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阿部 哲也 院長の独自取材記事

阿部クリニック

(大阪市淀川区/十三駅)

最終更新日:2026/02/12

阿部哲也院長 阿部クリニック main

大阪市淀川区役所の斜め向かい。淀川通沿いに立つマンションの1階にある「阿部クリニック」。一見すればどこにでもある普通のクリニックだが、看板にアルコール相談の文字を掲げた、アルコール依存症を専門に診療するクリニックだ。院長の阿部哲也先生は、東布施辻本クリニックや新生会病院といったアルコール依存症の専門医療機関で経験を積み、依存症治療に並々ならぬ情熱を注ぐ精神科の医師。先人たちから学んだ知識や医療方針を独自に掘り下げながら、一人ひとりの患者に寄り添い、ともに考え、ともにゴールをめざすスタンスで診療に取り組んでいる。そんな阿部院長に、アルコール依存症とは何か、どのように患者と向き合っているのか、専門家ならではの意見をじっくり聞いてみた。

(取材日2019年5月21日)

アルコール依存症は、精神的な依存がポイント

この十三の地で開業した理由を教えてください。

阿部哲也院長 阿部クリニック1

まずは、人が集まりやすい立地ということを念頭に置きました。以前に勤めていた新生会病院では、患者さんの住所ごとに担当主治医を定めていて、北摂の阪急沿線は私が担当でした。新生会病院は入院がメインですから、退院後は患者さんをお住まいの近くの専門の診療所に送り出すわけです。その際に、このエリアは送り先がスムーズに見つからない印象があったんですね。アルコール依存症の方を受け入れてくれる医療機関はありますが、診察室から出てくる人も待合で座っている人もみんなアルコール依存症という、そこまで特化したクリニックはほぼありませんでしたから、それならば自分がやってみようと思い立ったのがきっかけです。

アルコール依存症になる原因は何ですか?

たくさんお酒を飲むから、長年飲み続けたからアルコール依存症になったというのは、私は違うと思っています。心理的に依存するがゆえに、10年でも15年でも、人がびっくりするような量を飲み続けられるわけです。量や飲酒期間などの程度問題ではなく、むしろ心理的・精神的な依存が形成されたスタート時点がポイントなんですね。それが最初からわかっていれば、その瞬間から飲酒を否定する必要があり、たとえ明確な酒害が出ていなくても断酒しなければなりません。逆に、単純にお酒を飲みすぎて肝臓や膵臓が悪くなったという人であれば、最低限、今より悪くならない量まで節酒しましょうという進め方もあるわけです。断酒と節酒は次元が全然違うんですね。そこを混同しないように注意すべきだと思います。

治療の方向づけはどのように行いますか?

阿部哲也院長 阿部クリニック2

依存というワードは、たとえ対象が人間であっても不健全だと思います。なのに、その依存対象がアルコールという物質や飲酒というプロセスであること自体、まさに孤立や孤独の表れなんです。こうした、アルコール依存症とは何かという問いに答えていくことが私たちの診療姿勢であり、患者さんなりに理解していくことが治療姿勢であるといえるでしょう。その時に重要なのは言葉のチョイスで、医療として正しい方向があったとしても、それをかみ砕いた上で、今のこの患者さんにはこう伝えたほうがいいとか、これを伝えたほうがいいとか、その選択こそがすべてではないかと思います。これまで私をご指導いただいたベテランの先生方から、まだまだ学びたいと思う部分はそこですね。

他人からのイメージが行動のきっかけに

有用な治療として集団での心理療法を掲げていますね。

阿部哲也院長 阿部クリニック3

大学時代の病院実習での話ですが、新生会病院の院内例会という集団治療の場に出席し、そこで大きな衝撃を受けました。約200人の参加者全員がアルコール依存症患者とその家族で、それぞれが好き勝手に発言をするだけなのですが、飲む理由づけばかりしている人、自分は本当に運が悪かったという人、1年間断酒できたという人もいれば、再飲酒から入院を繰り返す人もいて、次々に指名していくんですね。その人の人生、その人の将来のイメージがありありと浮かび、なんともいえない感覚に襲われました。国家試験の勉強はすべての問いに答えがありますが、ここでは自分自身で答えをつくっていく感覚です。患者さんにイメージを持って治療の見通しを立ててもらう意味で、集団治療というのは強烈なパワーを持っていると私は確信しています。

集団治療にはどのような変化が期待できるのでしょう?

集団治療は自分の理解というよりも、他人に対する理解を通じて、それが自分の理解につながっていくという特徴があります。集団治療で他人を見ることで、イメージや見通しが立ちやすいわけです。断酒もそうですが、飲酒という行動から治療的な行動に移していく時に、イメージできるかどうかが行動に移せるかどうかに大きく影響すると思います。治療教育として理屈で言葉を届けるより、目に見える形で、「ああなったら駄目だ」「あれこそがめざすべき姿だ」と、イメージさえ立てば勝手に体が動き出すような部分があるでしょう。集団治療の治療的な側面はイメージだけにあるわけではありませんが、まずはそこに着目いただければと思います。

依存症患者の家族はどのように向き合えばいいですか?

阿部哲也院長 阿部クリニック4

依存症という言葉自体はよく耳にするようになりましたが、アルコール依存症は文化に根づいていないし、教育も行われていない。そんな社会背景があります。私の高校時代、国語の先生が「人間の最小単位は個人ではなく家族である」と言っていましたが、もしそうであれば、本人が苦しんでいるのと同じぐらいの等価でご家族も苦しんでおられると思います。ご家族がご本人との対立姿勢を避け、アルコール依存症に対するより良い対応をしていただくためには、ご家族自身が治療の場に参加していただく必要もあるでしょう。ご本人が未受診でも、当院では有料の家族相談を診療時間外に予約制で受けつけています。ぜひ診察の場に足を運んでいただき、少しでも治療のイメージを持って心の安定を取り戻していただければと願います。

「治す」ではなく「寄り添う」、患者が主役の治療

精神科の医師をめざしたきっかけは?

阿部哲也院長 阿部クリニック5

父は歯科医師で開業医でした。その父のイメージが、ある意味憧れだったことが医療者になった大きな理由です。精神科を選択する以前の研修医時代に統合失調症を見ていると、私たちが当然だと思っている、自分が自分であるという意識や今生きている世界は昨日と今日で同じであるとか、当然として成立する部分が壊れていくんですね。その壊れ方にも一定の法則があるという、そんな学問にふれた時に、これはまたなんという世界だろうと思いました。精神科に興味を抱いたきっかけは、さきほどの新生会病院での院内例会でしたが、精神科の医師になりたいと思ったのはその時のインパクトからです。

依存症治療において重要なことは何ですか?

大事な視点はアルコールをやめることというよりも、飲酒が定着してしまっている生活を変えていくこと。それには、その背景にある、その方がどのような時間や空間、仲間の中で生活しているかが重要なんですね。これは以前に上司から教わったのですが、時間・空間・仲間の3つの「間」で3間(さんま)と読みます。この3つの間を治療的に変えることができれば、そもそも飲酒の必要のない状況につながると考えます。変えるなんて言うと治療側本位になってしまいますから、寄り添うという形ですね。アルコールをやめなくてもいいから、取りあえずここに来る。週1回からでも、ここへ顔を出すことで時間の使い方が変わりますし、いずれは断酒をめざす空間となり、待合室の全員がアルコールをやめていくための仲間になります。まずはそこからスタートし、少しずつ“これならできる”という治療的な行動を増やしていければいいのではないかと思います。

最後にアルコール依存症で悩む方に向けてメッセージをお願いします。

阿部哲也院長 阿部クリニック6

医療機関へ行くことは、すなわちアルコールをやめさせられることだと思っていることでしょう。断酒はこちらがさせるものではなくて、患者さん自身が決定するものです。誰しも自分自身が納得したことしか続かないでしょうから、大切なのは患者さん自身の主体性ですね。また、皆さん「病識」はなくても「病感」はあるはずです。何かがおかしいとか、違和感があるとか。まずは、そこから話していきましょう。依存症は人に対してSOSを出せない病気といわれています。それでアルコールという物質や飲酒というプロセスにSOSを出しているわけですね。それならば、いっそ私にSOSを発信してみてください。皆さんの病状安定とその先の自己実現に向けて、きっと寄り添っていけると信じています。

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