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古川 和博 院長の独自取材記事

ひさい脳神経外科クリニック

(津市/久居駅)

最終更新日:2024/02/26

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック main

久居駅から車でおよそ8分、温かみのある一軒家風の建物が「ひさい脳神経外科クリニック」だ。古川和博院長は、三重中央医療センターや三重大学医学部附属病院、桑名市総合医療センターなどの大規模病院で研鑽を積んできた脳神経外科の医師。三重中央医療センターの目の前に開業したのは、病診連携を密にすることで患者の不安や負担を少なくし、病院から退院した後も質の高い医療を提供したいと考えたからだという。インタビューでは、同院の特色や古川院長の専門分野、治療方針などについて詳しく聞いた。

(取材日2019年5月22日/更新日2023年10月25日)

大規模病院と連携し、患者が安心できる診療体制へ

開業に至った経緯をお聞かせください。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック1

私は当院の目の前にある三重中央医療センターで初期研修を行い、脳神経外科に入局後、勤務医をしていました。当時から、この近辺には脳卒中などの治療やリハビリテーションを終えて退院された患者さんを診る、脳神経外科の開業医が少ないことを課題に感じていたのです。遠くにある大きな病院に通わざるを得ないことは、患者さんやご家族にとって負担になりますから、そうした方々の助けになればと思いこの地に開業しました。今では同センターの脳神経外科と密に連携し、患者さんの不安や負担の軽減と、ご安心いただける医療の提供をめざしています。ちなみに一軒家風の建物にしたのは、患者さんがリラックスして過ごせるような、アットホームな雰囲気にしたいと考えたからです。

患者層についても教えていただけますか?

勤務医の頃は、60~80代の方を診る機会が多かったのですが、開業後は10~30代後半の若年層の方を診る機会が増えました。主訴の大半は頭痛で、片頭痛などのご相談が多いですね。特にお勤めの方などは、大きな病院にかかるのがわずらわしかったり、時間が取れなかったりで、頭痛などの症状をやり過ごされる場合も少なくないため、当院が力になれるのではと考えています。よく見られるのは、午前中から症状があるけれども我慢をして、午後にひどくなった頃には大きな病院の外来が終了していて手遅れになるというケースです。その点、当院は夜7時まで診療していますので、仕事帰りなどにもご利用いただけます。また、病院勤務時代の経験上、頭部のけがは比較的午前中には起こりにくく、昼過ぎや夕方などに多いようです。当院は地域のクリニックとして、救急車で運ばれるほどではない方や、午後の受診を望まれる方の受け皿になれたらと考えています。

先生は、片頭痛の予防や治療にも力を入れていらっしゃるとか。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック2

片頭痛で悩まれている方は、頭痛が起こった時に痛みを止めるための薬と、普段から頭痛を起こりにくくするための予防薬があります。予防薬には飲み薬と近年新しく出た注射薬があり、後者の抗CGRP抗体製剤の注射薬は2021年から保険診療で受けていただけるようになりました。当院では、これを導入しています。具体的には、3種類のCGRP関連抗体薬から患者さんの体質や生活習慣に合ったものを選んでいただき、月に1度投与するというものです。片頭痛の予防を目的とした注射薬があることをまだご存じない方も多いので、日頃からお悩みの方はまずご相談いただけたら。今まで内服の予防薬では効果が出にくかったとしても、新しい注射薬が適していることは多いです。また、当院では頭痛の原因となる病気についてもアドバイスしています。お若い方の頭痛の中には、重篤な病気に由来するものもありますので、そうした疾患を早期に発見したいですね。

CTなどの検査機器を活用し、迅速な診断を心がける

専門的な検査機器を備えていらっしゃいますね。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック3

開業にあたり、MRIよりCTを優先して設置しようと考えていました。というのもCTはMRIほどの診断能力がない一方で、緊急処置が必要な脳卒中や頭の外傷などに対しては、CTのほうが感度がいいといえるからです。また、MRIは検査に時間がかかりますが、CTは数十秒で検査が終わり、早く結果を出せます。急性期の脳梗塞でも、画像の調整の仕方によってはスクリーニングができるという点もあり、迅速な診断に役立つCTを設置しました。MRI検査が必要な場合は、三重中央医療センターや七栗記念病院などをご紹介しますのでご安心ください。ほかにも、頸動脈エコー検査を実施しています。脳卒中を患った後は、頸動脈が細くなったり硬くなったりすることが多いため、頸動脈の状態を定期的に診る検査がとても重要なのです。

ほかにクリニックの特色はありますか?

私の専門は脳卒中ではありますが、脊椎・脊髄の臨床経験も積んできました。桑名市総合医療センターにいた頃には、脳神経外科が脊椎・脊髄の手術に対応しており、私と上司でほぼ全例の手術を行ったものです。当院でも、その知識と経験を生かしていきたいと思っています。また、手足のしびれを訴える方も多いのですが、脳から来ているのか、脊椎・脊髄から来ているのか、手足の抹消神経に由来するのかを診るため脈波検査も行っています。

治療方針やモットーをお聞かせください。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック4

肩凝りや腰痛など、頭痛の原因となるような病気を根本から解決し、普段日常生活が送りにくいとう状況を解決したいと思っています。当院の特徴としてはレクチャーするだけでなく、この場所で一緒にストレッチや運動を実践しているということです。肩凝りに悩まれている方の多くは一般的に運動を勧められると思いますが、実際にどんな運動をどのくらいの頻度でしたらいいのかわからないというケースも少なくありません。そこで、当院では実際に患部を触り、今はどこの筋肉が成長しているのかなど、具体的にご説明するようにしています。常に心がけているのは、余裕を持って患者さんと接することです。医師に余裕がなく対応がおろそかになると、患者さんは余計に不安になってしまいますから、そうしたことが極力ないよう心に留めてきました。患者さんのお話をよく聞いて、診療のヒントを見逃さないことも大切です。

大規模病院での経験を生かし、多様な相談に対応

医師をめざされたきっかけについて教えてください。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック5

高校生の時に、地元の駅前で交通事故を目撃したことがあったのです。その時は、小学生の男の子が大腿部から出血して泣き叫んでいて、周囲の人はおろおろと立ち尽くしていたように思います。とっさに私は、自分のしていたベルトで止血をしようとその子のもとへ駆け寄り、救急隊の人が来るまでそばにいました。当時、将来の具体的な夢は特になかったのですが、その経験を通して、緊急事態が起きた際に何かできる人間でありたいと強く感じたのです。そこから、医師の道に進むことを考え始めました。家族や親戚には一人も医師がいませんが、子どもの頃、体が弱くよく病院にかかっていたことも、医療を身近に感じた理由の一つかもしれません。

脳神経外科を選択したのはどのような理由ですか?

最初は小児科の医師をめざしていたのですが、初期研修でさまざまな科を回った際、現在の恩師に出会ったことが進路の決め手になりました。恩師は脳神経外科の直接の指導医だったのですが、臨床の説明が理路整然としていてとてもわかりやすく、研究にも熱心で、何より人柄に惹かれました。もともと救急科や脳神経外科に憧れていましたし、その恩師が「最後まで一人前に育てるから来ないか」と声をかけてくださったので、脳神経外科に進むことを決めたのです。恩師には脳神経外科の医師として、事前準備がいかに重要かということを教わりました。手術ならば術前に約9割勝負が決まるという考え方です。術中に起こり得るトラブルを想定して、それらに対応できる引き出しを多く持つことが大切だと学びました。

今後の展望や読者へのメッセージをいただけますか。

古川和博院長 ひさい脳神経外科クリニック6

これまで病院で診てきた患者さんの中には、脳卒中を患った後に体が不自由になってしまったけれど、ご家族も高齢で車の運転ができず、退院後の定期的な通院が難しいといったケースが見られました。そういった患者さんに対応するために、今後は往診も行っていきたいですね。また、この近辺にはリハビリテーションのための施設が不足していますので、将来的には当院を増築して、リハビリを実施することも視野に入れています。メッセージとしましては、例えば頭痛ならば、痛みが重篤な病気につながるものなのかご自身で判断するのは難しいと思いますので、お一人で抱え込まず、まずご相談いただきたいということですね。肩凝りがなかなか良くならないといった場合も、他科とは違ったアプローチができるかもしれませんので気軽にいらしてください。

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