金原 正志 院長の独自取材記事
かねはら内科・呼吸器クリニック
(広島市西区/白島駅)
最終更新日:2021/10/12

呼吸器、内科、アレルギー科のクリニックとして地域の患者を診る「かねはら内科・呼吸器クリニック」。広島大学や市民病院などで数々の研究、診療経験、立場を経て、2020年4月に金原正志院長が開院した。利便性高いショッピングモールの敷地内にあり、土曜の診療も行っていることから、高齢者や親子連れ、忙しい社会人など多くの地域住民の喘息や日々の健康不良などに対応。CT機器も備えており、肺がんの早期発見にも力を入れている。「かかりつけ医としてもっと地域に根差したい」と話す金原院長に、その経歴や診療への思い入れ、この先地域で行っていきたいことなどを聞いた。
(取材日2020年8月20日)
説明を重ねることや本格的な検査で常に入念な診療を
医師を志した理由などを教えてください。

私が小学生の頃に祖父が胃がんで亡くなり、おじいちゃんっ子だったこともあってたいへん悲しい思いをしたことを覚えています。そのことがきっかけとなり、漠然と医師になって命を救う仕事がしたいと思い始めました。大学は島根へ行きましたが生まれも育ちもここ広島で、医師になってからもずっと広島の労災病院や大学病院、市民病院などで呼吸器内科の医師として勤めてきました。呼吸器は、内視鏡などで直接見て判断するようなことができない部位なんですよね。ですから、検査結果の数値や画像、症状から、自分の知識と経験を使って頭で探らなくてはならない。自分がたくさんの経験をすることで次の症例にそれが生きる。その積み重ねで常に成長できる分野だと思います。今もとてもやりがいを感じています。
こちらに開院されたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

7年間勤めた広島市民病院に近かったことが、こちらでの開院のきっかけですね。その頃に診ていた患者さんの流れや暮らしを知るにつれ、地域のクリニックで長く診ていきたいと思ったんです。患者さんの生活に近い場所で健康診断から病気を早期発見して、治療に寄り添う。そんなふうにお付き合いさせていただけたらうれしいですね。今現在当院に来られている患者さんの中には市民病院の頃からのお付き合いの方も多くいらっしゃいます。そのほかにも、平日ですとご高齢の方や親子連れ、土曜には働き盛りの方などが多く来られています。
どのような主訴で来られる患者さんが多いですか?
さまざまいらっしゃいますが、喘息はやはり一定数おられます。喘息に劇的な改善法はないので、吸入薬を使って地道に抑えていかなければなりません。吸入器をうまく使えない患者さんも少なくないので、指導は丁寧に行い、薬を受け取る際にもう一度使用法を確認できるよう薬局さんにも指導の協力をいただいています。禁煙相談の患者さんも増えていますね。薬やパッチを使いながら治療を続け、無事に禁煙できた場合は卒煙証明をお渡しします。また、当院ではCT設備も整えています。肺がんの早期発見の機会を少しでも多くしたいという思いで導入しました。タバコを吸わない方でも生活習慣や環境によって肺がんを患うケースはありますから、喫煙するしない、そして症状のあるなしに関わらず、エックス線で不十分な場合はCT検査の有用性をご説明しています。
呼吸器の診療に専心してきた経験を地域で生かしたい
これまでの診療経験で印象深かったことはどんなことですか?

呉共済病院忠海分院で毒ガス障害のある患者さんたちの治療に関わったことです。皆さんご存じのように、戦時中に毒ガス製造の場とされていた大久野島の病院なのですが、現在80~90代でいまだに健康被害に苦しんでいらっしゃる方々がいるんですね。当時そうした経験をされた方は肺の異常も出やすいということがわかっていますので、そこでの診療は特別なものでした。大久野島だけでなく、広島は戦争で傷ついた方が大勢おられます。この地でそうした方を助ける仕事に就けて良かったと思っています。
勤務医として10年働かれた後に大学の研究科に行かれたのですね。

呼吸器内科を専門として勤務した後、さらに研究を深めるために広島大学大学院に進学しました。主にCOPD・肺がん・喘息・間質性肺炎という難しい肺炎の診療に従事しました。一口に間質性肺炎と言っても原因はさまざまあり、その原因によって治療法も違うのが難しいところです。その血清マーカーを研究、開発された先生のもとで働けたのは私にとって大きかったですね。また、アレルギーと関係する肺炎の場合には、生活環境を知るため患者さんのお住まいを訪問して調べたこともありました。治療のためにそうした地道な探りを重ねてきたこと、常に学びの姿勢を忘れずにきたことも、今の経験値になっていると思います。
クリニックの在り方などにどのような思い入れがありますか?
患者さんとの間柄、そして丁寧な説明を大切にしています。大学にいた頃、とある先生に「自分の父や母、娘や息子だと思って診察しなさい」と言われたことがあります。その言葉をいつも胸におき、お声がけや診療をするようにしています。実際、患者さんにもよく聞かれるんですよ。例えば治療方針を決めるとなったとき、「先生のお父さんやお母さんだったらどの方法を勧めますか」と。患者さんを身内のように思って親身になるということ、そしてそれを求められているということを、忘れないようにしたいですね。そうしたコミュニケーションから、病を未然に防ぐことや早期発見、良い治療につながると思っています。当院の看護師や受付スタッフにも、気持ち良く受診していただけるよう患者さんの気持ちをくんで対応しようと話しています。
CT検査の機会を増やし早期発見できるクリニックに
大きな臨床試験にも参加されているとか。

はい。全国で展開されている臨床試験にも参加させてもらっています。簡単に言うと『CTとエックス線のどちらが肺がん健診として有用か』という試験で、非喫煙者を対象にCT検査とエックス線検査を受けていただき、データを取ってどちらが有用かを実証する内容です。10年後くらいに結果が出るよう、自治体とともに動いているプロジェクトです。当院のようなクリニックの規模でCT機器を導入しているところはあまりないと思うので、それがきっかけで参加させてもらうようになりました。
お忙しいことと思いますが、余暇はどうされていますか?

趣味はゴルフを少々ですね。受験生の娘がいるので、勉強のフォローをすることもあります。あとはやはり、自分の健康管理です。新型コロナウイルス感染症の蔓延以前から、常に手洗いやマスク着用には気をつけてきましたし、自分のためにも患者さんのためにも風邪などひかないように意識しています。
クリニックの今後の展望についてお聞かせください。
基本的なこととしては、このクリニックで早期発見・早期治療を主眼に診療を続けていきながら、臨床試験への参加や学びを深めていくことを続けたいですね。古巣である市民病院などと連携を取りながら、安心して治療に専念していただける場所でありたいと思っています。その上で、もっと地域に入り込んだ医療提供を行いたい。地域の中にはご高齢の方も多くいらっしゃいますし、急に診てほしいということもあるでしょう。そうした声に応えられたらと思います。今はまだ難しいですが、いつかそんな体制が取れることを願ってクリニックの未来を思い描いています。