラフィ検査は女性技師が行いますが、触診は私が行いますので、恥ずかしいと思われることもあるかもしれません。これといって心がけていることはありませんが、強いて言うなら、触診前の「一笑い」でしょうか。いきなり触診するのではなく、検査に関係のない話で患者さんに笑ってもらって、緊張をほぐしてから、診察するようにしています。リラックスした雰囲気にできると、「普段の検診ではなかなか相談しづらかったんだけど、今日は話せた」などと言っていただけることもあります。
医学生の時の出会いがきっかけで乳腺外科を専門に
先生はなぜ医師になろうと思われたのですか?

きっかけは高校時代に読んだ外科医師が主人公の漫画です。ゴッドハンドで次々と病気を治す主人公の姿を見て、かっこいいと思い医師を志しました。専門も、主人公への憧れから、手術で患者さんを治したいと思い外科に進もうと決心。乳腺外科を専門にしたのは、医学生の時に担当した患者さんとの出会いがきっかけです。乳がんが再発した40代の女性で小学生のお子さんがいらっしゃる方でした。私はまだ学生でしたので、何もできませんでしたが、患者さんとお話ししたり、看護師がケアする様子を横でよく見ていました。とても明るくてよくおしゃべりしてくださる患者さんで、そういう方を見ているうちに、まだ若くてこれからますます活躍していく人たちの社会復帰を応援したいと感じるようになり、ほかの科より比較的若い患者さんの多い乳腺外科を専門にしたのです。
研修医時代の話をお聞かせください。
当時よく言われていたのは「研修医にできることは患者さんをよく知ることだけだ」ということです。がんと診断された患者さんの心理的なサポートをする中で、いつも笑ってくれたらいいなという思いで接するように心がけていました。もちろん、笑えない状況であることも多いですが、患者さんの横にしゃがみ込んで、患者さんがもう話すことはないというくらいまで一緒に過ごすこともありました。話し終えると、しゃがんでいた足がしびれるほどでしたね。
先生は検査のほか、手術もされるのですね。

検査でがんが発見された場合は細胞診検査を行います。手術する場合は、私が当クリニックを開院する前に勤務していた関西ろうさい病院をご紹介できます。また、私自身現在も週に1回関西ろうさい病院で診療をしていますので、もしご希望される場合は、私が手術する日に合わせて来ていただくことも可能です。その患者さんの病状やライフスタイルに合った手術方法を提案します。術後については、抗がん剤治療は大きな病院ですることになりますが、治療が終わった後は当クリニックでフォローさせていただきます。また、乳がん手術後に腕などにリンパ浮腫というむくみがでてしまうことが多いのですが、当院ではむくみをとる指導やマッサージを行っています。リンパ浮腫ケアの知識を持った看護師が対応していますので、ご相談ください。
35歳を過ぎたら1年に1回は乳がん検診の受診を
女性の患者が多い乳腺外科において、男性医師の良さはどのような点でしょうか?

男性医師のほうが、もしかすると女性患者さんのことをより一層考えているかもしれないと思います。女性だと胸に対する個人的な考えがありますよね。考え方によっては、「なぜ温存しようとするのか」、「悩む理由がわからない」という医師もいらっしゃるようです。自分の立場に置き換えて、私ならと考えてしまうのかもしれません。その点では男性医師は胸に対する個人的考えがなく、自分に置き換えることができないからこそ、患者さんの気持ちを想像して診察することができるのではないかと私は思っています。男性医師のクリニックだからこそ、精一杯患者さんのお気持ちに配慮していきたいと考えています。勇気のいることとは思いますが、ご不安なことがあれば、まずは相談にお越しいただければと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

2018年の国立がん研究センターによる統計では、生涯に乳がんを患う女性は11人に1人となっており、以前に比べ増加傾向にあります。その一方で、乳がん検診の受診率はまだまだ低いと感じます。乳がんは早期発見すれば対処できる病気です。いつ発見するかによって10年後の生存率が大きく変わるため、ぜひ35歳を過ぎたら、1年に1回は検診を受診いただければと思います。しこりがないかどうか、セルフチェックも大切ですが、触ってわかる程度となると、2cmほどの大きさになっていることが多く、早期発見とは言えません。毎年受診されている方ですと、5mmほどの大きさでも見つけられますから、この差は大きいですよね。またご家族やご親戚に乳がんになった方がいらっしゃる場合は特に発症リスクが高いと考えられるので、その方の発症年齢の5歳前、つまり35歳で発症したなら、30歳から検診を受けられると良いと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはマンモグラフィ検査/5500円、乳腺超音波検査/4400円、リンパ浮腫の診療/初診:7700円、再診:4400円