山地 英孝 先生の独自取材記事
高松e眼科
(高松市/伏石駅)
最終更新日:2024/02/29

ことでん琴平線・伏石駅から3分ほど歩くと見えてくる、モノトーンの洗練された建物。それが、中四国の基幹病院で腕を磨いた山地英孝(やまじ・ひでたか)先生が代表を務める、「高松e眼科」だ。開業は2018年。院長の田中茂登(たなか・しげと)先生とともに診療を開始し、今年で6周年目を迎える。山地先生は網膜硝子体や難治性白内障などの眼科手術を、田中先生は眼科疾患の豊富な診療経験を武器に、一般外来を担当。気軽に通える「目のかかりつけ医」でありながらも、大学病院レベルの検査・治療機器を導入し、専門性の高い医療を提供している点は患者にとっても大きな魅力だろう。「患者さんに、笑顔で帰ってもらえるクリニックをめざしている」と優しくほほ笑む山地先生に、同院の診療内容や、医療に懸ける想いを語ってもらった。
(取材日2023年12月27日)
豊富な手術経験を地域に還元
先生が医師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか。

実は、あまり良いきっかけではありません。高校3年生の時に、花粉症で近所の耳鼻咽喉科に通ったのですが、その時の先生が少々高圧的な方で……。自分だったら、もっと親しみやすい医師になる。医師になって、自分自身で治療をすることができたら、それが一番良いのではないか。そんなふうに考えたのです。ちょっと恥ずかしいですね。岡山大学の医学部を卒業した後は社会保険広島市民病院(現・広島市立広島市民病院)に勤務し、救急医療の現場で2年間、研鑽を積みました。専門分野の決定は、その後のことです。最初に興味を持ったのは外科領域でしたが、心臓の手術などは、大規模病院でないと実施できません。いずれ開業する可能性を考えた時に、眼科領域であれば、小規模のクリニックでも大学病院と同じような手術や治療ができるのではないかと思い、岡山大学医学部附属病院(現・岡山大学病院)の眼科学教室に入局しました。
勤務医時代の思い出はありますか?
病院にいた頃は、当直が大変でしたね。朝から外来で手術をしなければいけないけれど、救急の患者さんが来られればバトンタッチもなかなかできず、結果、休みなく働くという状況でした。実際に治療にあたっていく中では、忘れられないような出来事も。例えば、目が不自由であまり動けない方であれば、事故に遭ったり、ケガをしたりすることも少ないでしょう。そういう方々に向けて、目の治療を行ったら? 眼科医は、患者さんの事故やケガのリスクにつながる可能性まで考えながら、治療を進めなくてはならない。この事実と、QOL(生活の質)などをトータルで考えた時に、どんな選択肢を掲示することが適切なのか。私は病院での勤務を経て、常にそれを考えるようになりました。
手術を強みにしていると伺いました。

岡山大学病院の師匠に憧れたことが、眼科手術に携わるようになったきっかけです。先生のように働き、先生のように手術をしたい。そんな師に出会えたことが、今につながっていると思います。香川県に戻った後は、栗林病院、KKR高松病院、三豊総合病院と県内各地の基幹病院勤務を経て香川大学に移ったのですが、ちょうど師匠も教授として香川大学に来られたため、師匠のもとで引き続き修業し、師匠が専門としていた網膜硝子体手術を中心として、気づけば数多くの手術に携わっていました。網膜硝子体手術は、糖尿病網膜症や網膜剥離など、失明に直結するような疾患を発症した際に行われるものです。できるだけ早く治療をして、視力の回復をめざすことが重要になります。患者さんの視力を、いかに生活に支障がないレベルにまで戻せるかという点で常に実力が問われる厳しさはありますが、だからこそ、大きなやりがいを感じてもいます。
大学病院レベルの治療機器を備える
先生は今も、三豊市の白井病院で副院長を務めていらっしゃるそうですね。

今年の3月に副院長職は後任の医師に譲り、当院の診療に専念する予定ではありますが、2013年から白井病院の勤務医を務めています。当院を開業しようと考え始めたのも、眼科専門病院である白井病院での勤務がきっかけでした。45歳頃からでしょうか。先進の機械や道具を自らそろえ、自由に治療や手術ができる体制を整えたいと考えるようになったのです。しかし、開業をするためには、私が執刀している間に、信頼して外来診療を任せられる医師が必要でした。そこで、香川大学でともに時間を過ごした田中茂登先生とタッグを組み、開業を決断した次第です。この立地に決めたのは、アクセスの良さが一番の理由です。お車であれば、国道11号線・高松東バイパスから一本で来られますし、今は伏石駅も完成しましたから、電車で来院される方にとっても利便性は高いと思います。
大学病院レベルの検査・治療機器を導入されていると伺いました。
検査機器の一例を挙げれば、造影剤や散瞳剤を使わずに、超広角の血管造影ができる装置を導入しています。手術器具についても、顕微鏡をのぞくのではなく、デジタル処理をした3D画像を用いて執刀する機器を導入するなど、設備には十分に投資しています。高齢の患者さんを見据えて院内はバリアフリーとし、エレベーターも導入しています。また、手術室に関しては先々のことを考えて、2人の医師が、それぞれの手術を同時に行えるくらいの広さに造りました。現在は私一人が執刀にあたっていますが、手術のニーズは増えていますし、機械が増えれば手狭にもなっていきますので、将来的にはさらに医師を採用して、2人の医師で手術に対応できる体制を築ければと考えています。
患者さんは、どのような方々が来院されているのでしょうか。

当院は幹線道路沿いにあるため、営業職をされているビジネスパーソンの方が来院されるケースが少なくありません。とはいえ、やはり加齢に伴う「見えにくさ」を感じ始めた高齢の方が多いですね。あとは、手術が必要な症状を抱えた方が、近隣の医療機関から紹介を受けて来院することも多いです。私の専門外となる眼瞼下垂症の手術などに関しては、専門の先生を招いて対応してもらっており、目の負担が少ない眼科手術であれば、可能な限り当院で対応できる体制を整えています。手術はすべて日帰りです。全身麻酔の必要があり、目や体の負担が大きく入院が必要な手術などに関しては、白井病院をはじめとした提携病院をご紹介させていただきます。
専門的な医療を継続して提供できる体制を整備
クリニック名がわかりやすく、印象的です。

高松e眼科の「e」は、「Everlasting Eye Expert」。「継続して専門医療を届ける」という意味が込められています。そのためには、他の診療科との連携も重要です。例えば糖尿病網膜症の場合は、内科のクリニックで適切に糖尿病の管理をすることが必要になってきます。「目が見えづらい」というお悩みで来られた患者さんの背景に、こうした基礎疾患が存在することは少なくありません。眼科の手術によって形だけ整えられたとしても、糖尿病のほうが悪化していれば予後の改善が見込めなくなりますので、そうした場合は専門のクリニックをご紹介するようにしています。
先生の診療におけるモットーは何でしょうか。
患者さんに、楽しい気持ちで帰っていただけるのが一番です。今は看護師4人、視能訓練士4人、医療事務6人、計14人のチームで診療にあたっていますが、スタッフには常日頃から、「患者さんに笑顔で帰ってもらえるクリニックをめざしましょう」と伝えています。難しい技術を要する手術であっても、できるだけ患者さんの負担は最小限に。手術を受けた患者さんには、後から「あれ、そんなに難しい手術だったの?」と言っていただくことが理想です。もちろん、患者さんの理解度に見合った、わかりやすい説明も心がけていますよ。
最後にこれからの展望と、読者へのメッセージをお願いします。

私も実感しているのですが、老眼はとても不便です。日々の生活の中で、目の見えにくさに苦労されている方は多いでしょう。しかし、これは医科全体に言えることだと思いますが、治療法の研究は日進月歩で進んでいます。「多焦点眼内レンズ」といって、遠方と近方のどちらにもピントが合うレンズを眼内に入れる治療法も確立されています。そうした先進の治療への注力も検討しながら、これからも患者さん目線を大切に、大学病院と同等の手術を日帰りで達成してまいります。お困りの方は、ぜひ一度ご相談にいらしてください。