増田 洋史 院長の独自取材記事
増田内科クリニック
(さいたま市岩槻区/浦和美園駅)
最終更新日:2025/10/14

身近なかかりつけ医をめざし2018年6月に開業した「増田内科クリニック」。浦和美園駅東口から徒歩10分で、住宅地に隣接する同院は駐車場30台を備え、屋根つきの車寄せやバリアフリー構造を採用するなど安心して通える環境を整えている。循環器内科を専門とする増田洋史院長と、腎臓内科を専門とする増田敦美副院長が中心となり、内科全般から循環器・腎臓・甲状腺の専門診療、睡眠時無呼吸症候群や生活習慣病まで幅広く対応。24時間心電図をはじめとする院内検査や、動脈硬化、生活習慣病の治療、腹膜透析なども取り入れる。地域のニーズに応える増田院長に、これまでの歩みや現在の診療の特色などについて聞いた。
(取材日2025年9月5日)
病気を理解し、向き合える診療を
これまでのご経歴と、開業の経緯を教えてください。

大学卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院循環器内科と関連機関の順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターに勤務しました。大学病院では先端の医療に携わる一方で、外来では「明日また来てください」と伝えても翌日は自分が診られず、患者さんとの距離を縮めにくいもどかしさがありました。その後、循環器が専門の医師が少ないコンパクトな環境の病院に移ったことで患者さんに継続して寄り添えるようになり、自分に合った環境だと確信したんです。そこで外来を中心に、入院せずに済むよう患者さんが病気を理解して向き合える診療をめざし、「何でも相談できるクリニックを立ち上げたい」と考えて開業に至りました。また訪問診療クリニックでの勤務を通じ、そこでの病気の治療以上に生活のサポートを多職種と模索する経験も重ねました。人と人、命との関わりを深く考える濃密な時間の中で、今の診療スタンスの土台ができたと感じています。
クリニックにはどんな特色がありますか。
当院では心電図検査、エックス線検査、血管年齢検査、肺機能測定検査、超音波検査、糖尿病検査、尿検査などを院内で行い、すぐに結果がわかります。24時間心電図(ホルター心電図)検査も院内で解析していますので、検査の翌日には結果をお伝えできます。当院の特色は、腎臓と心臓を専門とする医師がいて動脈硬化に関する治療が得意なこと。腎臓内科は町のクリニックではあまり多くはありません。さらに発熱の外来診療も予約制で設け、専用の部屋で診察を行うのも特徴です。また当院のスタッフはみんな、明るく人あたりがやわらかいので、患者さんにもリラックスしていただけるのではないでしょうか。駐車スペースは30台分あり、院内はバリアフリーなので、どなたでも通いやすい環境です。
患者さんに接する際に心がけていることを教えてください。

患者さんにご自身の病気を理解いただくことです。例えば「血圧の薬は一生飲まなければいけないんですか」とよく聞かれます。扁桃腺が腫れたときには抗生物質を処方したら治療は終わりますが、それは急性疾患だから。高血圧症は慢性疾患ですから、薬をやめたら元に戻ってしまいます。なぜ血圧を下げなければいけないのか、薬を飲まずに済むようにするにはどうしたらいいのか。一つ一つ丁寧にご説明しています。また糖尿病の場合、薬だけではなく食事に気をつけたり運動したりといったことも重要です。患者さんの生活スタイルについても話を聞き、良くない習慣があればそれはやめましょうとお伝えします。一度にすべてを変えるのは難しいので、その人に合ったペースで一歩ずつご自身の体のために取り組んでいただくことが大切です。
甲状腺や腎臓の病気も。地元で可能な専門診療
甲状腺の診療について教えてください。

私は循環器を専門としていますが、どうしても甲状腺疾患と関わることが多く、臨床の中で経験を積みながら学びましたので、専門的な知識が身につきましたね。代表的な病気にはバセドウ病と橋本病があり、女性に多く、若い方から高齢の方まで幅広く発症します。バセドウ病では汗びっしょりになるほどの多汗、体重減少、動悸、手の震え、焦燥感といった症状が見られ、心臓に負担がかかり心不全を起こす人もいますし、眼球が突出することもあります。橋本病では逆に体重増加やむくみ、やる気の低下、脱毛などがあり、不妊との関連も指摘されています。診断は採血でホルモンを測定し、超音波で腫瘍や大きさを確認します。数日で結果が出ますが、見た目でわかることも少なくありません。こうした症状があれば早めに検査を受け、治療につなげてください。
腎臓内科ではどのような診療を行われていますか。
腎臓内科では副院長が外来を担当し、尿異常やむくみ、健康診断での異常などから総合的に診断しています。腎機能が低下すると人工透析が必要になりますが、その前段階として腹膜透析という選択肢を提案しています。腹膜透析はおなかにチューブを入れ、薬液を注入・排出して老廃物を取り除くための方法で、今では全自動の機械を用いて夜間の睡眠中に行うことも可能です。そのため、働きながらでも続けられる治療として有用です。長期間にわたる実施は難しいものの、血液透析に入る前の有意義なステップになり得ます。一方、血液透析は週に3~4回、1回4~5時間を病院で行う必要があり、生活や仕事への負担が大きいのが現実です。患者さんの生活背景に合わせ、最も無理のない方法を一緒に検討していきたいと考えています。
甲状腺と腎臓の病気には共通する症状はありますか?

代表的なのが「むくみ」です。甲状腺機能低下症では代謝が落ちて体がむくみやすくなり、体重増加も伴います。腎疾患では水分の排泄がうまくいかずにむくみが出ることがありますし、心臓疾患でも同様の症状が現れます。つまり、一つの症状に複数の原因が潜んでいる可能性があるため、見極めには総合的な診察が欠かせません。患者さんの背景を丁寧に確認し、各診療科の視点を生かして幅広く判断することで、より適切な治療につなげています。
「主治医は自分自身」将来へ向け予防意識を高める
睡眠時無呼吸症候群の診療にも力を入れられているそうですね。

この病気はご家族からの、寝ている間に呼吸が止まっている、いびきがひどいといった指摘で気づく方が多いですね。自覚症状としては朝起きた時に疲れが取れていない、日中我慢できない眠気があるなどというものがあります。運転の仕事をされている方が事故を起こしてしまい、勤務先の指示が検査のきっかけになることも。呼吸が止まっている間は脳に酸素が届かないので起きている状態と同じなんです。呼吸が苦しいので脳が起きてしまい、脳が起きるので目が覚める、けれど体は起きないので、寝ているようで寝ていない状態です。この状態では交感神経が優位になるので血圧が下がりませんし、血糖値もコレステロールも上がります。そうすると心臓にも負担がかかってしまいます。当院では、呼吸器をつけて寝るCPAP療法を取り入れています。
先生がやりがいを感じられるのはどのようなときですか。
糖尿病や高血圧症の患者さんで、「生活習慣を変えられました」という成功体験を引き出せたら、内科の医師として一番やりがいを感じます。現実的には「生活習慣をこうしたほうがいいですよ」と言われても難しい場合が多いと思うんです。私が患者だったとして「運動しなさい」と言われても、仕事をして帰宅する生活の中でいつ運動しろというのだろうときっと思うでしょう。それでも、月1回会うかどうかの医師の話を真剣に聞いて理解して、自分にできることを考えて実行してくださると、うれしい限りです。
今後の展望とメッセージをお願いします。

地域でまだ十分に普及していない腹膜透析により力を入れ、地域で旗振り役を担いつつ、患者さんが働きながらでも治療を続けられる環境を整えたいと思います。循環器と関わりの深い甲状腺診療など、普通のクリニックではあまり行わないような専門的な分野にも引き続き取り組み、地域の中で専門医療への橋渡し役を果たしていきたいですね。今後は訪問診療の導入も検討しています。現在の医療制度は近い将来、縮小していく可能性があり、自由診療が増える時代になるかもしれません。その中で最も重要なのは、病気にならない体をつくること。普段から健康診断を受け、生活習慣を整えることが将来の安心につながります。「薬を飲んでいれば良い」ではなく「主治医は自分自身」という意識を持ち、日々の生活で正しい選択をしていただけるサポートをできたらと思います。