加藤 清恵 院長の独自取材記事
渋谷済生クリニック
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2024/11/11

渋谷区東、明治通り沿いにあるのが「渋谷済生クリニック」。院長の加藤清恵先生は30年以上にわたり東京都済生会中央病院で日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医として勤務し、2018年に同院を開院した。糖尿病や生活習慣病は生活と深く関わる病気であるだけに、患者との対話を重視するという院長。一人ひとりの診療時間を長く取り、クリニックだからこそできる診療を心がける。1型糖尿病患者が比較的多いという同院。その理由と診療へのこだわりについて加藤院長に聞いた。
(取材日2024年9月25日)
長く継続して患者を診るために開業
どういった患者さんが来院されますか?

当院には、若い方から高齢者まで幅広い患者さんがいらっしゃいます。私の専門が糖尿病ということもあり、糖尿病の患者さんの割合が多くなりますね。その他の疾患では、高血圧症、脂質異常症など他の生活習慣病の方も少なくありません。私は研修医時代から長く東京都済生会中央病院に勤務していたのですが、勤務医の頃から30年以上関わっている患者さんもいらっしゃいます。また、当院には私以外にも内科から糖尿病まで専門性の高い医師が在籍しております。複数名いるからこそ、安心して自分に合う医師をお選びいただければと思っております。
なぜ渋谷で開院されたのですか?
当院を開院する前に勤務していた、東京都済生会渋谷診療所がこの近くにあったためです。私は、この診療所で所長をしていたのですが、診療所が閉院することになってしまいました。そこで、継続して患者さんを診ていきたいと思い、当院を開業することにしたのです。この場所は診療所があった場所と方角は違いますが、渋谷駅からの距離は同程度なので、診療所の患者さんも通院しやすいのではないかと思いました。糖尿病の患者さんは、大きい病院からの引き継ぎで当院に通院している方が多く、糖尿病を専門とする医師にかかりたいと希望する方がほとんどです。そうした患者さんの希望をかなえるためにも、診療所の閉院からできるだけ間を空けずに開業することをめざしました。1ヵ月という短い準備期間でとても大変でしたが、患者さんにはご迷惑をおかけせずに開院できたと思います。
周辺病院との連携も緊密にされているそうですね。

はい。私が務めていた済生会中央病院はもちろん、近隣の日本赤十字社医療センターや東京都立広尾病院などとも連携しています。私は今でも済生会中央病院で外来を担当していますし、当院に来ている他の医師も済生会中央病院の医師が多いので連携はスムーズです。患者さんの中には、年に1回済生会中央病院で診察を行い、その他は当院に通われる方もいらっしゃいます。診療の場所が変わるだけで、私が診ることに違いはないのですが、大きい病院とのつながりを持っていることで安心していただけるのでしょう。紹介先の病院については、患者さんのご希望を伺って決定しますので、遠慮なくおっしゃっていただければと思います。
糖尿病専門医によるさまざまなアプローチ
1型糖尿病の患者さんが多いと伺いました。

そうですね、当院に通院されている糖尿病患者さんの約1割が1型糖尿病の方です。これはクリニックの中では、比較的多い数字かもしれません。1型糖尿病は、膵臓のインスリンを出す細胞が壊され、インスリンがほとんど出なくなってしまう病気です。そのため、インスリンを外部から補充し続けなければなりません。1型糖尿病の方は、血糖値をコントロールすることが難しいため、糖尿病専門医ならではの診療が求められます。当院の患者さんに1型糖尿病の方が多い理由としては、済生会中央病院時代から1型糖尿病の患者さんを診てきたということもありますし、1型糖尿病の患者さんに有用な血糖値の測定器を導入しているということもあるでしょう。
持続型の血糖測定器とはどういったものでしょうか。
持続型の血糖測定器は、500円玉サイズのセンサーを二の腕に装着して、血糖値を測定するものです。センサーを装着したまま生活をし、血糖値の変動を連続的に計測します。測定結果は、専用のアプリをインストールしたスマートフォンや専用リーダーがあれば、いつでも確認が可能です。通常の血糖値の計測は、痛みが伴うことや、血糖値の変動を調べられないという側面を持ちます。しかし、持続型血糖測定器は一度装着すれば、14日間は特別なことをせずに計測が可能です。1型糖尿病の方であれば、保険適用で最大28日間分の計測ができます。2型糖尿病の方に比べて、インスリンを打つタイミングや量の調整が難しい1型糖尿病の方にとっては、非常に有用な測定器でしょう。2型糖尿病患者さんで注射による糖尿病治療をしている患者さんでも使用可能です。また、短期のみの使用なら、血糖降下薬を飲んでいる方でも保険で使用できますので、ご相談ください。
食事療法などにも力を入れているそうですね。

はい、食事療法には病院勤務時代から力を入れていて、当院では管理栄養士による栄養指導も行っています。管理栄養士は常勤ではないので、すべての患者さんにご案内できるわけではありません。ただ、患者さんには可能な限り管理栄養士に1回は会っていただき、食生活の問題点を細かく聞いてもらうようにしています。というのも、私たち医師には話せないことも、管理栄養士であれば話してくれることがあるからです。ヒアリングした内容はカルテに詳細に記載されるので、カルテを見て患者さんの生活を把握することもできます。管理栄養士への相談を毎回受けたい人もいれば、ときどき受けたい人もいるので、患者さんに合わせて臨機応変に変えています。無理な指導を行って、通院自体をやめてしまっては本末転倒です。その方の許容範囲を考えながら、継続可能な指導を心がけています。
通院継続できる環境と患者との信頼関係が大切
診療で心がけていることは何ですか?

そうですね。やはり糖尿病や生活習慣病の方が多いので、患者さんの生活を知ることを大事にしています。どういった生活をしているかわからないと、食事や運動のアドバイスもできません。そうした情報を知るには、患者さんとの会話が重要です。場合によっては、生活の中の問題について立ち入った質問をすることもあります。ただし、信頼関係があることが前提です。患者さんが心を開いてくれなければ本音は聞けないので、最初は少しずつ距離を縮めて、患者さんからお話ししてくれるのを待ちます。ストレスが病気を悪くすることもあるので、とにかく話を聴いて気持ちをスッキリしてもらうことが大切です。60代くらいの患者さんだと、親の介護に悩んでいる方も多く、時には介護のアドバイスをすることもあるんですよ。生活に密着した病気なので、単に血圧が高いですねといって終わりにしてはいけないと思っています。
オンライン診療など、通院のしやすさも考えられているのですね。
はい。糖尿病が悪化する大きな要因の一つは治療の中断です。初診で診た患者さんが、1年もたたずに来なくなってしまうケースは多くあります。他の医療機関にかかっていればいいのですが、恐らく中断している方がほとんどでしょう。ですので通院を止めずにできるだけ来てもらえるようにするためにも、オンライン診療などを利用して利便性を高めたいと思っています。当院をかかりつけにしている患者さんで、次の外来まで薬が間に合わないといった時にも利用していただければと思います。高齢の患者さんだとオンライン診療のシステムを使うのが難しいので、電話診療が可能になったことで利便性が向上したと思います。ただし、3ヵ月に1回は対面での受診が必要なので、オンラインと対面をうまく組み合わせながら受診いただくのが良いでしょう。
今後の展望をお聞かせください。

糖尿病に関する情報発信に力を入れていきたいと思っています。以前、渋谷区医師会を通じて、糖尿病のことで地域の方と関わるようなプログラムを考えていました。しかし、新型コロナウイルス感染症が流行し、実現することができなかったのです。今後はそのリベンジとして、糖尿病の情報発信や糖尿病についてさまざまな方と関われるような場をつくることができればと思っています。まずは情報発信の活動の一つとして、2022年から、ホームページ上で糖尿病やその他の疾患に関する情報の掲載を始めました。総合内科専門医、糖尿病専門医として、患者さんやそのご家族、地域の方に適切な情報を伝えていきたいと思います。