井門 ゆかり 院長の独自取材記事
井門ゆかり脳神経内科クリニック
(広島市東区/牛田駅)
最終更新日:2021/10/12
アストラムラインの牛田駅から徒歩4分の「井門ゆかり脳神経内科クリニック」は2018年開業。院長の井門ゆかり先生は、脳神経内科の専門家として豊富な臨床経験を持つベテランドクターだ。認知症や認知機能障害の疑いを評価するためのテストを独自に考案し、全国各地のさまざまな講演会や研修会などで講師も務めている井門院長。同院においても「幸せな認知症医療」をテーマに掲げ、認知症の早期発見と適切な早期の治療開始に尽力している。そんな井門院長に、診療に対する思いをたっぷりと語ってもらった。
(取材日2021年7月15日)
認知症治療のエキスパートとして早期発見に注力
先生が、脳神経内科の医師を志したきっかけは何でしょうか?
子どもの頃に母から、「将来は何か資格を持って働いたほうがいい」と言われていて、それなら女性が仕事を長く続けていくという面でも、医師という資格が良いのではと考えました。昔から何か人の役に立ちたい、人を助ける仕事がしたいと思っていたことも、医師を志したきっかけの一つだと思います。脳神経内科を専門に選んだ理由は、もともと脳に興味があったからです。精神科に進むことも考えたのですが、脳神経内科のほうがより科学的な感じがあって魅力を感じました。ALS(筋萎縮性側索硬化症)やパーキンソン病、多発性硬化症など、難病と呼ばれる病気で困っている方が多い一方で、解明されていないことがとても多い分野ですので、そういう部分で何か役に立ちたいと思ったのです。
勤務医時代には認知症治療の分野でも研鑽を積まれたと伺いました。
2010年、メープルヒル病院に新設された広島県西部認知症疾患医療センターで、8年間センター長を務めました。2013年には、認知症や認知機能障害の疑いを評価する際に、参考にするためのテストを独自に開発し、翌年には論文として発表しました。このテストは所要時間が3分ほどで、しかも特別な道具は必要ありません。場所や時間を選ばずにどこでも簡単に行えるのが特徴です。また、勤務医時代からさまざまな地域で、認知症の講演会や研修会などの講師を務めてきました。今は新型コロナウイルス感染症流行の影響もあって、なかなか自由に移動ができませんが、オンラインを活用した講演会なども行っています。
開業に際し、この場所を選んだ理由を教えていただけますか?
私はもともと北海道で生まれたのですが、小学生の時に引っ越してからはほとんど広島で暮らしています。この場所で開業しようと思ったのは、私の自宅から近いということと、アストラムラインの牛田駅からもバス停からも近く、広島市内、安佐北区、安佐南区からもアクセスしやすいというのが理由です。また、このビルの2階から4階は駐車場になっていて、車で来院された方は無料で利用していただくこともできます。当院の患者さんには、広島市内からだけでなく遠くからいらっしゃる方も多いのですが、この立地は比較的どこからでも通いやすいのではないでしょうか。
早期発見・早期治療の開始で進行を抑えることをめざす
こちらのクリニックの特徴について教えてください。
認知症の診断と治療に力を入れているという点です。予約をしていただければ、MRIなどの画像検査と認知機能検査、採血や心電図検査などを行います。MRIについては、同じ医療モール内にある「新本クリニック 整形外科」にお願いして撮影をしていただいています。当院ではその日のうちにある程度の診断までお伝えしています。スピーディーに検査と診断ができるので、その日から治療をスタートすることも多くあります。また、認知症以外にもパーキンソン病やめまい、頭痛などの脳神経内科疾患や関連する症状、風邪や高血圧などの一般内科の診療にも対応していますので、幅広い困り事に対応できるのも当院の特徴の一つではないでしょうか。
認知症専門の外来には、どのくらいの年代の方が通われていますか?
70代、80代の方が最も多く、最近は90代の方も増えているという印象です。また、認知症の「若年」というのは、定義では65歳より前に症状が出た方を指すのですが、実際には50歳前後、中には40代で発症されて来院する方もいらっしゃいます。認知症というのは軽度のうちから治療を開始して進行を遅らせていくのが理想的で、中等度になってしまうと進んでしまった時間を取り戻すことはできません。ところが、患者さんの中には認知症のさまざまなサインを「年を取ったのだから当たり前」と考えて放置してしまい、症状が進んだ状態で来院するケースも多いのです。例えば、「孫が生まれて会いに行った」とか「結婚式に参加した」など、本来なら覚えているべき大きな出来事を丸ごと忘れてしまった時は認知症を疑うべきですし、それ以外でも気になることがあれば、どんな些細なことでも相談していただきたいと思います。
先生が診療の際に大切にしていることは何ですか?
できるだけ相談しやすい医師でいたいと常々思っています。ちょっとしたことでも、気になることがあったら何でも相談していただけるように心がけています。認知症というのは、患者さんはもちろん、そのご家族にとっても大きな負担となりますので、両方の幸せをめざすことが大切です。当院には臨床心理士も在籍していますから、たくさん話をしたいという方はカウンセリングを受けていただくこともできます。
さまざまな機関との連携で患者とその家族を支えていく
お忙しい毎日だと思いますが、休日にはどのようにお過ごしですか?
もともと旅行が好きで、休みの時にはよく出かけていました。大学生の時は、バックパッカーでアメリカやヨーロッパを旅行したこともあります。10年以上前に、テレビのクイズ番組でチャンピオンになって、賞品として地中海クルーズ旅行に行けることになったのですが、それがきっかけでまたヨーロッパによく行くようになりました。とはいえ、今は新型コロナウイルス感染症流行の影響が続き、なかなか自由に旅行ができないので、映画やドラマなどを見て過ごすことが多いですね。患者さんには運動をするようにアドバイスをしているのですが、自分自身のことになると、運動したほうがいいとわかっていてもなかなかできていないというのが正直なところです(笑)。
今後の展望についても教えていただけますか?
現在、アルツハイマー型認知症などの治療薬として開発された新薬の効果を確認する治験を行っているのですが、今後も続けてそのような部分で新しい治療薬の開発のお手伝いをしていくことができたらと思っています。実際に話題になっている新薬もありますので、それが承認されたら当院でも使っていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
現在も認知症でお困りの方はたくさんいらっしゃいますが、大切なのは最初から医療機関を受診して、関係を断たずにつなげていくこと。そうすることで、困ったことが起きた時にも早めの対応が可能です。認知症というのは地域にとっても決して他人ごとではありません。例えば認知症の方が火事を起こしてしまって、その地域に延焼してしまうといった可能性もありますよね。ですからさまざまな機関と連携しながら、認知症の患者さんを地域でしっかり見守っていくことが大切なのです。進行予防の取り組みや、治療の開始は早ければ早いほど良いので、どんな些細なことでも「おかしいな」と思ったらまずは診察を受けていただきたいなと思います。