朝隈 豊 院長の独自取材記事
あさくま医院
(東大阪市/河内小阪駅)
最終更新日:2025/06/10

河内小阪駅前の商店街の一角にある「あさくま医院」は、内視鏡を用いた治療を得意とする消化器内科クリニックだ。科は異なるが3代にわたってこの場所で診療を続けてきたクリニックで、地域の人にとってはなじみの、生活の中に根差した存在であろう。近畿大学病院や守口敬仁会病院で、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をはじめ、多くの内視鏡を用いた治療の経験を積んできた朝隈豊(あさくま・ゆたか)院長。「普通のことを普通に、少し丁寧さを意識してしているだけ」と謙遜する朝隈先生に、苦痛を極力与えないよう工夫して行う内視鏡検査と、徹底的に病巣の早期発見をめざす姿勢、診療内容について詳しく話を聞いた。
(取材日2019年7月9日)
数々の経験で培った内視鏡の技術を提供する
2018年に開業と伺っています。どんな思いでクリニックを造られたのですか?

ここは祖父が産婦人科を、その後父が内科・外科を開業していた場所で、僕はこれまで取り組んできた内視鏡治療を中心にしたクリニックを開こうと新しく建て替えました。ホテルできっちりした接遇を受けると気持ちが良いように、クリニックも人と人とのつながりが大切ですから、落ち着いた雰囲気の中で丁寧に接することを第一に考えました。内視鏡検査で緊張されていたり、下剤を飲んでつらかったりする患者さんのことを考え、お手洗い横の待合やリカバリーコーナーを少しでもリラックスできるように造りました。
内視鏡の検査や治療の患者さんが多いのですか?
今のところ消化器系の患者さんと、それ以外の方は半々くらいです。父の代からの患者さんで、風邪や生活習慣病で受診される方もいらっしゃいますよ。胃の症状だと思って胃カメラを希望されていても、診察してみると心臓が悪かったり胆のう結石だったりで、「胃カメラは必要ないですよ」ということもあります。中学生で胃腸の症状を訴える場合もありますが、子どもの場合、基本的に内視鏡検査をクリニックでは行っていません。胃カメラも簡単になってきていますが、麻酔にはリスクもあるので、必要に応じて病院などと連携し対応しています。内視鏡のために来られる患者さんは、他院からの紹介も多いです。
具体的にどのような検査や治療を行っておられますか?
口または鼻から内視鏡を入れて食道・胃・十二指腸を診る胃カメラと、肛門から内視鏡を入れて大腸内を観察する大腸カメラ検査で、ポリープや初期がんの切除を行っています。組織の一部を採取したり、胃がんや潰瘍の原因となるピロリ菌の検査もしています。大きながんなどは、大規模病院を紹介したり、週1回診療に行っている基幹病院で僕が手術をしたり。地域の開業医なのでホームドクターとしての役割もあり、消化器系や内視鏡以外のことも、ネットワークを生かして専門のドクターの意見を聞きながら、僕がここで診るか、専門のドクターに診てもらうべきかを判断しながら、患者さんの体全体をサポートできるように心がけています。
外病院でも診察を続けておられるのですね。

僕の診療を受けに来てくださる方は、丁寧さと経験を信頼してくださっているのだと思います。もう十分経験を積んだとあぐらをかいていてはいけません。自院だけで何年も続けていると、自分がしていることが「当たり前」になってしまうので、自分の常識がほかでの常識とずれていないか、常に確認する意味でも外部勤務先での診療は続けるつもりです。
探求心・向上心を持ち続け、多くの内視鏡治療に従事
内視鏡を専門に選んだ経緯を教えてください。

近畿大学医学部を卒業後、同大学病院での研修や北野病院での勤務を経て大学院に進むことになりました。正直なところ博士号取得にはあまり興味がなく、たくさんの患者さんを診られるような現場で経験を積みたかったのですが、「大学院に進む医師も必要だ」と教授から勧められたのです。結局、僕の意思も尊重してもらって、大学院に戻るタイミングを少し遅らせてもらいました。その頃、胃がんを取る内視鏡治療が世の中に広まりつつあって、大阪厚生年金病院に勉強させてもらうために通い、守口敬仁会病院でも実践していました。それで近畿大学病院に戻ってもこの分野の診療を専門に行い、僕の内視鏡に取り組む姿勢を認めてもらえて、次第に任せていただけるようになりました。
数多くの内視鏡治療の経験を重ねてこられたと伺っています。
例えば胃がんを摘出する時に、きれいに取れれば再発の可能性が少なくなりますし、短い時間で行うと患者さんへの体への負担も少ないですよね。たとえそれが若干の差であっても、より高いレベルをめざすのは当然です。僕が1年目でまだ何もできない時に、吐血の患者さんを内視鏡治療している先生が、なかなか出血を止められないことがありました。僕は患者さんの体を支えながら苦しんでいる患者さんを見て「内視鏡治療の高い技術を身につけなければ」と思ったんです。そのため、できるだけ長時間内視鏡センターにいて、スムーズに治療が進んでない症例の時には顔を出し、とにかく経験値を増やしました。それで人よりは少しだけ知識や経験を得て要領がわかってきたので、多くの機会をいただくことができました。大学病院だけでなく、外の病院でもそういう機会が増え治療する数が増えていったのです。
苦痛の少ない検査を行うために努力されてきたそうですね。

僕自身が検査を受ける時は麻酔なしで、涙やよだれを垂れ流しながら(笑)、大変さを体感します。どこがどのくらいきついのか、患者さんの気持ちや痛みを理解し、それを少しでも改善しようとやってきたことが役に立っているのかもしれません。
病気の早期発見・早期治療に尽力
がんなどの早期発見にも注力されているそうですね。

大学の付属病院にいる時、紹介で来られた患者さんの指摘された部分以外の病変を見つけることが時々ありました。それは僕だけでなく、2番目に診る医師は、最初の病院で異常が見つかっているのだから「がんがある」と思って診るわけです。最初に診る人は1ヵ所見つけたらそこに注目してしまうけれど、2番目に診る人は、特に胃がんなど複数の病巣があることが多いとわかって診るから見つけやすいのです。そのような経験から、少し手間がかかっても僕はなるべく色素を撒いて早期発見に努めるようになりました。一般的にはそこまでしない場合にも、その色素のおかげで病巣が見つかることもまれに経験しているので、手間を惜しまず今でも習慣にしています。
そもそも医師をめざしたのはなぜですか?
祖父や父と同じように医師になるのは面白くないと思っていて、最初は大阪府立大学の別の学部に進学したんです。卒業時に就職を考えたところ、理系の仕事はどんどん技術が進歩していくから、40代くらいになるとその進歩についていくのが難しくなるという話を聞きました。でも医師なら、年齢を重ねるほどスキルが上がり、経験を生かして人のために役立つ仕事ができると思いました。それで、もう一度医学部に入り直しました。その頃勝手に思っていた医師のイメージでしたが、実際なってみると、やはり日進月歩の技術を学び続け、それがそのまま患者さんのためになることに喜びを感じています。ほかの仕事だったら、会社のために、自分が望んでいないこともしなければいけないかもしれません。医師の場合は、自分のやりがいと患者さんの利益が直結するので、回り道してでも医師になって良かったです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

消化器系の病気は、症状が出てからでは遅いことがあります。40歳過ぎて1回も検査を受けたことがない方は、ぜひ一度受けておくことをお勧めします。ただ過剰な受診は避けるべきで、どのくらいの間隔での検査が必要かは個人差があるため、医師と相談なさるといいと思います。当院でも胃や腸の病気で命を落とす人を出さないことを目標に、丁寧な検査とわかりやすい説明に努めています。ちょっとした不安でも、ぜひ受診して話してみてください。