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原 朋子 院長の独自取材記事

薬院デンタルクリニック

(福岡市中央区/薬院大通駅)

最終更新日:2020/12/17

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福岡市内を中心に糸島市の一部や大野城市、糟屋郡などで訪問歯科診療に取り組む「薬院デンタルクリニック」。歯科医師と歯科衛生士、歯科助手の3人1組で患者の自宅、あるいは入居している施設を訪問。虫歯や歯周病、入れ歯などの治療に加え、クリーニングや歯周ポケットの洗浄を行う口腔ケア、咀嚼・嚥下機能を訓練する口腔リハビリテーションを実施し、治療・ケア・リハビリの3つのアプローチで“食べる喜び”を伝えている。「高齢だから、要介護だからと、食べることを諦めないでほしい」と強調する原朋子院長に、訪問歯科に出会った経緯や治療可能な範囲、注力していきたいという終末期の口腔ケアなどについて話を聞いた。
(取材日2020年11月28日)

母の介護をきっかけに訪問歯科の道へ

先生は口腔外科をはじめ、一般歯科や矯正歯科など幅広い経験をお持ちですね。

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もともと医師をめざしていたのもあって、歯を治療するだけではなく口腔全体を通して患者さんの全身を診ることができる口腔外科に魅力を感じていたんです。そのため大学卒業後は久留米大学医学部の口腔外科に入局し、交通事故などで外傷を負った方や、頭頸部がんの方の治療に携わり、それこそ患者さんの命を預かる毎日を過ごしていました。もともと口腔外科に対しては、親知らずの抜歯などを行う診療科のイメージが強かったので、最初の1年は本当に人生観が変わるほどの衝撃でした。結婚や出産を経験し価値観が変わっていく中、あらためて歯科医師として広い知識を得たいという思いから、約3年間勤めた大学を辞め、一般歯科や矯正歯科、審美歯科について学びました。

お母さまの介護経験から訪問歯科に興味を持ったのだと伺いました。

私は5人兄弟で、両親と祖父母を合わせた9人家族で暮らしていました。認知症になった祖父母を在宅で介護し、そこで医療の道をめざす素地ができたのだと思います。歯科医師になってからのことですが、子育ての面で協力してもらっていた母が倒れ、再び介護にふれる機会があったんです。少しはプロになったという意識があったのですが、実際には全然役に立ちませんでした。本人の立場になって手伝ってほしいことを考えられなかった点に原因があると気づき、今ならもっと有病者の気持ちがわかるのではないかと訪問歯科に興味を持ちました。実際に訪問歯科を行っているクリニックにも勤務し、診療の流れやスタッフの体制づくりなどを学び、2018年に当クリニックを開業しました。

有病者に必要とされている訪問歯科診療ですが、その重要性について教えていただけますか?

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実際に訪問歯科を行ってみて感じたことは、物を噛んだり飲んだりする機能面だけではなく、食べようと思える気持ちの面でのケアが重要であるということ。そういった面で最も気をつけているのは、患者さんがにっこり和やかになって終わる診療です。そのためにもコミュニケーションが非常に大きな役割を担います。皆さん、怖い、痛いというイメージから歯科が嫌いですし、本当は来てほしくもないんです。それでも毎週訪問し信頼関係を築ければ、治療の後に「先生が来ると何か食べたくなる」と言ってくださる方も。やはり食事は健康に直結するものなので、なるべく好きなものが食べられるようにサポートしていきたいと思っています。

治療・ケア・リハビリで、健康な口腔環境をめざす

実際に訪問歯科ではどのような治療が可能なのですか?

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例えば口腔外科での経験を生かした抜歯から、軽度の虫歯や重症化している場合の根管治療、歯周病の治療、かぶせ物までさまざまな治療に対応しています。また入れ歯を作ったり、ブリッジを作ったり、ほとんどの治療はカバーできるのではないでしょうか。検査に関してもポータブルのエックス線検査機器があるため、ご自宅に小さな歯科クリニックが来るとイメージしていただけると良いかもしれませんね。さらに治療だけではなくクリーニングなどの口腔ケア、口腔周りの筋力を鍛える口腔リハビリテーションにも取り組んでいます。

歯の健康を守るために重要な口腔ケアですが、どのようなケアを行うのでしょうか?

口腔内の歯周病菌は認知症や糖尿病、誤嚥性肺炎といった全身的な病気にも影響するため、それらを防ぐことが口腔ケアの大きな目的です。しかし利用者のほとんどは有病者で、中には麻痺などがあるために自分で歯磨きができないケースも多く、ご家族が磨こうとしても人の歯をきれいにするというのは案外難しいもの。だからこそ私たちを頼っていただきたいと思っています。毎日のブラッシングはできなくても、訪問時に超音波による歯周ポケットの洗浄など大掃除を行います。これだけでも口腔環境に大きく影響しますし、また「先生が来る前は磨こう」「夜だけ磨いてみるか」と、ゼロだったケアが20点、30点と上がってくる。一般の方にとって100点は難しいかもしれませんが、少しずつ点数を上げていくことで口腔内の状態を良くしていきたいですね。

口腔リハビリテーションについても教えていただけますか?

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一番お勧めしたいのは、「あ、い、う、べ……」と繰り返し発声するお口の体操です。患者さんの中にはそれくらいできると思われる方もいらっしゃるのですが、できない方も多いんです。例えば半身に麻痺を患っている方は、両方の口角を動かす「い」の動きができませんし、口輪筋が弱っていると「う」の形もつくれない。これは口の健康のバロメーターでもあるです。「べ」と舌を出す動きは嚥下の一連の動きでもあるので、この体操を続けながら機能回復をめざします。できない方にはもっと簡単なものからスタートし、小さい成功を皆で喜び合うことが重要です。日常生活は些細なことの積み重ね。だからこそ日常生活に即した、簡単な動きから機能を高めることを目標にしています。

終末期医療にも訪問歯科として携わる

どのような方が訪問歯科を利用されているのでしょうか?

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寝たきりの方や認知症の方、どこかに病気を抱えている高齢の方が中心です。また中には未熟児として生まれ、人工呼吸器が外せないお子さんや、子どもの頃から麻痺と戦っている方などもいらっしゃいます。基本的にはクリニックから16キロ圏内が訪問可能エリアなので、福岡市内を中心に南は春日市や大野城市、西は糸島市の一部、東では糟屋郡などが対象となります。患者さんのご家族やケアマネジャーからの相談で診療を開始するのですが、最近では問い合わせも増えてきて、ご自宅はもちろん福祉施設へも訪問しています。基本的には歯科医師と歯科衛生士、歯科助手の3人1組のチームで診療にあたっています。

先生は終末期の訪問歯科診療にも携わっていらっしゃるそうですね。

医科からの依頼によって、看護師や言語聴覚士の皆さんと連携しながら、がんの患者さんを在宅で看取る際の終末期医療にも協力しています。がんの終末期の方は衰弱していますし、体力がすっかり落ちてしまっています。またたくさん服薬していらっしゃるので、口の中が乾いていることが多く、水分が足りないために粘膜が弱り口内炎ができてしまったりすることもあります。そういう方々の治療や口腔ケアを行うことで、少しでも食事を楽しめる時間をつくってあげられればと思っています。訪問歯科診療には非常にやりがいを感じているため、今後も力を入れていきたいですね。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

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高齢だから、要介護だからと、決して食べることを諦めないでください。当クリニックでは100歳以上になってから入れ歯を新しく作られた患者さんが何人もいます。ベッド上でも、車いすでも、体に負担をかけることなく型採りができますので、お悩みの方は一度ご相談ください。自分の歯であっても、おいしくかつスムーズに食事を楽しむためには、口腔内の環境を整え、リハビリテーションを行うことが大事です。無理なく、楽しく、食べたり笑ったりできる毎日になるよう、お手伝いさせていただくことが、私たち訪問診療を行う歯科医師の仕事。大変な思いで介護をされているご家族も、私たちが訪れることで、ほっと一息つけるような時間が確保できますので、少しの間だけでもプロにお任せいただければと思います。

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