加藤 剛二 院長の独自取材記事
かとう小児科・内科クリニック
(蒲郡市/蒲郡駅)
最終更新日:2024/12/13

「かとう小児科・内科クリニック」はJR東海道本線・蒲郡駅から徒歩10分ほどの蒲郡市旭町に2018年に開業した。加藤剛二院長は、長年にわたり名古屋第一赤十字病院の小児科で、主に血液の病気の診療に力を注いできた医師。同クリニックでは、加藤院長が小児科の診療にあたり、幅広い年齢層の健康の管理と維持に貢献している。開業から6年。今回は加藤院長が取材に応えてくれた。地域の子どもと家族を診療するクリニックの在り方や、新型コロナウイルス感染症の拡大に備えて患者やスタッフを守るために手がけた対策について聞いた。
(取材日2022年1月14日/情報更新日2024年11月7日)
感染症対策として、症状別に待合スペースを3つに分離
開業して6年がたちましたが、地域のお子さんと家族を診療してきてどんなことを感じていらっしゃいますか?

生まれてすぐの予防接種から始まり、その後も来院してくださる患者さんが増えてきました。赤ちゃんだった患者さんが成長していくのを見せていただいています。当院にお子さんを連れてこられる親御さんは2人目、3人目を育てていらっしゃる方が多いように感じます。子育てしやすい町なのかもしれません。いいことだと思いますが、きょうだいそろって受診されるケースもあり、そんな時の親御さんは大変だと思います。共働きのご家庭も多いので、夜勤明けのお父さんが付き添ってこられたり、おじいちゃんやおばあちゃんに連れられて来院されたりすることもあります。そうした家族の方が安心できるように、症状や治療についてよく説明し、納得していただけるように努めています。
新型コロナウイルスの流行拡大に際して、どのような感染症対策を講じられましたか?
発熱患者さんがいらした時用の部屋を設けました。発熱している患者さんには車の中で待機していただき、順番がきたら携帯電話でお知らせしてこの部屋へ直行してもらいます。新型コロナウイルス感染症の疑いのある方は常に院内に一組しかいないようにしています。また、発熱患者さんの診察室を予防接種の待機室に変更しました。一般外来には普通の風邪で来院する方がいますから、風邪の感染リスクも抑えるためです。つまり待合スペースは発熱患者さん用、予防接種を待つ方用、一般外来用と3つです。発熱患者さんの診療スペースとしてプレハブを建てることも考えましたが、雨の日や寒い日は患者さんの負担が大きいので、今ある設備を生かして患者さんとスタッフを感染から守る方法をとっています。
今は感染症対策のためキッズコーナーの絵本やおもちゃを撤去していらっしゃいますね。

子どもの患者さんたちが楽しんでくれていたので残念なのですが、コロナ禍ではやむを得ません。院内にはテレビが各待合室ごとにありますから、それで和んでもらっています。お子さんたちは絵本やおもちゃがなければ、ないなりに遊んで待ってくれますね。新型コロナウイルス感染症の流行がいつ収束するのか、まだ見当がつかない状況です。しばらくはこの新型のウイルスとともにある生活が続くかもしれません。スタッフと手順をよく確認し合い、安全な診察をめざしていこうと思います。
長期にわたりサポートする小児医療にやりがいを感じる
開業する前は、総合病院で血液の病気を専門にされていたそうですね。

はい、特に血液のがん治療である骨髄移植、臍帯血移植に力を入れて行ってきました。血液のがん治療の場合、抗がん剤が主流になりますが、それでは治らない患者さんがいます。そういう方への骨髄移植から始まり、90年代後半からは臍帯血移植が積極的に行われるようになったんです。1996年に、私と志を同じくする先生方とで、この地域の臍帯血バンクを設立し、善意により提供された臍帯血を冷凍保存し、臍帯血移植を希望する患者さんに提供するという活動を通じ、造血幹細胞移植の治療に注力しました。またその関係で、先輩医師とベトナムハノイの臍帯血バンク設立のお手伝いをしたこともあります。現在も継続的に中部さい帯血バンクの運営に参画しています。
小児科の医師になろうと思われたきっかけと、開業までの経緯をお聞かせください。
高校生の頃、将来の進路のことを考えた時にやりがいのある職業に就きたいと思い、医師の道を選びました。その中で小児科を選んだのは、小さいお子さんを助ける仕事であること、そして、患者さんを長年にわたってサポートしていくことが、たいへんやりがいがある仕事だと思ったからです。開業については、名古屋第一赤十字病院を退職した後をどのように生きるかを考えた時、今までとは別のかたちで小児科の医師として携わりたいと思ったのがきっかけですね。総合病院勤務時代とはいろいろ違うことが多いですが、一から始めるという気持ちで取り組んでいます。
小児科ならではの難しさや楽しさを感じられることはありますか?

患者さんがお子さんであるということは、病気のことも体のことも、表現の方法も知らないことが多いので、コミュニケーションを取ることが難しいですね。患者さんであるお子さん本人の年齢が低いと言葉で通じ合えないこともあるので、お母さんや付き添いの方とお話しして、検査の結果を用いて病状を把握していく必要があります。それに、小児科という場所に怖いとか痛いというイメージを持ったお子さんもいるので、そういうお子さんと打ち解けるのには時間もかかりますね。でも小児科は長く付き合っていく科でもありますので、時間をかけて心が通い合っていく感じです。小児科の医師として楽しいことやうれしいことは、お子さんは治療をするとその反応が表れやすいんですね。小児は回復力がありますから、治療に対する反応も早いです。変化や回復への経過が実感できるのは、やりがいを感じる部分です。
小児と家族の幅広い病気に対応するクリニックをめざす
先生の診察のモットーを教えてください。

できるだけ当院の受診だけで済むようにしたいと思っています。やはり小児科はいろんな症状で来院する方がいるんですね。純粋な小児科疾患だけでなく、目やにや目のかゆみといった眼科の症状、とびひやアトピー性皮膚炎のような皮膚科の病気など、さまざまな症状がある中それぞれ別の病院へ連れていくのはお母さんも大変だと思います。ですから、軽症の場合はできるだけ当院で診察・処置するようにし、何軒も病院を回らなくていいようにしたいと思っています。それから、お子さんの病気で来院した時、実はお母さんも体調が悪いということがありますよね。そんなときはためらわずに相談してください。当院は内科もありますし、場合によっては私がお母さんの診察も行います。
お子さんを診療するにあたり、心がけていらっしゃることは何ですか?
多くの場合、小児の患者さん本人が病気や治療を理解するのは難しいですから、親御さんに理解していただけるようにしています。お子さんが注射を嫌がって泣いている時に、親御さんまで動転し不安な気持ちのまま治療を進めるのは良くありません。注射の目的や副反応の可能性も説明して、痛いけれど必要だと納得してもらいます。最も信頼している親御さんから説得してもらえれば、お子さんも落ち着いてくれますからね。また、重症化しそうな症状を早く見極めて地域の基幹病院に紹介することも心がけています。小児は脱水症状などが進行しやすいことから、大人よりも機敏な対応が必要です。軽症はかかりつけ医が対応し、重症は基幹病院に適切な処置をしていただく、という連携と分業を実践することで、患者さんが必要な医療を迅速に受けられるように取り組んでいます。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

小児科が診療するのは赤ちゃんから15歳までのお子さんですが、この年齢層は病気の種類も多く幅も広いですから、開業医として地域の医療をコーディネートする役割を担っていきたいです。さまざまな病気がある小児科だからこそ、当院で対処できることはしっかり対応し、他科や入院施設がある病院を紹介したほうが良いときは、迅速に連携を取ることが大切だと思います。親御さんは、お子さんの小さな異変でも心配されますから、そういう親御さんの味方でいたいですね。小児科の症状全般に対応したいと考えています。また、内科では認知症、脳卒中、パーキンソン病、頭痛などの診療を中心に生活習慣病やアレルギー疾患なども診察します。お子さんも親御さんも気軽に相談してください。そうすることで病気を早く見つけて適切な治療につなげたいと考えています。