村松 正俊 院長の独自取材記事
ほしみ脳神経外科
(桑名市/星川駅)
最終更新日:2024/06/20

名古屋都市圏のベッドタウンである桑名市星見ヶ丘。閑静な住宅地でひときわ目立つ、北欧風の三角屋根と美しいれんが造りのクリニックが「ほしみ脳神経外科」だ。専門の脳神経外科の診療に真摯に取り組み、手術を中心にさまざまな診療に携わってきた村松正俊院長。基幹病院の脳神経外科部長を務めるなどした知見を生かし、地域医療に貢献すべく2018年に開院を決めたという。災害に強いクリニックづくりや認知症検査、片頭痛の治療などへのこだわり、地域への静かながら秘めた熱い思いを聞いた。
(取材日2020年3月26日)
地域のプライマリケアを担いたいと開院
北欧風の外観がとてもすてきですね。

ありがとうございます。留学したスウェーデンの雰囲気が大好きで、温かみを持ちながら華やかでもある北欧のデザインを取り入れたクリニックにしたいという思いがあったのです。内装のカラーも北欧をイメージし、白木を入れるなど明るく優しいカラーを基調としています。また星見ヶ丘の地名ともう1つの趣味でもある「星」もモチーフとして生かし、クリニックの名前も「ほしみ」と名づけました。同じく星を愛する友人の建築家にお願いし、私のこだわりを入れながらも、患者さんがリラックスできる雰囲気に仕上げてもらいました。実は一つの部屋の天井にはプラネタリウムを投影することも可能です。コストとの兼ね合いもあり、まだ実際に投影機材は導入しておりませんが、そのうちに天井に星が映し出せるようにしたいですね。
開業した経緯を教えてください。
これまで脳神経外科の医師として、三重県立総合医療センターや桑名市民病院など、いくつかの病院に勤務してきました。脳神経外科部長まで務めた桑名市民病院は、基幹病院でありながらも地域のプライマリケアも担っていました。ただ昨今の医療事情を鑑み、救急医療や高度医療に特化し、北勢地区の3病院が統合、新しく桑名市総合医療センターに集約される方向が決まっていました。ですから、私が担当していた患者さんの中には、これまでと同じように通院されるのが難しくなる方もおり、そういった方々を引き続き診察していきたいと考えたんです。ちょうど私自身もキャリアの転機を迎え、もっと患者さんの近くで地域医療に貢献したいという思いが高まっていました。そこで2018年、お世話になった桑名で開院することを決めたのです。
どのような患者さんが多いですか?

これまで担当してきた脳卒中の患者さんが引き続き通っています。脳卒中の患者さんは、高脂血症や糖尿病、高血圧といった基礎疾患を抱えている方が多いので、その管理を行っています。さらに星見ヶ丘のある桑名市は、名古屋までは高速バスや電車などでもすぐに行けますし、三重の中枢都市でもある四日市市も近いのでベッドタウンとして人気があります。新興住宅地として開発され、比較的若いファミリー世代も住んでいるエリアです。そのため、高齢の患者さんの他、若い世代も通院しています。全世代共通して頭痛を訴える方が多く、中でも若い世代の女性が目立つ印象です。それから、認知症の疑いのある高齢の患者さんを、ご家族が連れて来院されるケースも増えています。
脳や神経から内科疾患までトータルに対応
クリニックの特徴や力を入れていることは?

脳卒中や頭部外傷などが原因となり、コミュニケーションに障害が生じる場合があります。言葉を話したり理解したりすることが難しくなる失語症や顔や唇などにまひが残り、話しづらくなる構音障害などです。食べ物や飲み物を飲み込むことが難しく、むせてしまう嚥下障害も含まれます。当院では言語聴覚士(ST)が患者さんの症状に合わせた訓練を行います。特に認知症の患者さんについては、忙しい臨床の現場で的確な診断をするのが難しく、投薬のみで十分な評価がされていない場合がありました。STの存在は、認知症の評価にも大きな役割を果たしています。また理学療法士(PT)は、関節運動学的な技術を用いたリハビリテーションに注力しています。動きの範囲が少なく、力が出しにくい、動きにくさがあるなど、お悩みの患者さんのお話を聞き、個々人に合わせた丁寧な訓練を実施しています。
内科も含め、幅広く診療をしているのですね。
私は専門の脳外科の診療についてはもちろん、長らく救急医療にも携わってきました。その現場で感じたのは、そもそも患者さんは、体調が優れずに病院に来るのであって、何の病気かを自覚しているわけではないということです。脳神経外科とは関わりのない症状に見えても、神経系の不調が関わっている場合もあります。逆に他の臓器の不調が、実は神経疾患が関与していたというケースも少なくないのです。高血圧、糖尿病、脂質異常など生活習慣病をはじめ、内科的な疾患も注意して観察していく必要があります。開業するにあたって、内科を標榜したのもそのためです。脳の異常を早期発見、脳卒中を予防するため、予約制で脳ドックや、認知症の精密検査にも対応しています。
オープン型のMRIを導入された理由を聞かせてください。

脳ドック、認知症をはじめ、的確な診断を行うためにMRIの果たす役割は大きいと思います。ただ一般的なトンネル型のMRI検査機は閉塞感があり、苦手とする患者さんもいます。オープン型であれば開放されているため威圧感も少なく、音も控えめで、検査を受ける患者さんの負担が軽減されるメリットがあります。また開院にあたって「災害に強い」クリニックを造るのが目標の1つでもありました。建物の構造も三角形を基本としたトラス構造を採用、軽量でなおかつ変形に強い造りを木造で実現しました。MRIを含めた機器も、災害時に対応できるものを使いたいと考えていました。従来のものよりオープン型のMRIは災害にも強いとされていたのも、導入した理由の1つです。
何でも相談してもらえるかかりつけ医をめざす
患者さんと接するにあたって、心がけていることはありますか。

すべての病気の入り口である内科、また精神的な疾患から外科的な部分まで、何でも相談してもらえるかかりつけ医になりたいと思っています。私が学生の頃はスペシャリストでゼネラリストでもある、いわゆる「総合的な診療を行う医師」というカテゴリーは存在していませんでした。この概念がいわれるようになってきた時は、めざす方向性は同じだなと憧れたものです。脳神経外科を志したのも、「脳や神経は人間のすべてをつかさどっているから」であり、一人をすべて診られる医師でありたいとの考えからです。例えば生活習慣病は、脳卒中など脳疾患とも密接につながっています。生活指導も含め、患者さんとトータルに関わっていきたいです。短い時間でたくさんの患者さんを診察するのは得意ではありませんので、一人ひとりとじっくり、丁寧に向き合っていくことをモットーとしています。
今後の展望を聞かせてください。
初診で頭痛を訴える患者さんが多くいます。急を要する外科的な頭痛であれば、連携している桑名市総合医療センターなどをご紹介します。けれども、頭痛というのは厄介なもので、治癒に結びつかず上手に付き合っていかなくてはならないものがほとんどです。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などの慢性頭痛にあたるものですね。生活に支障があるからといって、鎮痛剤を常用すると新たな頭痛につながるケースもあります。当院では、頭痛薬はケースバイケースで処方していきます。中でも漢方、東洋医学的なアプローチについてはもっと学んでいきたいと思っています。いろいろな治療法がありますが、精査した上でもっと多角的な選択肢をご提案できるよう、さらに勉強を続けていきたいと考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

今お話ししたように、慢性的な頭痛に関しては患者さんの生活の質を下げない治療に一緒に取り組んでいきましょう。認知症に関しては、早め早めに行動するのが大切です。にっちもさっちもいかなくなり、ご家族に余裕がなくなってから来院される方も少なくありません。悩んでいるよりも、まずはお話を聞かせてほしい。次にどういった準備が必要なのか、知っておくだけでも心の持ちようは異なります。そして投薬治療のみならず、福祉制度の利用も含め生活環境を整えていくことが肝心です。高齢のご両親であれば、高血圧などの内科疾患はお持ちでしょうから「ほしみさんで診てもらおう」と気軽にお連れいただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは脳ドックAコース/3万3000円(水・土)
脳ドックBコース/5万5000円(水・土)
※詳細は医院にお問い合わせください