馬上 崇 院長の独自取材記事
うまがみこども歯科
(宇都宮市/東武宇都宮駅)
最終更新日:2025/06/13

「子どもが泣いて暴れるので歯科治療を受けられない……」。そんな悩みを抱えている保護者は結構多いのではないだろうか。東武宇都宮駅から車で約6分の所にある「うまがみこども歯科」は、そんな子供たちを診る「最後の砦」として日々対応にあたっている、小児専門の歯科クリニックだ。「すべての子は治療を受けられると思って接する」を信条とする馬上崇院長。治療を受けられることは子どもの自信や成長にもつながると、不安なく治療を受けられるようさまざまな工夫を凝らしている。馬上院長に、診療の工夫や子どもに向き合うにあたり大事にしていることなどについて尋ねた。
(取材日2025年5月13日)
泣いて治療が受けられない子を診る「最後の砦」
小児歯科専門のクリニックなのですね。

僕は歯学部を卒業してすぐ静岡の一般歯科医院に入ったのですが、ご縁があって、すぐ近くの小児歯科専門クリニックでも、非常勤で働かせてもらっていたんです。そのクリニックの先生にとても感銘を受け、「自分で歯科医院を持つならやっぱり小児歯科をやりたい」と思えたので、専門クリニックになりました。何より惹かれたのは、「子どもの乳歯は生え替わるから、虫歯はとりあえず削って埋めておく」という治療を良しとせず、診療が難しい子にもしっかり対応することで、子どもたちが正しい治療を受けられる環境をつくっておられたことです。「泣いちゃう子だから治療できないではなく、すべての子が治療できると思って接する」という考え方に感銘を受け、また実際に子どもを診ていく中で、子どもたちと話すのは面白いなと感じたことが、僕の原点になっています。
開業当時から、大事にしていることは変わらないと。
ええ。「すべての子どもが治療を受けられると思って接する」は、開業当初から今に至るまで、一番大事にしているものです。歯科医院で泣き叫んでしまうなどで治療が受けられないと、虫歯が進行してしまうことが少なくありません。そんな、なかなか治療が受けられない子たちがやって来て、しっかり治療を受けて、ニコニコで帰っていける場所。うちはそんな場所でありたいと思っています。スタッフには、「最後の砦」だと言っていますね。今通ってくださっている患者さんには、他の先生からの紹介や、他ではうまく治療できなくて……と来られた方も多いです。
待合室も大人向けの歯科医院とはだいぶ違っています。

うちは小児歯科専門で大人の患者さんは来ないので、待合室は子どもがリラックスして過ごせるお家のリビングのイメージです。冬場は床暖房が入ります。走り回るにはスリッパは邪魔ですし、本当にお家のように感じてほしいので、裸足で過ごせるようになっています。以前勤めていた歯科医院の待合室と同じコンセプトで、同じ設計士さんに設計してもらいました。設備のほうも子どもの診療に特化しているので、診療スペースはユニット同士の仕切りがない、診療台にリクライニング機能がついていない、うがいをする台がないなど、大人も診る歯科医院とは違う所があります。
「1人で治療ができた!」が子どもの自信になる
基本的に3歳以上の子は1人で診療室に入るのですね。なぜ3歳からなのですか?

個人差はありますが3歳頃は、それまではお母さんと一緒が当たり前だったところから、自立心が芽生えてくる時期。そんな時期に、何か「1人でできた!」という経験をすると、それが自信になってすごく成長できるんです。例えば、今までお母さんにべったり甘えていた子が、1人で診療を受けられてから、お家でも歯磨きができるようになったりとか。そんなふうに成長する背中を一押しできたらと、3歳以上は1人で入ってもらうようにしています。幼稚園や保育園と同じで、最初は泣いちゃって入れない子、お母さんと離れる瞬間は泣いちゃうけれど入ったら落ち着く子などなど、いろんな子がいますね。もちろん初回からいきなり治療しますよではなく、しっかりコミュニケーションを取ることから始めます。
小さな子も不安を感じずに治療を受けられるよう、どんな工夫をされていますか?
診療では最初に、「今日はお姉さんと歯磨きをして、お口の中を見て、歯磨きをしたのをお母さんに見せてあげて帰るんだよ」など、今日は何をするのかをお話ししています。大人なら歯科医院で何をするのかある程度予測がつきますけど、子どもはそういう予測はできないので、1から10まで全部伝えることが大切。本人が納得したら、「じゃあ、お椅子に乗ろうね」「エプロンしようね」「口開けようね」と一つ一つ進めていきます。また、本人が治療に参加してくれる、例えば「虫歯を治療してもらった」じゃなく、「自分で虫歯をやっつけた!」と思えることもとても大事なので、そう感じられるように会話を工夫したりもしています。そうして段階的にできることを増やしてあげることで、全身麻酔でないと治療を受けられなかったような子が、一般の局所麻酔で受けられるようになり、全部の虫歯をしっかり治療し帰っていける。それが、僕には一番うれしいことですね。
子どもたちに向き合うにあたって大事にされていることも教えてください。

やっぱり、丁寧にコミュニケーションを取ることです。一方的に「ああやって、こうやって」と押しつけるのではなく、今日は何をするとか、何のためにするかとかしっかり話して、その子に納得してもらう。そうして信頼関係をつくった上で治療に入っていくことを大事にしています。それから、楽しく治療を受けられる雰囲気づくりも大切にしています。治療中は、歯科医師とスタッフ、それから治療を受ける子の3人でおしゃべりするんですよ。話題は「ゴールデンウィークどこに行ったの?」とか、治療とは全然関係ないことですが、おしゃべりにうまく子どもを巻き込んで。会話に参加しているうちに「あれ? 治療終わったの?」となるように、話の引き出しはいろいろ用意しています(笑)。あとは、子どもたちは大人と違って反応が小さいと気づかないことがあるので、「着ぐるみキャラのようなオーバーリアクションを」とは、スタッフたちにもよく伝えています。
顎の正しい成長につながる矯正
矯正にも力を入れられています。

子どもの顎が正しく成長するかどうかには、遺伝要素よりずっと大きな要素として、口の周りの筋肉の使い方や舌の位置が正しくできているか、鼻呼吸ができているかが影響を与えます。筋肉の使い方や舌の位置が間違っていると、本来の正しい成長とちがった成長をしてしまうので、正しい筋機能のトレーニングなどを行います。ワイヤーとブラケットで結果を治していきましょう、ではなく、歯並びが悪くなる原因にアプローチしていきましょう、という考え方です。それは、成長期だからこそできるものです。
今後の展望についても伺います。
2018年の開業から診療を続けてきて、治療を受けられるようになった子どもたちも増え、スタッフのスキルも磨かれてきたと感じているところです。ありがたいことにたくさん患者さんが来てくださって、予約が取りにくくなってしまっているのですが、小児歯科は子どもたちの成長と深く関わるものなので、新規の患者さんの受け入れを止めることはできません。とても頑張ってくれているスタッフたちにたくさん支えられつつ、治療を受けられない子たちを少しでも減らすことを続けていきたいと思います。ただ、僕が一生診療を続けられるわけではないので、将来的にはこのやり方を継承して、僕がいなくても同じように医院を回していける環境をつくってほしいなとスタッフにはよく言っています。治療が受けられない子の受け口がなくなってしまい、また困る子どもたちが増えてしまうのは嫌なので、長いスパンでも診療は続けられる体制を整えていきたいですね。
最後に、読者に向けて一言メッセージをお願いします。

治療が受けられない子、治療を受けたけれどまた虫歯ができてしまう子を減らしたいとの思いで、日々診療に臨んでいます。お子さんの歯や口腔内のことで困ることがあれば、ぜひ相談に来てください。少しでもお役に立てればと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/16万5000円~