酒井 圭慧子 院長の独自取材記事
菊美台クリニック
(生駒郡平群町/東山駅)
最終更新日:2025/07/23

近鉄生駒線・東山駅から徒歩約5分、平群北公園を望む住宅街の一角に「菊美台クリニック」がある。内科に加えて腎臓内科を標榜しており、専門性の高い腎臓内科診療に対応。通院による透析治療を行う他、泌尿器疾患、循環器疾患、糖尿病などの生活習慣病も診療している。同院には、腎臓内科の医師として豊富な経験を持つ酒井圭慧子(たえこ)院長をはじめ、泌尿器科、循環器内科などの各分野に精通した医師が在籍。さらに看護師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士、医療事務スタッフがそろい、チームで地域の患者や家族を支えている。「地域の方が気軽に通い、集えるクリニックでありたい」と語る酒井院長に、同院の診療の特色や地域医療に対する思いなどを語ってもらった。
(取材日2025年4月17日)
患者の生涯に寄り添った診療を提供したい
医師をめざした理由は何ですか?

人の生涯に寄り添う仕事がしたいと考えていたからです。実家はお寺で、定期的にさまざまな行事があり、幅広い年齢の方が来る地域の交流の場となっていました。そうした環境で過ごしてきたので、「人生に寄り添いたい」という思いが自然と育まれたのでしょう。もともと医療に興味があったこともあり、患者さんの生涯に寄り添っていける医師をめざして金沢医科大学へ進みました。
ご経歴を教えてください。
医学部卒業後、親孝行も兼ねて地元の市民病院で初期研修を受けました。救急搬送が多い病院でかなりハードでしたが、活躍できる機会もあり、たくさんのことを学べましたね。研修修了後、倉敷の病院に勤めるうちに「患者さんの全身を診たい」と思うようになり、内科の領域で研鑽を積むことを決めました。内科の中でも腎臓内科を専門に選んだのは、慢性腎臓病の患者さんに寄り添って差し上げたいと思ったからです。慢性腎臓病は生活に制限があり管理も大変ですので、お一人お一人の生活背景を踏まえて診ていく必要がありますから。その後、奈良県立医科大学附属病院では総合診療科に勤務し、幅広くさまざまな症状の患者さんに対応しました。
現在、病院ではなくクリニックでの診療を選ばれたのはなぜですか?

医師をめざした当初の気持ちを優先したからです。「地域の患者さんのそばで長く診たい」という思いが強かったんですね。大規模な病院では、患者さんと接するのは入院期間のみでしょう。一方、小規模な医療機関なら、病院に入院される前はもちろん、退院されてからも生活に密着した診療を提供していけると思いました。大学病院勤務の後は、地域の小規模な病院やクリニックに勤務して経験を積み、私の専門領域を生かせる当院を紹介してもらいました。そして2023年から院長に就任し、診療を始めたという経緯です。
患者さんと接する際の心がけを教えてください。
患者さんのお考えを丁寧に聞き出すことを大切にしています。患者さんにはそれぞれ違う生活背景があるものです。例えば経済状態やお仕事の都合、介護が必要なご家族がいるといったことですね。それを理解した上で、ご本人の食生活が乱れる理由や、治療の希望などをお話ししながら確認し、治療方針を決めることを心がけています。お話を踏まえ、患者さんが現実的に続けられる治療方法を考えることも重要です。しかし時には、私が「良い」と思う治療であっても、患者さんにとっては押しつけのように感じてしまう場合もあると思うのです。だからこそ、患者さんが不快と感じない距離感を保ちながらも、どうやってその距離を詰めていけば良いのかを常に考えています。
病気の早期発見・早期の治療開始をめざす
御院にはどのような患者さんが多く来られますか?

70代以上のご高齢の方が中心です。最近は発熱などで受診される若い方も増えてきました。私が腎臓内科の医師で、当院には透析設備があるため、地域の方々は当院に「通院で透析治療を行うクリニック」というイメージを持っていると思います。しかし、実際の診療では、透析に至らないように慢性腎臓病をコントロールしていくことに力を注いでいます。腎臓の働きに問題があると、心不全の兆候である呼吸困難や、下肢のむくみ、食欲不振、全身倦怠感といった症状が現れます。こうした症状が現れるとすでに病気が進行している可能性が高いため、より早い段階で発見して必要な治療を開始することが大切です。
早期発見のためにどのようなことに気をつけるべきですか?
やはり健診が大切です。実際に、血液検査や尿検査の結果、心臓に何らか問題があると指摘されて受診される方が多いですね。当院では、特定健診にも対応しています。行政からの案内が届く時期になると、患者さんに検査したか確認するようにしているんです。例えばご高齢の方は、健診の案内に気づかない場合や、予約方法がわからない場合もあるでしょう。ですから、院内でも積極的に健診を勧め、受診方法のご案内もします。早期発見のため受診率向上に努めたいですね。
治療の進め方を教えてください。

慢性腎臓病の場合は、まず血液検査、尿検査、腹部超音波(エコー)検査などを行います。原因と病気の進行度合いを調べるためです。また合併症のチェックのために足の血管の硬さを調べたり、心臓の超音波検査を行ったりすることもあります。原因を見極めるとともに、やはり患者さんの生活背景などを正しく理解することは欠かせません。服用しやすいお薬の処方など、その方に適した治療法を一緒に考えていくためです。また当院では、管理栄養士による食事指導もしていますよ。他にも、運動方法などをご案内するために、症状別のオリジナル冊子をお渡ししています。ちなみに冊子のファイルはポケットつきで、検査結果などを挟み込めて便利ですよ。
通院による透析治療も提供していますね。
事前に病院で治療を開始するための処置を受けていただく必要がありますが、当院で透析治療が可能です。通院の際には、送迎サービスも実施していますよ。ご自身で運転しての通院は、負担が大きいでしょうから。ご高齢の方の中には、透析が必要になると「もう先が長くない」と考える方もおられますが、透析をしながら元気に過ごし、旅行に行くことも望めます。また、慢性腎臓病の段階で治療や生活改善に取り組むことが、万が一透析が必要になったときの状態の安定維持にも重要です。そのことも多くの方に知っていただきたいですね。
医療を身近に感じられる場所に
一般内科にも広く対応しておられますね。

高血圧症、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の方も多くいらっしゃいます。また、予防医療の観点からインフルエンザや肺炎球菌、帯状疱疹、子宮頸がんなどのワクチン接種にも積極的に取り組んでいます。私の他にも、循環器内科、泌尿器科の医師などが診療を担当しており、患者さんの症状や疾患に適した医師が対応できるのが特徴です。当院には長く勤めている看護師や事務スタッフが多く、患者さんと医師との相性なども考えながら、その方に適した医師につなげるよう配慮してくれています。患者さんの情報にも詳しく、ご家族構成など診療に役立つ情報を提供してもらえて本当に助かっています。
今後の目標や展望を聞かせてください。
健康についての正しい情報を収集できる場として「健康カフェ」の取り組みを始める予定です。地域の方が診察時間内ではなかなか聞けないことを尋ねたり、雑談や交流を楽しんだりしていただけたら、と。2025年5月に1回目を予定しており、今後は2ヵ月に1度をめどに開催したいと考えています。まずは患者さんがどんな情報を知りたいのか、どんな場を望んでおられるのかを知りたいですね。地域のクリニックとして私たちにできることを患者さんと一緒に考えていくつもりです。
先生のリフレッシュ方法はありますか?

掃除です。無心で取り組めるところが魅力ですね。ショッピングやレジャーもその時は楽しいですが、掃除は気分もリフレッシュできる上に、その後も気持ち良く過ごせます。ストレスがたまったり、嫌なことがあったりした時は、無我夢中で掃除します(笑)。
読者や地域の方にメッセージをお願いします。
患者さんが医療を身近に感じられる場所、人生の一部と思えるようなクリニックでありたいです。例えば昨年は、透析患者さんを対象に、ご家族も参加可能なクリスマス会を開催しました。患者さん同士の交流が生まれ、良い時間になりました。病院やクリニックは行きたくない場所というイメージが強いでしょう。しかし、ここでの時間がその方の人生をより豊かにできるように、今後もスタッフと力を合わせて取り組んでいきます。