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新井 雄亮 院長の独自取材記事

にじいろファミリークリニック

(港区/乃木坂駅)

最終更新日:2020/04/01

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都心でありながら、道を一本奥に入れば古くからある家が立ち並ぶ住宅地が広がる港区に、訪問診療を主体とするクリニックがある。その名も「にじいろファミリークリニック」。地方の中小規模の病院で経験を積んできた新井雄亮院長は、訪問診療を「地域医療の究極のかたち」だと語る。一般的にはまだまだ認知度が低い訪問診療だが、そのニーズは確実にあるという手応えを感じているそうだ。新井院長に、訪問診療できることやメリット、今後の展望までたっぷりと語ってもらった。
(取材日2018年9月20日)

外来では気づけない生活の背景が見えてくる

なぜ訪問診療が主体のクリニックにしたのですか?

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通常の外来、特に病院の外来ですと、患者さんの人数が多くて、かなり長くお待たせしてしまうのに少しの時間しか診られない、というのがよくあるケースだと思います。僕は新潟の大学を卒業後、新潟にある中小規模の病院を中心に、地域の医療に携わってきました。入院から退院をして自宅に戻っていくところまでを診るような医療機関に勤務してきましたので、患者さんが元の生活に帰るところまで診たいという想いがあったんです。そこで埼玉のクリニックに移り、訪問診療に従事しました。さまざまな経験を積み、今ではこれが自分の強みを生かせる分野だと思っています。開業を考えた時も、訪問診療なら、お話を伺ってじっくりと診療し、お互いに納得がいくようなかたちでより良い診療ができるのかなと考えました。

家に行けば、患者の生活の背景をそのまま見ることができますね。

はい、ダイレクトに見えてきます。疾患は生活と関わりが深いので、お宅に実際に伺って、どんな生活を送っているのかをこの目で見ることができるのは大きいです。僕はもともと糖尿病を中心に診療をしてきましたが、病院では糖尿病で通院している患者さんのお宅に伺って、食事の内容や仕事をしている様子など、実際にどんな生活を送っているのかを見る機会はありません。教育入院のように、患者さんに理想的な生活を体験していただく機会はありますが、その反対に医師が患者さんのお宅を拝見する機会はない。でも在宅医療なら、病院の外来とはかなり違うかたちで見えるものがあるでしょう。訪問診療は、可能性が広がっている分野だと思います。ある意味では、病院よりもできることが多いのではないでしょうか。

訪問診療のメリットを教えてください。

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世間には、訪問診療ができることは病院よりも少ない、と思っていらっしゃる方のほうが多いのでしょうね。もちろん、検査などでできることが限られている面もあるのですが、その一方で、病院では見えてこないものが見られます。僕も病院に勤めていた頃、患者さんが退院される時にその方の生活をある程度想像しながら、どういうふうにしたら患者さんが家で暮らしていけるかということを組み立てていたつもりです。でもそれはしょせん想像でしかない。実際に家に帰ってみたら、僕が想像していたのとは違うところがいっぱいあるでしょう。医療という側面で見たら、訪問医療のほうが、より現実に即したものを組み立てて提供していけると思います。

他職種といかに連携できるかが鍵

何らかのサービスを提供している他業種と提携するのでしょうか。

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他業種と連携することが大切になってくる分野だと思います。実際に地域で訪問診療をさせていただいていると、どのような人たちがその患者さんに関わっているのかがわかりづらいんです。ケアマネジャーは誰なのか、訪問看護師さんは誰なのかが、場合によってはすごく見えづらかったり、連携がしづらかったりということもありますね。病院で訪問診療に携わっていた頃は、他職種が連携しながらスムーズな流れで患者さんをサポートしてきましたが、これを今後の訪問診療の現場でも実現していきたいですね。それには、訪問看護ステーションや地域包括センターをはじめとして、他業種の方々と顔の見える連携をつくっていくことが重要だと思っています。今、ごあいさつに伺ったり、連携のご相談をさせていただいたりしているところです。

訪問診療を志したきっかけはありますか?

高校生の頃、医師を志そうと決めた時に、最先端の医療を提供する医師をかっこいいなと思う一方で、地域医療に関わる町の開業医にも憧れていました。地域の患者さんを家族ぐるみで診ているような先生ですね。そして訪問診療は、かかりつけ医としての完成形、地域医療の究極のかたちなのではないかなと思うんです。病院に勤めていた頃、外来で糖尿や循環器の診療をしていたこともあるのですが、糖尿病の方や心不全の方は、予約の時間に来院されなくて、その翌週に現れて「先週は体調が悪かったから来られなかったんです」とおっしゃるんですよ。気持ちはわかりますが、これでは本末転倒です。そういう患者さんにこそ、訪問診療が生きてくると思います。少しずつではありますが、訪問診療のニーズは確実にあるなという手応えを感じています。

訪問診療ではどんなことができるのでしょうか。

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血圧測定器、注射器は基本として、検査ができる機器もある程度、持って行きますので、皆さんが考えているよりもいろいろなことができますよ。点滴を維持しながらの診療も可能です。地方の病院で地域医療を中心に経験を積んできましたので、専門の先生に相談しながら、どんな病気や症状でも診られるようにトレーニングを積んできました。内科の中では、あえて言えば糖尿病の症例数が多いのが僕の強みでしょうか。足の壊疽(えそ)や傷、長時間寝ていることで皮膚がこすれて生じる褥瘡も診ます。訪問診療でも、病院で行われている医療に近いところまで、かなり機能的に医療を提供できると考えています。もちろん僕の力だけではできないので、他職種との連携やご家族のご協力がどれだけ得られるかにもかかってきますね。

地域の医療機関が一つのチームになれたら

在宅医療を選ばれたご家族に迷いはないのでしょうか。

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患者さんを在宅で診ようと決意されたご家族が、どこかのタイミングでくじけてしまう、ということはよくあります。特に、患者さんの体調が悪くなったときですね。ご家族としては心配になりますし、病院に行ったほうが良いのだろうかという思いが強くなってしまうようで、そのたびに心苦しく感じます。僕としては、せっかく在宅医療を選択されたのだから、「大丈夫ですよ。在宅でできることは結構ありますから、それをしっかりやっていきましょう」とサポートしたい。とはいえ、在宅で診ることに強くこだわる必要はないとも思っています。ご家族や患者さんご本人が希望されるならば病院という選択肢があって良いし、選択肢の幅はいつも広いほうが良いと考えています。

ご家族がくじけてしまいそうになったとき、どのように支えていますか?

くじけてしまう理由の多くを占めるのは、在宅医療があまりよく知られていないことなんですね。ですので、在宅でできることを一つ一つ説明します。そして、患者さんやご家族のお話を黙って聞く時間が以前よりも増えました。お話を伺っていると、何とも言ってあげられないような時もあるんですよね。そういう場合は、黙ってただ受け止めます。今考えると、医師になりたての頃は、僕ばかりが話し過ぎていたように思います。伝えたいことがいくらでもあるので、患者さんがうんざりしているんだろうなぁと思いながらも、止められませんでした。今は、自分から話すというよりも、患者さんの言葉を待っているような感じですね。

今後の目標を教えてください。

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現状では、訪問診療を本当に必要としている患者さんが隠れてしまっているように感じています。その主な原因は、訪問診療の認知度がまだ低いことや、訪問診療への不安を抱いている方が多いことにあると考えています。でも、草の根的な活動で良い医療を提供していけば、「訪問診療はここまでやってくれるから大丈夫だよ」と周知してくれる患者さんやそのご家族が増えていって、訪問医療がもっと広まっていくでしょう。将来的には、地域の医療機関すべてがチームとして連携できる仕組みをつくって、訪問診療が望ましい患者さんを地域全体で支えていけたらいいですよね。訪問診療は生活を支えるシステムづくりのきっかけになり得るのではないかと思います。

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