黒木 大雄 院長の独自取材記事
ひろお矯正歯科クリニック
(新潟市西区/小針駅)
最終更新日:2022/03/25
JR越後線・小針駅から信濃川方面に車で5分、ショッピングモール近くの住宅街で、2017年から診療を続けている「ひろお矯正歯科クリニック」。歯科矯正の専門クリニックとして、小児矯正、成人矯正、マウスピース型装置を使った矯正、舌側矯正などさまざまなメニューを用意している。院長の黒木大雄(くろき・ひろお)先生は宮崎県出身。東京での歯学生時代から矯正歯科に関心を抱き、大学病院の矯正歯科で18年、さらには1年半のフィンランド留学を経て同院を開業した。矯正歯科の専門家として、数多くの患者のコンプレックスに向き合ってきた黒木院長。咬合や歯並びの乱れを「異常」と決めつけずに信頼関係を築き、患者のモチベーション維持にも配慮する、思いやりある対応がうれしい歯科医院だ。
(取材日2021年6月15日)
矯正を成功に導く鍵は、歯科医師と患者の意識共有
クリニックの特徴を教えてください。
2017年の開業以来、当院は矯正歯科に特化していますので、虫歯や歯周病治療など一般歯科は行っていません。当院で矯正中の患者さんでも、そのような問題が見つかれば、連携している地域の歯科医院をご紹介しています。私自身、日本歯科大学新潟病院で18年間、矯正を専門に多くの症例を重ねてきましたので、せっかくですからこの経験を生かしたいと思っています。歯学部生時代から関心を持ち、難しい症例や珍しい症例にも数多く取り組んできましたので、この仕事を通じて地域医療に貢献できればと考えています。
患者さんはどのような方が多いのでしょうか。
大学病院での矯正歯科は小児歯科を兼ねる場合も多く、10代の患者さんも多かったのですが、開業してからは子どもだけでなく、成人の方を診る機会も増えました。子どもの場合、放置できない歯並びの子は学校健診でチェックされて受診することも多いのですが、歯列矯正はどうしても費用がかかりますので、大人になって働き始めてから受診される方も増えているのでしょう。審美的な側面が大きい分野ですから、やはり女性の患者さんが多いですね。検査・診察してみて、不正咬合など機能面でも問題が見つかる方もいます。日本は欧米に比べて矯正歯科の歴史が短く一般的に意識が高くありませんし、自費診療が中心で保険も使いづらいので、なかなか受診に踏み切れない方も多いようです。
基本的な診療の流れを教えてください。
当院は完全予約制です。初診の患者さんには30分から1時間くらいかけてカウンセリングを行います。患者さんの求める矯正と私のお勧めする矯正が異なる場合もありますので、十分に時間を取っています。次に精密検査でエックス線などの画像撮影や歯の模型を採取し、次回の予約をお取りいただきます。その後は私のほうで、診察結果や画像、模型を参照して矯正計画を立て、患者さんの次の受診の際にご提案します。患者さんが理解し、納得されてから矯正を開始するという流れになります。矯正中は痛みが出ることもありますし、ブラケット矯正などは器具をずっと装着しないといけません。子どもの場合、多くは半年から3年くらいで終わりますが、さらに長い期間を要する患者さんもいますから、甘い考えで始めると終了までたどり着けない可能性もあります。これらを踏まえていただいた上で、矯正を進めていきます。
患者の状態を問題視せず、悩みに応える姿勢が大切
時間もお金もかかる矯正ですが、成功させるためにはどんなことが大切なのでしょうか。
矯正は、矯正中や矯正完了後に歯並びが元に戻ってしまう場合があります。後戻りしやすいケースでは、患者さんの矯正に対する認識やモチベーションが低いと、せっかく整ったきれいな歯並びも維持できなくなってしまうんです。そういう患者さんをつくらないように、視覚的なものを私から患者さんに託すのが大切と考えて、インターネット上に患者さん一人ひとりの「マイページ」を作り、当院のホームページからアクセスできるようにしました。マイページには患者さんご本人の矯正の経過がわかる写真をアップしており、自分の歯並びを確認していただくことで、患者さんのモチベーションにつながればと思っています。マイページの更新を楽しみにしてくださったらうれしいですね。
診療の際に心がけているのはどんなことですか?
矯正は患者さんと歯科医師が一緒に作り上げるものなので、患者さんがついて来てくださらないと計画どおりに矯正を進めることができません。そのためには、歯科医師側も患者さんのお気持ちや方針、疑問点などを共有することが必要です。矯正は審美的な側面が強いので、明るく受け答えされていても、心では本当に悩んでいらっしゃる方も多いです。大学病院時代には、歯並びのコンプレックスから心に傷を負ったお子さんも見てきました。そんな患者さんたちでも、矯正が終わり装置を外して自信を持って笑えるようになると、新たにやっていきたいというお気持ちになるものです。めざすゴールを明確にした矯正計画を立て、さらに5年先、10年先の変化も見据えて診療を進めるように心がけています。
印象に残っているご経験を聞かせてください。
大学病院での若い頃の経験ですが、小児の患者さんの遺伝的な反対咬合を説明する時に「噛み合わせの異常」と表現したことで、後から患者さんの親御さんにやんわりと指摘されたことがありました。歯科医師は患者さんの歯や骨格を診て、現状を医学的・客観的に、できるだけ正確に伝えなくてはいけません。それを患者さんがどう受け止めるかまで考えて、慎重に言葉を選ばなくてはいけないと強く心に刻む経験になりました。歯並びは患者さんのコンプレックスになることを理解し、「異常です」と厳しく問題視するのではなく、悩んでいる方の思いに応えなくてはいけないと、後輩や学生にも伝えてきました。
留学先のフィンランドで人生観が変わり、開業を決意
先生は宮崎県のご出身だそうですね。
宮崎では父が開業し、兄が継いでいます。父と姉・兄が歯科医師なので、私も歯科医師になろうと東京の日本歯科大学に進学しました。家族のやっている一般歯科とは違う分野でと考えていたところ、矯正の授業が面白く、どっぷりと浸かってしまいました。表に見えている歯並びが、矯正できれいに並んでいくのが楽しかったんです。卒業後は大学の矯正歯科に進みたかったので、最初は無給医で空きのあった日本歯科大学新潟病院に入局しました。夜遅くまで技工をしたり分析をしたり画像を見たりという生活で、自分で目標を決め、そこまで学んだら新潟を出るつもりでいましたが、上司に恵まれて大学に残ることになり、学生への指導や研究をしながら自分の基盤をつくっていきました。
その後はフィンランドに留学をされましたね。
ヘルシンキ大学の矯正学講座で、研究生活を1年半送りました。研究内容は歯科矯正学の基礎研究です。フィンランドは仕事でもプライベートでも男女差の少ない国で、男性が子育てに積極的に参加していますし、女性も男性と同じ待遇で働きます。夏休みは長く、みんなハードに働かないので、ゆとりのある生活を送っています。大学では教授にも「日本人は働いてばかりいる。もっと家族で過ごしなさい」と言われ、人生にとって大きな刺激になりました。日本に戻ってから再び大学で働きましたが、研究・教育・臨床の3つを突き詰めていく限り、時間が足りなくなります。一番好きだった臨床の時間が削られてしまうことや、フィンランド生活で影響を受けた幸福観や仕事に対する考え方から、開業を決意しました。自分の好きな臨床医療で、生涯働ける場をつくりたいと思うようになったのです。
今後の展望をお聞かせください。
医療サービスにおいても、デジタル化の要望が高まっているように思いますので、今後も患者さんのニーズに合わせた新しい機材をできるだけ導入したいですね。また、最近はご自身の症状についてインターネットで調べて来院される方も多くなりました。インターネットの情報は混乱させるものもありますが、もう避けて通ることはできませんから、来院された患者さんに対して、あるいは当院のホームページ上でも、世間で流れているさまざまな情報を整理して説明しないといけないと思っています。間違った情報を信じた患者さんにこだわりや思い込みが生まれると、時には診療の障害になることもあります。そうならないように、正しい情報をきちんとお伝えし、ゴールをめざして一緒に歩んでいける歯科医師でありたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはマウスピース型装置を使った矯正/88万円~、部分矯正/16万5000円~、ワイヤー矯正/55万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。